第8話 それぞれの言い分
「今、馬を準備します。」
そう言うとソミュールは先ほど先頭に居た男の馬を連れてきた。
「おいおい、俺の馬じゃねえか、なめてんのか?」と男は言う。
「ウゾは他の者と二人で馬に乗れ」
ソミュールはその男に向かって言った・・・。
勇樹君は馬に乗ったことがないので俺は自分ので行くよと、
丁寧に断りバイクの所に向かった。
「なにそれ、かっこいいな、なんというゴーレム!?くれ?」
ウゾはそれはもう嬉しそうに言うとソミュールが
「ジェニエーベル様に向かってその言いようはなんだ!」と
お怒りになっている。
しかし勇樹君はそんな丁寧な言葉はいいよと言い、
勇樹のほうの名前で呼んでほしいと言った。それと、「様」も
付けないでほしいともいった。
「ジェニエーベル様がそうおっしゃるなら・・・。で、では
勇樹さ・・ぁ・・・・・ん?」と
超有名な転生アニメのパクリともとれるような感じで言った。
私は(作者め、パクったなと)すぐに分かった。
こればかりはやれないなぁ、と勇樹君は言い一緒に乗るか?
と笑顔で誘った。
ウゾは大喜びだ。
「じゃあこの馬には私が乗るわ。こう見えても乗馬得意なの」
美香はそれは嬉しそうに言って、すでに馬を撫でている。
では行こうか、先行よろしくと勇樹君は言い、私を
凄い発火性の高い液体が入っているタンクと言う所にまたもや
ネットで固定した。
走り出すと後ろに乗ってるウゾは大喜びだ。
「すげえなこれ!もうずっと吠えまくってるぜ!ビンビンくるぜ!
というか、うるせえな!」
「このゴーレムの名前はなんていうんだ?勇樹。」そう尋ねると
勇樹君は
「ジョニーだ、バイクの名前は昔からジョニーと決まっている」
と凄くかっこつけた感じで言ったが、顔を覗き込むと必死に
笑いをこらえてる。
ウゾは「ふむジョニー・バイクっていうのか」と納得した。
「いや違う、ジョニー・ザ・バイクメンだ」と
真面目な感じで言ったがすぐに吹き出し大笑いをした。
と言うようなやり取りをしながら40分ほど走ると村に着いた。
村と言うより・・・。勿論、私は経緯を知っている。
ここは紫の国があった頃はちょっと栄えた街だった。
が、戦争の形勢がほぼ決まり逃げた紫の国の者たちがここに
立てこもり、自ら街に火を放ち自決したと聞いている。
「変なところですよね・・・。村っていうより廃墟ですよね。
そりゃそうですよ、ここは昔ちょっと栄えた街だったんです。で
も戦争が終わった後に青の国の兵士たちが街に火を放ったの。」
ソミュールは何を言ってるんだ!?と私は思った。
「城から落ち延びた師匠とジェニ・・・勇樹さんを探すために
この街に来た青の国の兵士達は、ここが師匠の故郷と知って
絶対にここに居るはずだと、あぶりだすために火を放ったの。
だから焼けた・・・焼け切った建物が多いでしょう?」
勇樹は「え?ここって・・」と言い・・・言葉を止めた。
「こんなところに住めないからって若い人たちの半数は
青の国の街に行ったわ。そして街から村に格下げよ。
それからも何度も何度もここにきたわ、青の国の兵士たちは。」
ちょっと待ってほしい。青の国で言われていることと違うではないか。
ソミュールは続けた。
「青の国の人間たちは私達のような亜人を見下し、
魔族の使いで悪魔だと言いながら、神の思し召しだとかを宣いつつ
乱暴をしたり物を勝手に持って行ったり連れ去ったりした。
奴隷にするためにね。
紫の国の王は魔族だったのだ、と。
・・・魔王の僕だったのだ、と。宣いつつ。」
「亜人だけならまだしも、生きている人間が居たにもかかわらず
有無を言わせず火を放った。物は盗み、若い・・・特に綺麗な亜人や
この街の人間の女性を見分だと言いながら、下種な顔で連れて行った。
私達に言わせれば、青の国の人間こそ悪魔、魔族!魔王の僕ではないか!」
「それぐらいにしとけ」ウゾはソミュールの肩に手を回し引き寄せた。
少し間をおいて
「勇樹、こっちだ。」ウゾは歩き出した。
完全に焼けて崩れ落ちた、前は教会だった様な建物に入る。
「俺だ、ウゾだ。入れてくれ。後、客人も数名いる。」
物陰から一人のローブを着た男が現れた。
「この村に入る前に探索の魔法をかけて近くに誰もいない事は
確認してるんだろうな?ソミュール」
と、ウゾではなくソミュールに語り掛けた。
「問題ない。当たり前だ、そんな事」と不貞腐れたように
ソミュールは言った。
そのローブの男は魔方陣を描くと中から扉が現れた。
「ところで、その客人と言うのはそこの人間二人と・・・
ほう、精霊を人形に宿しているのか、かわいいな。
それと・・・・なんだてめえ!なめてんのか!?」
あー・・・・その反応2回目です。
「というか人間じゃねえか。死んで転生しちまったのか?」
おお、人間と分かってくださる方がここにいた!
まって?・・・・・え? 死んで転生?違います!違いますって!
「転移に失敗して私たちが住む異世界に魂だけで来ちゃったから
私がユキちゃんに統合したのよ」
と美香はタクトをクルクルさせながら言った。
美香は何かを言いたそうだったので
頼むからそういった物騒な感じで突っかかるのはやめようね?ね?
と言おうとしたが間に合わなかった。
「あんた・・・・」美香はその男を物色するようにじっくりと、すべてを
図るように。そして言った。
「その服、衣装、素敵ね。その服でコミケに行きたいわ。
どこで手に入れるの?そんな衣装。
私も欲しいんだけども?」
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