異世界転生すると思ったらすでに異世界な上に転生ですらない件。

エスエル

プロローグ

プロローグ1

≪イングルウッド連邦≫北部、そこには≪クラークデール≫という町があり、町の更に北には≪バーバンク帝国≫と国境をまたがってる大森林が広がっている。警察制服を着てる青年2人が夜の森に用心深く進んでる、1人の男が弱々しい照明魔法を周囲に照らしながらすごく小さな声で愚痴り始めた。


「おいおい、まじかよ?俺たち士官学校出身とは言え、着任したのは半年前だぞ?敵国のスパイ調査って、それはないだろ!俺たちひよっこより、ベテランに任せた方が絶対いいって」不満げな声は更に続く、


「しかも国境付近だぞ、下手したら国際問題になりかねねえじゃねか!」、口調が荒々しく、とても警察とは思えない、この世界では珍しい赤毛に、目つきの悪い男の名はレオス・レオナルド。


そのレオスの愚痴に、隣にいる、ちょっと頼りなそうな、誰からどう見ても最終的に顔以外は全部普通という評価にされる男エルト・メルナリアは周囲を警戒しながら


「まずは落ち着いて任務集中だレオス。半年前の事件をきっかけに、しばらく大人しくしてる帝国は今、まさに絶好の連邦侵略チャンスと思ってるはずからな。僕たちが何もしなくとも、いずれ国際問題にはなる。少なくとも帝国はそう動いてる…ように見える。」宥めだ。


半年前の事件とは、帝国側が勝手に≪生きる戦略兵器≫、≪重剣姫≫などの呼び名を呼んでる人物、エノテラ・メルナリアの原因不明な失踪事件。彼女が消えたまでは、主に帝国の抑止力として、たとえ一時的としても、世界は仮初の平和を得た。


7年前に時間を遡る、連邦の建国記念日、その日は、帝国側に軍事行動があった。それは、連邦侵略作戦だった。帝国はクラークデールを一挙に落とし、連邦の成立阻止と、周辺国家に自国の軍事力を示すという意味を込めて、当時の最新装備をしてる、航空師団2つ投入した。この作戦、結論から言うと、思惑通りにはならなかった、それどころか、むしろ帝国にとってはかなりの痛手だった。


作戦当日、帝国にとっても連邦にとっても予想外の出来事があった。それこそエノテラが連邦側に付き、参戦したことである。エルト姉弟は元々連邦人ではなかったが、連邦成立の際、当時≪独立商業都市国家クラークデール≫も連邦を正式に加入することになり、結果、姉弟は成り行きで連邦人になったのだ。


この戦闘に、連邦側は人員被害なし、と言うのも、そもそも連邦側は兵を出してなかった。出さないではなく、出せなかった。成立したばかりの連邦はまともに訓練を受けた軍人なんているはずがなく、せいぜい各地にある政府所属の治安維持部隊、つまり警察。それに加え、連邦が成立する前に諸国の財閥が出資し、立ち上がった自警団のような組織に所属してる人たちしか、戦闘人員がなかった。


帝国側だというと、エーテルの研究を進み、それに伴い、軍事方向に重点を置く開発。25年を経って、今やこの大陸、引いて世界最強の軍事国家と成り上がった。飛空艦隊、二足歩行型装甲歩兵など、他にまだ何か切り札を隠してるという噂もあった。兵士自体も系統的な訓練を始め、才能を生かした部隊の編制、航空、魔法、支援など多種多様。


だから、連邦侵略作戦は、帝国自身もあっさりと勝利をするだろうと予想した。


帝国が到着するまで、警察と自警団はクラークデールで市内で帝国を待つしか、他に出来ることはなかった。そんな中、警察でも自警団でもない、なんの肩書きもなく、ただの平民であるエノテラは一本、漆黒の大剣を持って、森に入った。


どういう事情か、この戦闘についての詳細記録はどこに見当たらなかった。ただ、当時周辺に住んでる住民によると、航空師団の艦隊、一隻残らずが全部ガラクタになった、一部大きな残骸は今でも森に残って、撤去されていない。そして森の中にあった山が、戦闘の被害で、丘となり、その周囲には岩石が散りばめていた。更に、一部森にあった平坦な地面がクレーターのように抉られ、後に雨が降って、今は湖となっている。森自体はかなり被害があったものの、面積が広いお陰で、被害に遭ってない部分も結構残ってる。


他にも、クラークデールの住民のよると、エノテラが帝国軍と戦ってる最中に、クラークデール全域にすごく嫌な音が鳴ってたらしく、すごく高い、耳鳴りに近い音が聞こえて、それを聞いて倒れた人もかなり居たとか。結局その音の正体は今になってもわからない。クラークデールの人は帝国の何らかの兵器じゃないかと結論に付けた。


時間が経ち、7年後、帝国にとって最大の脅威、エノテラは、姿が消えた今、力の均衡が崩れ、天秤は帝国側に傾いた。そして、帝国と隣接してるこの町で、昔からずっとあった帝国の地下活動も、最近ではより目立つようになってる。

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