第16話 一生懸命

村に着くと一行はミネルヴァの生まれた家に、

もう壁が崩れ、家の原型すらないが・・・。に向かった。


そしてそこにつくとボルドーが用意していたであろう

棺に御旗にくるまれたミネルヴァを勇樹君は入れた。


各々、積んだ花を棺に入れ、最後に勇樹君がつぶやく。


今までありがとう。母さんのおかげで俺はここまで

生きてこれたんだ。この命は母さんに貰ったものだ。

俺はこの世界で、母さんが何をしたかったかを知り、

そしてそれを叶えたいと思う。


母さん、俺頑張るよ・・・・。

母さん、ありがとう・・・・。


と最後に呟くと、勇樹君はハッとした表情をし、そして

頷いた。


後から聞いた話だが勇樹君にはミネルヴァ様が


「頑張ったら疲れるから普通でいいのよ」


と言ったのが聞こえたらしい。


そして穴に棺を埋め土をかけ、最後にベル様が魔方陣を

描き、それを美香が魔方陣を上書きの様な事をし、


「これで誰もミネルヴァさんを、如何こうし様なんて

 出来ないわ。だって魔方陣をぐちゃぐちゃのままにしたから」


そ、それって勇樹君も何もできないのでは?と私が言うと

勇樹君はそれでいいと、それでいいと答えた。


そして全員ボルドーの部屋に入る。


皆ありがとう。と勇樹君が言う。

そして沈黙が流れる。


沈黙を破ったのはボルドーだった。


「勇樹、おまえは紫の国の王子だ。今は俺たち吸血族しか

 お前が生きてここに居るなんて知らない。しかし、もし仮に

 紫の国の者たちが、特に王家に近い者たちが知れば

 お前は絶対に担がれる。絶対だ。それほど、今回の青の国の

 進行は許せないものだったんだ」


「勇樹がもしこのまま王子と名乗らず、お前が冒険者とかに

なって平々凡々に暮らすっていうならそれもいい」


だがな、とボルドーは言うと


「俺は今回の青の国の進行は絶対許さん。

 俺はどんな手を使ってでも反攻したい。何故なら

 俺たち亜人と紫の国に非は1点もないのだから。」


「だから俺はお前の存在を、この大陸に知らしめる。

 もしそれが、嫌なら俺たちと殺り合って止めろ」


ボルドーは本気だ。


勇樹君は少し考えて

「母さんはどう思っているんだろうね・・・。母さんも

 そんな風に思っているのかな・・・。」


「俺は本当に両親の事はほとんど覚えていない。

 気が付いたら、物心ついたら母さんが・・・ミネルヴァさんが

 俺の母さんだった。もし、母さんの想いが、反攻ならば

 俺は堂々と、ジェニエーベルと名乗る」


ボルドーは言う。

「ミネルヴァはな、その時の王妃のサンテミリオン様に拾われたんだ。

 ミネルヴァは、なんというか、そう、物おじしないというか・・・」


(天然・・・・)と、なにか勇樹君が思っている。


「だからさ、どちらかって言うと姉妹みたいな感じだったんだよ。

 サンテミリオン様もミネルヴァには何かと色々な愚痴っぽいことを

 平気で言ってたらしい。そういった関係だ」


「ミネルヴァもなにかあったらすぐにサンテミリオン様に聞いたり

 相談したりしていた。もう一度言うがまるで本当の

 姉妹のような感じだった。だからこそ、お前をミネルヴァに

 託したのだろう」


「ミネルヴァがもしも、サンテミリオン様の魔法をどこかで見ていて

 その魔法が意味することを知っていたら

 どういう気持ちだったのだろうか」


「だからこそだ、だからこそお前を守ったんだろう。絶対に

 この子だけは守ると誓ったのだろう・・・」


沈黙の後、


「母さんは・・・」と勇樹君は口を開く。


「母さんは、只、ただ一生懸命だけだったかもしれない。

 そう一生懸命。一生、命を懸ける。」


「ならば俺も母さんの居た国の為に、愛した国の為に

 まぁ、愛してたかどうかはわかんないけど

 おれも、一生、命を懸けたいと思う」


ファルツが口をはさむ。

「だからと言って、勇樹さんを担ぎ上げて、さあ反攻だって

 すぐには出来ないでしょう・・・」


「反抗もなにもそれ以前に今回の魔法、まぁ勇樹とはちょっと

 関係はないけど、青の国は何かが起こったって気づいているだろう。」

とベル様は言う。続けて


「青の国の今の皇女はルナティアだ。多分。いや絶対。だろ?ユキちゃん」


私はうなづいた。

「あれは化け物だ・・・」とベル様は言う。


「遅かれ早かれここに青の国の先遣隊が来る。

 何が起こったかを調べるために。ちょいとばっかり私と美香の

 魔方陣が凄すぎたね。

 絶対に感知された。それが転移魔法という事も。」


ならば、と続けて

「誰かが、ここに転移して来た。それはだれか。行方不明になっている

 誰かが転移して来たかもしれない。行方不明で一番に思いつくのが

 ジェニエーベル。紫の国の王子だ。本当は私と美香だけどね」


「ならば、バレたほうがいい。超有名な私が転移して戻ってきたと」


なるほど、ベル様なら、ベル様が行方不明からの帰還。

それならば勇樹君の存在を隠せる。


「美香、あんたは勇樹と一緒に黄の国に行きな。父親の所に。

 あいつならうまく立ち回ってくれるだろう。」


「そこを足掛かりにしてこの大陸を、この大陸で仲間を増やすんだ。

 私はミネルヴァと約束したんだ。必ず勇気を守ると。

 まぁ私は青の国に行くことになるだろうから。逆にいろいろ情報を

 仕入れとくよ。うはははは」


続けて

「ボルドー。早まる気持ちはわかる。でも確実を期すんだ。

 15年、いや13年か。我慢したんだろう?もう2,3年我慢しな」


ベル様がそう言うと全員が納得した。


そして最後にベル様は

「ところでユキちゃん、いや、コルンだったか。頼みがあるんだが」

と、少し悪い顔をして私に言った。いや、悪い顔に見えただけです。


















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