第17話 青の国の指揮官

「ユキちゃん、元の体に戻ってくれないか」

ベル様は言った。歓喜。そう歓喜。


「えーーーーーーー」すっごい不満そうに美香が言う。

ざまあぁみろ。


コルン。あんたは青の国で学者だったんだろ?

そしてヤーガテーの息子。ブラント家。


そうベル様は言う。

私は、美香とベル様、勇樹君には言っていたが・・・。

全員に伝えた。



私は青の国で魔導士をしていて学者でした。いわば、

皆さんの敵です。私は転移の魔法を試して、そして

あちらの世界に魂のみ転移しました。そして、美香さんに

見つかって。幾日かあちらで過ごしました。


そしてベル様に会って、勇樹君に会って。いまここに居ます。

信じていただけるかどうかわかりませんが


私は青の国では本ばかり読んで、あんまり外には出ず、といか

殆ど部屋の中で過ごしました。


「引きこもりか!」と美香は言った。


まぁ、そんなものです。青の国がどうとか私は興味ありませんでした。

私が興味あったのは、魔法の事ばかりでした。

それに学者を名乗っています。それはただ知識を、知識欲なんです。

この世はどのようにして生まれたのだろうかとか、

魔法は何のためにあるのだろうかとか、

神が与えた加護とは何なのだろうかとか。

そんな事ばかり考えて過ごしていました。


そんなときです。父親が私を青の国の王子の家庭教師に推薦したんです。

それは通りました。何気に父親は、青の国の文官です。

・・・ね、私は皆さんの敵でしょ?


でもそれも長続きしませんでした。だって、私は

それを仕事にしたりとか、そんなこと考えても居なくて。

まぁ、親のすねをかじってご飯食べて、やりたい、知りたいことを

ずっとやってたんです。だから続くわけありませんでした。


ある時、ベル様の武勇伝と言うか、そんな本と出合いました。

それはもうドキドキして、こんな人になりたいと思うようになりました。


そして私はベル様が得意としていた転移系の魔法をやりたくて

しょうがなくなって、試しちゃったんです。使えもしないのに。


「私の得意は、精霊を使った攻撃系だよ?何らな、なにかのドラゴンを

 召喚しようか?」とベル様は笑いながら言う。


そして転移しちゃったわけです。あっちの世界に魂のみ。

今思えば、大成功です。魂だけと言っても転移したんです。

攻撃魔法使いの私が・・・。


「うんうん」とベル様はうなずく。


私は美香さんと出会い、ベル様と出合い、そして勇樹君と出合った。

それぞれの立場はすごい物でした。

そして、ここで吸血族の皆さんと出合いました。


何度も言いますが、私は部屋に引きこもってばかりで

友達と呼べる人もいませんでした。でも皆さんは

こんな、ロボットの私でも普通に接してくれる。と言うか

ここに居るのが当たり前のように振舞ってくれる。


それが今とてもうれしいのです。


そしてベル様が、私がこう成りたいと思う人が

私にお願いしている。これはうなずくしかないでしょう!


もしも、私の事を青の国の敵と思ってしまったならば、

いや、そう思っても私はベル様に従います。

コルンに戻ります。


と感動的に言ったがみんなは、

なにか、そう、なにか

「こいつ何言ってんだ?俺らの仲間だろうに」と

当たり前のような顔でいた。


うれしかった・・・・。

おれはみんなと絶対に、一緒に居ると誓った。


「それでさ、魂を体に戻すから一人で青の国に戻っておくれよ」

とベル様。


なんなんだろう。俺の心の、そう、本心の叫びを

返してほしいくらいな、その一言。


ベル様は続けた。


「勇樹と美香が、黄色の国に行くのに同行してほしいの。それはね

 そのロボットの体じゃダメなの。ブラント家の名前で同行して

 欲しいのよ」


「あなたは今から青の国でも上流の家柄でありながら、

 そう、スパイとして生きることになるの。

 それが私のお願い。」

ベル様は私にお願いと言った。そう、お願いと。


私が尊敬する、そう私の目標とする人からのお願い。

私には断る理由はなかった。



そして、これは私がしたいからそうすることで・・・。

私は青の国の儀式ではあるが勇樹君に一生を捧げるという

誓いの儀を行った。まぁ、誰も知らないだろうけども・・・。


ふと、ベル様を見ると私に対して両手を組み感謝の印を

作っていた。さすがベル様、私が何をしたかご存じでした。


「ユキちゃん、いやコルンは勇樹と共にある。これは私、

 ベルジュラックが誓う。皆の者、覚えときな」

とド迫力な一言を言った。


そして今後の計画を話し合う。


まず、私がコルンの体に乗り移り・・いや、まて、違う。

コルンの本当の体に「戻り」、冒険者として旅に出る。


そして勇樹君と美香を仲間にし、黄の国に立ち寄り、そこをベースにし

数か月過ごす。そこで私の家柄の力が発揮される。そう、普通に黄の国に入れる。

その間に、黄の国に居る美香の父親にコンタクトを取り

現状を話し、協力を仰ぐ。

ベル様曰く、父親は必ず力になってくれるとの事。


因みに父親の名前は?と私が言うとベル様は


「・・・バーボン。知ってるだろ?青の国の学者さんなら。

 あいつは父親でありながら私の弟子でもあったけどね、ふふふ。」


と言った。


私は驚きを禁じ得なかった。


バーボン、そう、青の国の「先代の」指揮官だ。

軍を統括し、軍をコマのように動かす指揮官だった人だ。



ルナティア様を今の皇女にしたとも過言でもない指揮官。

美香の世界の言葉で言うと軍師。





そんな大物が美香の父親なのか・・・・。



というか、勇樹君の敵じゃん・・・・。










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