第19話 弟子

少し前 青の国 城内


「準備は出来た?」とその美しい女性は言う。


「出来てますよ、先遣隊の人選は私がしました。

 勿論私も行きますよ?なんてったって皇女様直々の

 ご依頼なので」


しらあいのような色の綺麗な鎧をまとった、そして

腰には少し長めの剣を携えた女性は親しげに、それでいて

膝まづきながら言った。


「私も行くわ」と皇女と呼ばれた女性は言うと


「はぁ?ルナティア様ついてくんの?まじで?」と

その鎧の女性は立ち上がりのけぞった。


「なによ、私が行ったらいけないの?何か問題でも?」

とルナティアが言うと


「問題大有りじゃねえか、人選をやりなおすよ・・・」

と鎧の女性。


「いいわ、お忍びで行くし。ここには影を置いていくわ。

 ところでグラーブ、貴方はあの魔法の光、は何と思う?」

と問いかけると


「わかんないな、私は。魔法なんてからっきしだし。

 皇女は知ってるんじゃないの?まじで。」


そう言われ、ルナティアは

「あれは転移の魔法よ、多分トンネルね。という事は

 何かがこの大陸に来たって事よ。転移事件なんて

 結構あるのよ。」


でもね、と言い、ルナティアは話をつづけた。

「トンネルが現れたってことは高位の、それもとんでもなく

 高位の魔導士の呪文ね。それを、どこからか、

 まぁ異世界ね。あっちから発動した。場所指定で。

 何かを目印にして。」


「異世界って・・・バーボンさんを思い出した。」

とグラーブ。


「まぁ、あちらから目印をどうやって作ったのかは知らない。

 こちらの世界の事を知ってれば別だけどね、

 しかしそれだけではトンネルは出来ない。

 でもね、問題はそこではないの。」


「一瞬だけど見えたわ。こちらからも一筋の光が

 トンネルを通って天を貫いたのを・・・」

ルナティアは怖いくらいに真顔で言った。


「協力者がいるわね、この世界に。既に。

 それも、その呪文を唱えた者と同じクラスの魔導士、

 もちろん・・・精霊使いね。」


そしてルナティアは、もう確定だと言わんばかりに

「ベルジュラックが戻ってきた。そして多分、こちら側の

 協力者はベルジュラックが懇意にしている者。」


「じゃあバーボンさん?」とグラーブ。


「いや、バーボンは転移魔法は使えない。精霊使いじゃないから」

とルナティア。


そして答えを知っているかのように

「多分一緒に行方不明になった、曾孫、ジヴァニアだろう」


じゃあ行こうか、とルナティアはグラーブに言い、影を作った。

そしてドレスを脱ぎ、白地に青いラインが模様になっている柄のローブを

纏い、ベランダに出た。


「また、そこからかよ・・」とグラーブ。

「手っ取り早いのよ、部屋を普通に出ると色々面倒だし」

とルナティアはそういい、「いつもの場所でね♪」と

ウインクをして、そして一言付け加えた。


「バーボンにも見張りをつけろ、まぁバレると思うけど」


と言うと同時に飛び降りた。


「だから、ここは5階だっての・・・」とグラーブ




時間は今に戻る クレマンの村



「さっさと準備して早く行っちまいな」とベル。


コルンの居る街、ユネーフェルの近くまでは

美香のバイクで行く。勇樹のバイクは既にガス欠寸前だ。


そして徒歩で街に入り所定の場所でコルンを待つ。


「ところで普通に街には入れるの?」と美香。


「あ・・・」とベルは何かに気づいたらしい。

「あ~。忘れていたねぇ。どうやって入ろうかねぇ」


「やっぱり検問とかあるの?」と美香が言うと

あるっちゃああるが、無いっちゃあない。とベルが言う。


「金でも渡して通してもらいな」とあっさりとベルは言う。


「そうねぇ、あの街なら金貨3枚くらいで余裕よ」とソミュール。

そして、ほれ、と袋を渡し、言う。


「それ使いな、結構入っている。でも無駄使いすんなよ」


袋には「ウゾの物、さわるんじゃねえ」と書いてあった。


だったらさ、

「国境超えるのも金渡せばいいんじゃない?いくらかかるか

 知らないけども。このまま黄の国目指す?」と美香。


全員が「天才か!」というような目で美香を見た。


「い、いや、段取り通りコルンに頼もう。うん。・・うん。」と勇樹。

「だ、だねぇ。そ、それがいいよ、うん」とベル。

「ま、待ち合わせの飯屋の飯は旨いぞ、食った方がいい」とファルツ。

「さ、最低限だけ使えよ、頼むから。んで返してくれよ、残り」とウゾ。

「真面目な話、コルンは居たほうがいい。何かと使える」とソミュール。


結局、コルンと共に国を出て黄の国に行くと全員で再確認した。



美香と勇樹はバイクに乗り走り出す。

勇樹は吸血族の皆に

「すぐ戻ってくる。必ず戻ってくる。だから待っててくれ。

 そして一緒に・・・」と言いながら。

しかし皆には最後のほうが聞こえなかった。



さて、ルナティア様をお迎えしようかねぇ。とベルがつぶやく。


「皇女だぞ!来るのか!?直々に?・・調査ごときに!?」

とファルツは驚きながら言う。


「来るね、絶対だ。そういう性格だ。久しぶりだねぇ、会うのは」

とベルは言う。


じゃあ準備をしようかねぇ・・・と言うとベルは

ソミュールとファルツの魔力を吸った。


二人は陸に打ち上げられた魚のように、たまに足をビクつかせ

倒れている。

「な・・・なぜ・・に」とファルツ。


あんたたちがこちらの協力者ってことにするよ。

私の弟子だったことにしてね。と言うか弟子にしてやるから

我慢しときな。


とベルが言うと二人は「喜んで!」と言いたげだったが

言える状態ではなかったので二人は親指を突き出した。




「ごまかせるかねぇ・・・あの皇女様を。」とベルはポツリと言う。















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