第7話 浮かび上がる文字は・・・

「見ない格好だなぁ、どこの国から来た?人間二人に

 精霊と、・・・は?なんだてめえ!」

吸血族の先頭に立っている男が言った。


分かりますとも。私自身も「なんなんだ俺」ですから。

とりあえず、ちょっとレアな精霊と言っておいた。



「そこの綺麗な姉ちゃん、とりあえずそのタクトに物騒なほどの

 魔力込めるの止めてくれねぇかなぁ。こっちも手荒なこと

 したくないんでね」と。


美香は少し怖い顔で

「そっちが先よ、貴方の後ろの魔法士が物騒なほどの魔力を

 込めるの止めたら私も止める」そう言うとさらに身構えた。


「わかったわかった、ソミュール止めとけ」そう男は言うと

後ろの魔法士は杖を構えるのを止めた。


と同時に美香もタクトをタクトホルダーに仕舞った。

(いつの間にそんな物作ったんだよ・・・・)


「綺麗な顔して怖いほどの魔力を込めるんじゃねえ」と美香に男は言う。


「で、お前らは何しにここに居るんだよ。まぁ青の国の連中とは

 違うってことはわかるがな、というかさ、どこの国の連中とも

 違うのか?そんな服は見たことねぇ」


「異世界から来たのよ」美香は真面目な顔で言った。


「はぁあ?なめてんのか?」男は勇樹君の少し前に歩み寄る。

が、竈の近くにあった物に気づいた。

「おい、その弓はなんだ、そんなの見たことないな」


「異世界の弓よ、異世界から来たって言ったでしょうに」

美香は少しむすっとしながら言った。


男はさらに勇樹君に近づきジロジロと姿格好を確かめる様に

見ている。


「かっこいいなその服、俺にくれ」と少し笑いながら男は言った。


ばかなのか、この男は・・・。と思っていると、なんと勇樹君。

上着を脱ぎ

「まぁちょっと着てから考えたら?」と笑いながら言い服を渡した。


男は嬉しそうに着た・・・。「似合う?」まんざらでもない様だ。

男は服を脱ごうともせず

「で、何しにここに来たんだ、事と場合によっては残念ながらだ」


勇樹君はシンの森に行かなければならない事を伝えた。

そして「母を迎えに行く為だ・・・」と。


その時、話を遮るように後ろの女が前に出てきた。


「あなたのそのペンダント、アイテムボックスよね。私の師匠の

 物と似ているわ」

ソミュールと呼ばれた女はそう言うと、勇樹君に近づき

ペンダントを覗き込む。


「母から譲り受けたものだ・・・。」そういうと首から外し

チェーンの所を握りソミュールの顔の前に突き出した。


「銀色に鈍く光ってるのね、師匠が持っていた物と同じだわ。

 アイテムボックスはね、作った魔導士で色が違うのよ。

 私が知る限り銀色の物は一つしか知らないわ・・それにこの光」


「どうやって手に入れた!貴様!」興奮したように言い放つ。


「だから母から譲り受けたものと言っただろう・・・。」

少し怒ったように勇樹君は言った。


「なら使って見せろ、使っていた者が譲渡の魔法をかけない限り

 他の者が使えるはずはない!金欲しさに奪ったという事も

 考えられるからな、装飾品としても高く売れる品だ!」


「そこまで言うなら。中のものを取り出せばいいんだな?じゃあ

 やってやるよ、そうだな。母の分身を見せてやる」


そういうと勇樹君は少し興奮したように左手でペンダントの正方形の箱を

握りしめた。と、同時に鞘に収められた刀が右手に持たれた。


「これでいいのか?」少し怖い顔で勇樹君はソミュールの顔の前に

刀を突きだした。


「そ、そんな・・・。それは絶対に師匠の・・・ミネルヴァ様の物のはず。

 なぜあなたが・・・・。譲り受けたといったわね、貴方・・・何者?」


横から美香が

「この人の名前は神原 勇樹。・・・そうね、こっちの名前で

 言った方がいいかしら?ジェニエーベル・ジャルジェよ」


と同時に勇樹君が刀を鞘からゆっくりと抜く。

刀の鎬地(しのぎじ)の所に淡い紫色の文字が浮かぶ。




この魔剣は ジェニエーベル様の為だけに ミネルヴァが魔力を込め作成す

この魔剣が ジェニエーベル様の為だけに 力を振う事をミネルヴァが命ずる

この魔剣は 霧島 ミネルヴァ打チ直シ ジェニエーベル様と共に



ボロボロと涙を流す勇樹


気が付くとミュールも泣いていた。

「わかります、その刀はミネルヴァ様その物です。勿論、分かりますとも。

 この魔力量・・・。そこまでしてミネルヴァ様は・・・。」


そう言うとソミュールは勇樹君に膝まづき首を垂れる。

後ろの4人も続き、膝まづき首を垂れる。


「よくぞ、よくぞ、お帰りになられました・・・。ジェニエーベル様」


「信じておりました・・信じておりましたとも。ミネルヴァ様と逃げ落ちて

 行方不明になられても、我ら吸血族一同全ての者が生きていると・・・

 信じて・・・今まで、どんなに誹られても、生きてまいりました。」


続けて、間を置き、

「近くのクレマンの村に私どもと同行をお願いしたく存じます。

 会っていただきたい男、私どもの族長が居られます。ミネルヴァ様は

 勿論の事、サンテミリオン様とも懇意にしていた者でもあります。

 お話を是非していただければと思います。」


私と勇樹、美香は少し話し合い、時間的に余裕がある事から


ソミュール達、吸血族と一緒にクレマンの村に行くことに決めた。

 










 

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