第14話 御旗

ソミュールは陸に打ち上げられた魚のように横たわり

たまに足をびくつかせている。


「吸われたわぁ・・・・」とソミュール。


魔方陣を3分の2ほど作った時点で美香はソミュールの

魔力を吸った。・・・吸い方はベルの見よう見まねだったが。

どうやらいい感じで吸ったらしい。


そして書き始めて6時間ほどで魔方陣は完成した。

「完璧!・・・・多分だけどもね!教えられたとおりに

 出来たはず!はず!」

超おおいばりだった。


そして美香はつぶやく。

「私ひとりではこのレベルの魔方陣は現実だと

 こんなに時間がかかるのか・・・。唯ちゃんって

 やっぱすごいんだね・・・。私はあれだ、

 ペーパードライバーと似たようなものだしね。」


「早く唯ちゃんに信用されるくらいになりたいなぁ・・・・

 でもこれで少しは褒められるかな」



一方、



「勇樹さん、目的地はそろそろだ。が、その前に確認したいことが

 あるんだが」ファルツはそう言うと


「やり方は・・・


こちらの魔方陣とあちらの魔方陣をつなぎ、いわゆるトンネルを

作りそのトンネルでミネルヴァ様をこちらに送る。


でいんだよな?」と少し疑問がある感じで言った。


何か問題でも?と勇樹君が言うと


「そもそも、ベル様であれば単独で転移魔法いけるんじゃないかと

 思いまして。なぜこちら側で美香さんに転移魔方陣を

 作らせる必要があるのかなぁと。もちろん、目印としてであれば・・・

 私も知りませんが。まぁ確実に勇樹さんの所という事であれば。

 そういう事なのでしょう・・・。」


「こちらの座標へ、あちらでベル様がミネルヴァ様を送る。

 目印として勇樹さんの刀。それだけで十分と思うんです。

 では何故、美香さんも転移の魔法陣を作っているのか。

 これだと、送り合いになりますよね?美香さんは何かを

 送るのでしょうか。


・・・もしかしたら美香さんかベル様が違う魔方陣なのか・・・」


「まぁベル様はベル様の考えがあるのでしょう。私どもには

 想像もつかないレベルなのだから」


すみません、いきましょう。とファルツは言い、

勇樹、ファルツ、そしてウゾ、私は目的地へ向かった。



そして合流。


「なんだ?ソミュール、

 美香の血でも吸って酔っぱらっちまったのか?」とウゾ。


返事がない。相当しんどいらしい。

ウゾもそれ以上からかうのを止めるほどに。


「出来てるわ、勇樹君。あと3時間ほどで母さんはこちらに届く」

美香は勇樹君に向かってそう言うと


勇樹君はうなずいた。


ファルツは一人、美香が書いた魔方陣を覗き込む。

「ん?(なんだ、この違和感は。何かが違う・・・・。)」

魔方陣の周りをゆっくりと歩きながら確認するファルツ。


そしてファルツは気づく。


「なんだこれは!なんなんだ美香!」


美香は

「すっごい時間かかったんだからね。

 唯ちゃんに言われたとおりにするの」


完璧な、それも、裏から見たような真逆の魔方陣だった。

少しの間違いもなく・・・・。


「こいつはなんなのだ。ベル様の孫?ひ孫ってだけで、これなのか。

 人の所業を超えている・・・。そもそも人間なのか・・・」

と驚愕しながら小さくつぶやいた。


「気づいたみたいね、うらっかえしって事。

 さすが私が気に入ったローブを着ているわ」

そう美香が言うと


「向こうで唯ちゃんが、ベルさんね、勇樹君のお母さんを送る魔法を唱える。

 そして、その転移につられるようにほんの少しの誤差で、

 唯ちゃんを引っぱるような魔法を私が唱える。

 転移の呪文を一言一句間違えずに真逆に唱えるわ」


あっちには唯ちゃんしかいない。だからお母さんを送るぐらいしか

魔力的には無理。だけども、こちらから、それに乗せて引っぱるように

私が唯ちゃんを連れてくる。


あちらからお母さんを送って時間が過ぎるとトンネルは閉じちゃう。

だけどもほんの少し、ほぼ一緒と思えるくらいのズレなら

それに引っぱられる感じで私の魔力でも唯ちゃんを連れてこれる

・・・・はず。



「と、唯ちゃんは言ってたわ」と美香。


「出来るのか!?そんな事!」とファルツ。


「わかんないわよ、唯ちゃんも初めてっていってたし。

 そもそも向こうの世界には魔力も魔法もないのよ?

 前例なんてあるわけないじゃない、バカね」と、美香。


じあ、時間まで私は横になってるわ、少し疲れたし。と

ソミュールの所に行って隣に寝転んだ。


これ考えたの唯さん。唯さんらしいね!とゲラゲラ笑いながら勇樹君。



余った時間でみんながおのおの雑談している。


そしてあと10分ほどとなった時にファルツを見ると

陸に打ち上げられた魚のように横たわり足をビクつかせている。

・・・・美香を見ると元気になっていた。


と、今度は

「おおーーーーい」と声が聞こえた。ボルドーだ。

寝てたのではないのか?と私が聞くと

「2,3時間寝れば十分だ。それよりも・・・これ」


ボルドーは勇樹君に布のようなものを渡した。


「なあ、勇樹、ミネルヴァがさ、こっちに来た時にさ、

 紫の国に帰ってきた~って思わしたいじゃないか。

 だからさ、だからさ・・・これで・・・

 ミネルヴァを包んでやってくれないか」


勇樹君に渡された物


鮮やかな紫色、そして中央上に塔らしき物、その下には盾。

そして、それらを挟んで2匹の黄金の龍が向かい合っている。



紫の国の御旗だった。



 












 





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