第11話 ウォッカの娘 ジヴァニア

青の国は神に対しての信仰心がとてつもなく強い国だ。


神とは生きとし生けるものすべてを創造し、愛し、導く存在。

と、青の国では言われている。


では、神は何故、様々な種族を作ったのだろうか・・・。


神が全ての者を愛するのであれば・・・・。

信仰心が高い青の国。矛盾だ。戦争なんて。


隣人と友好的に接する紫の国。矛盾だ。戦争なんて。


どちらの言い分を聞こうがハッキリわかることは

青の国は紫の国と戦争をした。

そして青の国は紫の国を滅ぼした。理由はどうであれ。

原因がどうであれ。ただ、それこそが変わらぬ事である。

青の国の言い分、紫の国の言い分。




ボルドーは眠たくないのか・・・。あぁ、そうだった。

吸血族だった。付き合ってもらおうか。私の話に。

そう、私のこのかっこいい体と、そして「みね ふじこ」について

じっくり聞いてもらおうか!


ボルドーと話しながら、私は

勇樹君とウゾはどこに行って何を話しているのだろうかと

それも気になっていた。



「ここだ、今はもう建物なんてないが、ここがミネルヴァ様の

 生まれた家があった所だ」

そうウゾは言うと「じゃぁ俺は少し村の外を見回ってくる、じゃあな」

と言い、その場を離れた。


後で聞いた話だが、ウゾが一時ほど歩き、振り返ると

勇樹君はただ、ただそこに立っていたそうだ。


そして朝になる。

ボルドーは「もう朝かよ、よゐこは寝る時間だ」

と言い、「気を付けて行って来いよ、帰りを待っている」


と後ろ向きに手を振りどこかへ行った。



美香は既に準備をしている。勇樹君に借りたバイクを起動させると

「ソミュール、行くわよ」と声をかけた。

ソミュールも馬に乗り「ではいくか」と美香に言う。続けて

「明るい時間帯は苦手なのよね」というと、仮面をつけた。


「何それかっこいいわね!まだ持ってないの?私にも頂戴」

美香とソミュールはとても仲が良さげに話している。


「魔方陣を展開する場所はファルツに伝えてるって

 勇樹に言っててね、ユキちゃん。」そういうと手を振り

出発した。


よし、私も準備をするか・・・・。と思ったが特に

何もすることないので忙しいふりをすることにした。



6時間後 シンの森


「もうシンの森よ、もうちょっと奥に行くと少し開けた所が

 あるわ、そこで少し休憩しましょう」とソミュール。


そこにつくと美香はバイクを降りる。

ソミュールも馬から降り、馬を休ませた。


「なにここ、わかるわ、精霊たちが・・・タクトを使って

 呼び出さないでも、いたるところに居るわ」

「そうか、唯ちゃんは私がまだまだ魔力もなくて素人で心配だから

 ここにしたのね、場所。精霊たちがきっとお手伝いを

 してくれると思って・・・。」


ソミュールは美香に問いかける。

「なぁ、唯ちゃんと言うのはお前の母の名前か?お前の母も

 向こうの世界で精霊使いだったのか?」


美香は

「こちらの人間よ、私のおばあちゃん、曾祖母よ。こっちではとても

 有名だったみたいよ?」と言うと

ソミュールは「へぇ、でもユイって聞いたことはないな」と少し

考えながら言った。


「あー、こっちではベル、ベル・ジュラックって名前だったのよ」

美香がそう言うとソミュールはとても驚いた感じで


「はぁあ!?嘘だろう!なんでそんな重大なことを先に言わないんだ!」

「もう有名どころではないぞ、数十年前に行方不明になってからは、

 もうその方の軌跡を描いた書物がいたるところに、魔法士の家庭には必ず

 あるくらいだぞ」


「確かお孫さん?いや、ひ孫さんと行方不明になったとなっているが

・・・・そのひ孫がお前か・・・・?」


「確かに唯ちゃんは子供たちや、孫の事心配してたわよ?いまどうしてるの?

 私の両親たちは。」


「普通に生きているわよ、貴方の父親は。今は黄の国にいるわよ。

 ベル様の娘さんとお婿さんは病気で亡くなられたわ、とある疫病の

 研究をしてて自ら被験者になって。でもそのおかげで治療薬が完成して。」


「あれ?あれ?お母さんは?」と美香が尋ねると

「しらないわ、あまり聞かないわねぇ。ベル様関係は色々と本とかに

 書かれているけどあなたのお母さんのことはあんまり載ってないわ」


「でも確か、ほんの少しだけど、一番新しい書物で家族について

 書かれている物には剣の加護を受け冒険者であると

 記載してあったのを覚えてるわ」


「そっか・・・・そっかぁ・・。名前は・・・あ、思い出した。

 母さんの名前はウォッカだ。あ、私の名前も思い出した・・・」


「ジヴァニアでしょ?書物で見たわ。一緒に行方不明になったのは

 てっきり男の子と思ってたわ。」とソミュール。

「そうなの?」と美香。


「美香でいいわよ、そっちの方が短くていいわ。」


「どっちも短い名前じゃないか・・・」と呆れたように

ソミュールは言った。


「私も冒険者になったらいつか会えるかな・・・母さんに・・・。」


「どうだろうな。まぁ生きていればいつかは会えるさ。その時は

 一緒に探してもいいぞ?」とソミュールは言った。


そう、社交辞令だ。しかし、美香には通用しない。

「じゃあ色々と片付いたら一緒に冒険者ね」すごく真顔で言う。


「勇樹さんと一緒に居ないといけないんじゃないのか?側近だろ?

 それほどの魔力持ちだ。必要だろう、おまえが」



「じゃあ勇樹も冒険者でいいんじゃない?」


さすが美香だ。すべて解決。















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