第18話 ポコポコは愛

話をすり合わせ、まとめる。


ここは既に青の国の中だ。なので青の国に居る限り

移動は、まぁ、制限はあるが自由だ。

しかし、出るという事になるとそうはいかない。


勇樹君と美香は、魔導士であれ冒険者で、どちらの

身分も提示できないので国境を超えることはできない。

やもすれば拘束される。


そこで私の出番だ。私は、自分で言うのもなんだが

青の国で文官という父を持ち、身分証もある。

その私が研究の為に、黄の国に向かう。


そう、勇樹君と美香を連れて。もちろん、嘘はつく。

私の低級使用人として連れて行く。


低級使用人であれば主人が身分を示せば問題ない。

もっと言えば、ある程度の身分であれば身分証を

見せる必要もない。


そして青の国を出て、黄の国を目指す。

入国も大体そんなものだ。

私は魔導士なので「青の国」で「黄の国」での滞在依頼書を

書いてもらえばそれと身分証を出せば問題ない。

二人に関しても出国と大体同じだ。


問題は黄の国に入ってから、どうやって美香の父上に、

バーボン様に会うかだ。

バーボン様は青の国から出向と言う形で黄の国に居るはずだ。

立ち位置は要人なので警備の厚い迎賓館かどこかに居るはずだ。


すると

「そこは行ってから考えましょう」

と、もうワクワクが止まらない美香。


私は待ち合わせ場所を伝えた。私の街に「茶華飯店」という飯屋がある。

そこで待ち合せましょう、となった。

その飯屋は労働者や低級使用人などでもよく利用する所なので

勇樹君や美香が怪しまれることはない。


「あんたみたいなお坊ちゃんがそんなとこ行っていいの?」と美香。


大丈夫。私はそこの常連だ・・・・だった。

スタンプカードも持っている。6冊目だ。


私の特徴を伝えた。

身長は勇樹君より高いです、手のひらほど。

髪は長めで後ろで束ねています。だって引きこもりですから

髪はあんまり切りません。色は金色です。


少し細身でしょうか。あーあと、重要なことを言います。

私ですね、とってもとっても・・・


イケメンです。


着ていく服は何にしましょうか。

私のお気に入りのローブ。色はグレーとイエローを

交互に散らしたような模様が入ったやつにします。


まぁ店に入ってわからなかったら

「コルンどこ!」とか叫べばいいですよ。


そしたら店の親父が「居る」とか「今日はいねえ」

とか言ってくるでしょう。


後はですね、と私は前置きをし


「私を信じてください」

と言うと美香は


「スタンプカード6冊持ってるっていう事を信じるの?

 まぁ、そこついたらなんか奢ってね」

と私が裏切るとかそんな事全然考えていないように言った。


私はとてもとてもうれしかった。



そして各々準備を始める。

美香はベル様と談笑し、勇樹君はボルドーとウゾと話をしている。


ソミュールとファルツは何かと入用な物を見繕っている。



準備を終え、美香は私を机の上に乗せ

「じゃあいくわよ、さよなら・・・動くユキちゃん。

 またすぐに動かしてあげるからね・・・」


「適当な精霊を宿せばいいじゃないか」とベル様。


「う~ん。コルンみたいなのがいいわ、

 少しバカそうなやつ。って精霊の中にもいるの?」と美香。


飯屋で超激辛の肉料理食わせてやろうと私は心に誓った。


「ユキちゃんは置いていきな、私が見繕って統合させて

 おいてやるよ、コルンに似て少しバカそうなやつでいいのね?」

とベル様。


・・・・ベル様。


美香は魔方陣を描き解除の呪文を唱える。

「じゃあ3日後に飯屋でね」というとタクトでポンと

私を叩いた。


その瞬間、本当に一瞬だが、一瞬に感じられた。

意識が飛び、ふと目を開けると




自分の部屋に、ベッドに寝ていた。


私は思う。

「よかったぁああ、体あったよ・・・。」と。

起き上がろうとすると少しバランスが崩れる。

この体、慣れないな。・・・いやちがーーーーう。

元の体だしっ。


再度ベッドに横になり、少しずつ体の感覚を確認した。

突然空腹が襲う。


部屋を出る。そしてそこに居た使用人に声をかける。


「おはようでいいの?なにか食べるものある?」


使用人はとても驚き

「コルン様、意識がお戻りになられたのですね!

 お城のヤーガテー様にもお知らせをいたします」


「奥様!奥様!コルン様がお目覚めになりました」と

大きい声で叫びながら、多分、母の部屋に行った。




私は椅子に座り使用人が急いで作ってくれたご飯を

貪り食う。食う、食う。


「コルン、目が覚めたのね、よかった・・・本当に良かった」

母は涙を流しながら私を抱きしめた。


ふと思う。母とはいつどんな時でも子供を、子供の事を

考えて、そして想っててくれるのだな。


突然思い出した。向こうの世界のパソコンで知った事、

向こうの世界では母親が、子供に対して食事を与えなかったり、

理由もなく殴ったり、そして捨てたりしていた。

その時、その話を知った時に、私は悪魔の国に来てしまったと

思った。今でもその気持ちは変わらない。


よくぞ、勇樹君と美香は無事に帰ってこられたと思った。

あの悪魔の世界から。


あぁ、そうか、勇樹君も美香も、私のように

母の愛に守られていたんだな。と思った。

・・・まぁ美香が曾祖母だけど。


「母さん、ただいま。戻ってこれたよ」と私が言うと



「本当よ、本当によかった・・・」と十数回「よかった」を

言い、私をポコポコ殴った。


「痛いよ、母さん」・・・本当は痛くもなかった。

殴られているんだけど、なにかこう、




優しく・・・撫でられてる気がした。

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