プロローグ2

森の深くまで進んでる2人、突然、レオスは照明魔法を消し、小さな声でエルトに「どうやらビンゴーだぜ」言いながら、50メートルほど離れたところに指をさす、あそこに何人かの男集団と1人の女がいた。


「なんか言い争ってるっぽいけど、あまり聞こえないな」


「普通じゃないのは確実だな、人に見られたらまずい事以外は、こんなド深夜に、キャンプ場でもなんでもないこの森で集団行動する理由がない」


「だよね、それに、少ないとは言え、この森は未だに魔獣は出没してるらしいから」


「ここじゃ向こうは何人いるか確認出来ないし、俺たち2人でつっこむのもそれなりにリスクがある、どうするエルト?」と尋ねるレオスに、エルトは悩む気配が全く無く、レオスに


「レオスは持ってるだろ?だからレオスはちょっとここで救援を呼んでくれ、僕はもう少し接近して様子を見る。…大丈夫、1人で突っ込むつもりはないから」


「オッケー、無茶すんなよエルト!お前、エノテラの姉貴が……いや、なんでもない」と、何か心配そうな顔をするレオスに、ただ簡潔に


「分かった」と小さな頷くをして、エルトは1人で集団に接近した。


そして、レオスはポケットからスマコンを取っていじり出した。


、いろんな製品やバージョンはあるが、大きな括りとして、「spell magic controller」の略称である。その用途は名前通り、ありとあらゆる魔法をコントロールし、必要な時に、必要な魔法を使用者の一言で繰り出す代物。まさにエーテルがもたらす一つの時代の象徴である。


この世界は、人間を含め、生き物全般は、エーテルを体内に貯める器官がある、その器官は別に特別なものでもない、「心臓」だ。そして、溜めたエーテルをいろんな元素に変換し、体外から放出する、いわゆる魔法だ。個人差によっては貯めるスピードと溜めれる総量は違うが、何故かエルトだけはエーテルを貯めることが出来ない。それゆえに、魔法は使えない。だからエルトはスマコンは持ってない、持ってても使えないからただのガラクタでしかない。だから「一般人」だ。


そして、当たり前だが、使用出来る魔法は使用者依存、つまり、ファイアしか使えない人間は、スマコンを持ってもメテオは使えない。


それなら、このスマコンの意味は何というと、魔法の詠唱はいらなくなる、特に一般的な戦闘魔法だと、使用者の一言で、ほぼ遅延なく瞬時に出せる。大型魔法はそれなりに演算が必要なため、多少遅延はある、それでも、昔に比べるととんでもなく効率が良くなってる。


それと、もう1つは、個人所持のエーテル残量の可視化。表示方式は総量を100にして、魔法の使用で減少する、なくなると0になる仕様、小数点は切り捨てる。ただし、エーテルの減るスピードも個人差がある、同じファイアを魔法適正の高い人と低い人で比較すると、高い人は1も減らないに対し、低い人は満タン100が一瞬0になる事もある。


レオスが本部と連絡を取ってる間、エルトはずっと忍び足でゆっくりと集団に近づこうとする、夜の森のせいで、なかなか難航してる様子だったが、それでもかなりの距離を縮まったエルトは、またしばら集団の様子を伺っている。


集団に囲まれてた女性は、顔は背がエルトの方に向けて見えない、その上マントを羽織っており、どんな格好してるかこの角度からじゃはっきりと見えないが、声からして、かなり若く感じる。


男集団は5人、隠密行動のためか、全員はマスクを被って、色的には黒よりの青、デザイン統一されてるが、帝国軍には見えない。多分どこか所属の傭兵だろうと、エルトが静かに見守ってる最中、突然彼の背後に


「兄ちゃん、覗きとは、いい趣味じゃねえか?」


「?!!」一瞬、エルトはヤバい!と本能がそう訴えるエルトは、距離を取りながら声をした方向に視線を送ると、そこには1人の男、見た目は中年から初老、明らかにあそこの5人と格が違う、筋肉質の体格に加えて何かオーラを発してるせいか、元の体格よりずっと巨大なシルエットに感じる、何より、その男は、自分の姉、重剣姫エノテラの所持してる、この世界で一本しか存在しない、漆黒の大剣を背負ってる。


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「エルト、大丈夫?練習とは言え、戦う時、集中しないとだめだよ。ほら、立って、相手が私じゃなければ大変な事になっちゃうかもよ。」姉の言葉がエルトの頭によぎる。そう、集中しないとだめだ!だが、頭は理解しても、実際に出来るかどうかは別の問題だ、ましてやエルトは失踪した姉が肌身離さず持っていた大剣が何故か知らない男が背負ってるを見てるとなおさらの事だ。


「その剣、どこから手に入れた?!!」冷静さをなくしたエルトは今度、自分からそのヤバいオーラを発した男に武器を片手で構えて突進する。


「はっ!」エルトは真正面から武器を振り下ろし、男を攻撃しようとしたが、男は素手でエルトの武器を掴んだ。


「トンファーか?珍しいおもちゃだ」と言いながら掴んだトンファーをエルトごと投げ飛ばした。勢い任せに飛んでるエルトは、もう片手はリボルバー式の拳銃を取り出し、男に向かって発砲した。流石にこんな体勢じゃ当たるはずもないが、エルトは最初から命中なんて考えてない、単純にこのバランスを取れない体勢中、男が急接近されたら死ぬと、なんとなくそう感じたエルトは防御のために銃を撃った。


「ほう?兄ちゃん、筋は悪くない、普通の警察には見えねえな」と男はかなり余裕がある口調。それを見て


「答えろ!その剣、どこから手に入った?!」と対照的にエルトはかなり動揺している。そして、その動揺がエルトにとって取り返しが付かない事になった。そう、エルトは完全に後ろの5人集団を忘れてしまった。


突然、男はエルトに手を向け、人差し指と親指を伸ばして、手を銃の形にして「バン」とふざけた動きと声をし、そしたら、連続に響く銃の音、エルトは痛みと共に、体は自分の意思とは無関係に勝手に倒れていく。その時、エルトは何かを悟った、そう、死だ!


「それを知ってどうする?」男はうつ伏せになったエルトにゆっくり歩き出す、そして不敵な笑顔。


「僕は…エルト・メルナリア!……その大剣…の持ち主の…弟だ!」弱くなっていくエルトが自分の名を名乗った、そして男の表情は一瞬曇ったすぐ、あの不敵な笑顔に戻す


「そっか、アッハッハッハッハ、面白い、あのバケモノの弟、ね…、こりゃ笑わずにいられねえ」


「何が…可笑しい?」と悔しそうなエルト


「いやね、エルト君は今年いくつになるかな?」


「だからなんだ?…何が…言いたい?」段々意識が薄れて行くエルト、喋る気力すらほとんどのこってない。


「君は7年前の帝国によるクラークデール侵略は知ってるかな?」


「……姉、さん」


「ああ、もうちょい雑談したかったのにな…んで、もう1人は?」男は集団ではなく、レオスが居たはずの場所に向かって尋ねると


「始末したよお父さん」ちょっとねっとりの女性の声、そこにレオスではなく、女性のシルエットが薄っすら見える。


「そんじゃ、今夜はとりあえず御子様を連れて、撤収だ」。

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