日常的な朝
少し肌寒い朝
羽毛、毛布なんてものはなく
着物を上から羽かける
壁が多くない、開放的な部屋の空気は爽やかで
目覚めはいい
きちんときればいいものを起きると微量に脱げかている薄手の苦しくない簡易的な着物をだらだらと引きずりながら部屋の壁側にある亀に近づく
中には昨日の昼くらいにくんでいた水
びたびたと顔を洗う
冷たくてさっぱりした気になると
箪笥と呼んでいるはこから今日の着物を取る
淡いオレンジ色
袖や襟元にツタが刺繍してある
形は男物であるが何をとっても女柄の選択肢の中では派手な方
まぁ今日は仕事のために内裏にいく予定も
目立つようなところにいく用事もない
冷たい床を感じながら自室を出る
廊下は外に面しており
より寒さを感じながら進む
向かう部屋は食事を取る部屋
それ以外は主人がごろごろしているくらい
「おはよう!ガク!
いつも朝はたらたら歩くよね〜」
途中の曲がり角から声をかけつつ
自分の肩くらいの身長の少女が出てきた
「アヤコ…おはよう」
この家の主人の妹である
兄には似ることなく黒髪の似合う
長くストレートであるが
身長は可愛らしい全体的にふわふわしている見た目だ
中身はまったくふわふわしておらず
ハキハキとした活発な子の印象のが強い
「お兄様からもらった新しい髪飾りをつけてみたの
どう?似合っている?」
「桜か。すごくいいと思うよ。
そろそろ暖かくなってきたから、たしかにぴったりだ。」
満足そうににま〜っと笑って
また歩き始めた
「お兄様に自信を持って見せちゃおう
ほら、早く行こう」
先にじゃんじゃん進むアヤコの後を追う
床も冷たいのによくそんなに朝から
歩けるな
これといった入り口の戸があるわけではない
構造のため、部屋の中に主人がいるのは
すぐにわかる
今日も綺麗な髪を床に広げながら
座っていた
邪魔なはずだが、朝はそのままのが
お気に入りなのだとか
「おはよう、アヤコ。ガク。
今日は2人とも鮮やかだね」
桜の髪飾りが華やぐのと
男なのにオレンジ色の艶やかな自分。
「あなたから渡された服しかないので」
嫌味は通じているがにこにことこちらを観ているだけだった
「お兄様、どうです?アヤコは負けていませんか?」
「負けるだなんて、そんなことないよ。
桜がとても似合う、かわいいね」
仲良し兄妹はいいことだ。
「さぁ食べようか」
李彦様の声と共に
3人が箸を手に持ち食べ始める
「ところで、ガク。昨日の話を少し聞きたいのだけれど、食後に時間もらえるだろうか」
こてんと少し首を傾げる動きと共に
銀色の髪がさらっと流れる
いや、女子かよ。
「かまいませんよ。ものすごくお話ししたいところでした。文句とか文句とか文句とか」
昨日の化け物は手強かった
知っていたなら教えてくれよ
ふつふつと怒りを思い出す
怒りに任せて箸の動きが強く
もぐもぐと勢いよく食べる
ありがとう、と笑うと
向こうも食べ始められた
アヤコはこの会話の中を
理解はしていない。
そもそも伝えていないのだ。
妖がいることはこの世界では当然ではない
物語の中で出てくるくらい
「まぁたお兄様もガクも夜遅くまでお仕事していたの?無理しないでね」
「やっぱり僕の妹はかわいいなぁ
しかも優しいって、なんていい子なんだろう」
はいはい仲良し。仲良し。
食事を終え、アヤコはこれから物語を読むのっと元気よく読書するとは思えないお淑やかさのない勢いで立ち去っていった。
「ガク。昨日はお疲れ様。
どう?僕のお手紙はとどいたかな」
「いや、違うっしょ!」
「あぁ道中で何かあった?」
「ありまくりだわっ」
昨日の道中で出会った話を伝える
微妙に気持ち悪い形だったところを特に
強めに。
「大変だったね。どうりで僕の力をごそって使ったわけだ」
そう。あの妖を倒した力。
光の正体は李彦様なのだ。
妖は妖の力を持ってしか消せない。
李彦様はこの宮野守家の先代当主が
若い頃から友人として仲良くしていた妖。
50年以上も共に過ごしたという
そして先代には男の子に恵まれなかった
生まれたのはアヤコのみ。
2人で話し合い、年を取らない李彦様は
ご烙印としてこの家に来ることなった。
世間的にはあり得ること。
アヤコ含めたご家族には趣味で知り合った
若者として紹介していたらしい
「それと手紙はきちんとお届けしました」
お返事はいただいておりませんがー
李彦様はそう。というと
手紙にはそこまで意識が向かないらしい。
「最近、よく出ると聞くから
気をつけてね。
そしてなるべく多く出会ってね」
扇子で顔を隠しながら真剣な雰囲気でお願いされる
内容が矛盾しているようなしていないような…
「仕方ありませんね、僕はあなたの力がなくても倒せるくらいは強いんですから。消せないだけで」
「やられるとは思っていないよ
怪我はしないで、僕もアヤコも心配しちゃうから」
なんだかんだいいながらも信用してくれてるいい主人。
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