エピーソード5

エルトは傭兵集団を発見直後に飛ばされた。当然、メルナリアのリミッターに当たる少女もそこにいる。早速救出に迎えたいところだったが、前と同じ行動しても、多分、あの男にやられるだけだろとエルトはそう直感し、どう行動するればいいか悩んでる。


メルナリアの言葉を思い出したエルトは、心の中に、そうだ、姉さんの力が一部使えるようになるじゃないか?でも、一部って、どの部分?そして使い方は?効果は?メルナリアがくどすぎるとモテないの言葉に刺され、何も聞けずにここに飛ばされたエルトは1人で頭を抱えた。


「おい、エルト、おい!」と、何回も小声でエルトを催促するレオス


「あ、ごめん、何?」


「何?じゃねえ、どうする?向こうは何か言い争ってるみたいだけど」前回エルトみたいに、今回はレオスが同じような言葉で喋った。


会話が微妙に違うけど、ここままじゃ、結果は前と同じだ。つまり、僕は死、そして、それがトリガーとなって、姉さんの力が暴走して、世界が終わってしまう。とにかく、前と違う行動を取らないと、エルトはそう思った。


「向こう何人いるか分からねえから、2人で突っ込むのはそれなりにリスクあるし、どうするエルト?」


ここまでは同じ言葉だが、ここからは違う。そう、エルトは向こう何人いるかが知ってるからだ。レオスの言葉を聞いて、エルトは


「今、向こうには5人の傭兵と1人の少女だ、そして、他に2人がいる、居場所までは分からないけど、1人はその集団のリーダー、もう1人はそのリーダーをお父さんと呼んでる、多分かなり若い女性だと思う」


その言葉を聞いたレオスは、すごく素朴だが、至極当然な疑問をエルトに投げる


「え?なんで分かんだお前?しかもその場にいない人まで分かるって」


エルトは知ってる、前に経験したからだ、でもここで悠長に話しする暇はないと、レオスに


「今は説明する時間はない、でも僕を信じてくれ、とにかくここから離そう、この位置は危険だ」


「…了解だ」


そう答えたレオスは、エルトと一緒に集団の方向にゆっくり移動する、まだバレては行けないからだ。移動中、2人は作戦とも言えない作戦を考えた。その作戦とは、そこにいる少女を助けたから全力脱出だった。前回は不意打ちされて死んだが、例えそれがなくとも、真っ向勝負でその男を負かすビジョンが見えない、明らかに格が違うからだと、エルトは思った。それに、レオスを殺した女も、ただならぬ気配をしていた、しかも、レオスはどんな状況でどうやられたかすら見えてなかった。


そこでエルトは前回同様、レオスにスマコンで本部連絡を頼んだ、でも今回は応援要請ではない、そんなに待てる余裕がないのだ、エルトは、レオスに本部から出来るだけ人を森に寄せて、森に入ったら騒ぎ出す、そして煙幕を放つ、最後は森に入った全員がありったけのエーテルを込めた照明魔法を空に向かって使うを指示した。


そう、全部は無事に脱出出来るためである。人数少ない集団での深夜行動は、裏を返せば、人の目に触れたくない事だ。国家権力の一端である警察が森で騒ぎ出せば、傭兵も下手に動けないはずだ。


煙幕は関しては、エルト自身もどこまで機能するかは分からないが、自分たちが運良く途中に煙幕の範囲に入れればそれで良し、逆に向こうの傭兵が煙幕の範囲に入ったら、一時的にとは言え、足止めくらいは出来る。どちらにせよ、土地勘のないよそ者より、土地勘ある現地人の方が圧倒的に有利だ、どう転んでも悪い方向には行かないはずだ。


照明魔法は、単純に目印。目印は傭兵たちも見えるが、ただ、森から出たらこっちの勝ちだ。照明と照明の間は、線で繋がってる訳でもないから、自分たちがどのルートを通るか傭兵たちは総当たりしかない、ただ向こう少人数、この森での総当りは流石に現実的ではない。


最後に、エルトは少女の救出を最優先に、そこにいる5人は自分たちで倒せるなら倒す、倒せなかった場合は、臨機応変で撒く、ただ、3人は離れてはだめだとレオスに作戦の流れを伝えた。


「よし、本部は今から人を出すってさ」


「それじゃ暫く待つか、騒ぎを聞こえたら僕たちも行こう」


-------------------------------3分後-------------------------------


「微かだけど騒ぎ始めたな、ってかはやくねか?」


「多分近くにパトロールしてる人がいるだろ、今は速いに越したことはないからな、俺たちも行くか」


騒ぎを合図にして、エルトとレオスは2人は5人集団に向かって走る、もうバレるかどうかは関係ない、時間との勝負だからだ。走りながらエルトはリボルバーを構い、空に一発を撃ったすぐに、


「そこの女の人、今すぐ伏せろ!」


少女はエルトの声を聞いたすぐ、状況が知らないまま素直に両手を頭を抑えながら伏せている。それを見たエルトは少し照準を少女より上にずらして連続発砲、運良く1人を当たったみたいで、1人は銃声と共に倒れていた。


他の4人は状況を見て、すぐに応戦し始める。腐っても傭兵か、2人はすぐサブマシンガンを構え、1人はスマコンを出して魔法の準備、もう1人は少女に手を引っ張ってその場から離れようとした。


そして、横からレオスは警察の標準装備の1つ、警棒をスマコン持ってる傭兵の脳天に一撃入れた後、その隣にいるマシンガンを構えてる傭兵の1人を片手で勢いよく投げ飛ばす。そう、レオスはエノテラに憧れて、大剣を武器にしたい、そう、するのではなく、したいだけで、昔からずっと力を鍛錬していたから、魔法の補助がなくても、常人離れの力をもってる。


投げ飛ばされたマシンガン傭兵を見て、少し位置を離れたもう1人のマシンガン傭兵はそのマシンガンをレオスに向かって撃とうとする瞬間、「させるか!」とエルトは叫びながら自分のリボルバーをマシンガン傭兵の顔に向けて投げた、マシンガン傭兵の構えがわずか崩れた隙に、エルトはトンファーを持ってそのマシンガン傭兵へ突進し、顔面の横からフックのような一撃、そのまま2人のマシンガン傭兵とスマコン傭兵が倒れた。


最後の1人は明らかに自分が劣勢と悟り、少女を人質にしようとするが、その少女はとっさに傭兵の金的一撃を入り、その傭兵も少女の予想外の股間蹴りに反応出来ず、地面に倒れて悶え苦しんでる。


エルトとレオスはこの場面を見て、一瞬に自分股間を抑えながらも、薄らと痛みを感じてちまう。


ここまでかなり順調と感じる2人は、早速自分たちの身分を明かし、少女を助けに来た、出来るだけ早くから森から出る事を伝えた。少女はエルトの顔を見て、何か言いたいことがあるような顔してるが、結局「うん」だけ返答して、2人に付いて森から出ることにした。


一方、他の警察も続々と森に到着、そこら中に煙が森に巻いてる、更には光強度こそ不均一だが、着々と点灯し始めた。


そして3人はようやく森の出口付近までにたどり着いたところ、「シュッ」の音と共にエルトの足は見えない何かに切られたかのように、出血と共にバランスを失った、次の瞬間、目の前に巨大の影が現れ、まだ何事すら判断出来なかったエルトは何かに殴られて、出口の反対方向に飛ばされた。


「おいおい、兄ちゃんたちよ、人のものを勝手に取るなと、母ちゃんから教わなかったのか?」

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