第5話 小売業も大変です


勇樹君はテキパキとテントを畳んでいる。


昨夜はカレーを食べた後少しこの世界の事を

雑談しそのまま二人は寝た。私は体がないからなのか

全くと言っていいほど眠くなかったので、

美香(すでに呼び捨て)があっちの世界から持ってきた私用のパーツ、

まぁユキモリ・・・おっと、ユキちゃんに取り付けられる

装飾品を使って色々とやっていた。

・・・美香は「武器だって!武器!」といっていたが。


カビザシなる槍っぽいなにかと、超高速弾体加速装置なる

すっごい長い「なにか」。それを手にもってポーズ決めたりしてた。


体の後ろについてる羽根のようなもので本来は飛べるらしい。

あっちの世界で美香に「飛んで?ねぇ飛んでよ!」と

何度もせがまれたので飛ぼうとしたが飛べなかった。


と、なんだかんだで朝になって今に至っている・・・。


今日中に目的地までの3分の2まで行きたいらしくルートを

昨日のうちに3人で確認した。


遠回りになるより一直線で最短距離で行こうという話になったので

メリットとデメリットを教えてあげた。

メリットはもちろん早く着くことができる。

デメリットは魔物と遭遇する確率が格段に高い、いや確実に

出合って襲われる事、とある亜人族のテリトリーである事。


その亜人族は夜に活動することが多いので

一気に通り抜けようという話になった。

その亜人族とは吸血族と呼ばれ動物や人間の血を食事とすると

伝えると、勿論、美香が「ヴァンパイアね!キタコレ!」

と大はしゃぎだった・・・。


美香にヴァンパイアの事を聞いてみたが、

残念ながらイコールではなかった。

こちらの吸血族はただ単に食事が血である事。吸われても

自身が吸血族になることはない。不老不死でもないし

日光に当たったからと言って灰になったりはしない。


多分「暑ちぃいな、眩しいから帽子かぶるか」

くらいしか思わないだろう。何故夜に活動が多くなるのか・・。

それは多分、夜の方が過ごしやすいから、という

単純な理由からだろう。


そしてなにより、強い。能力的に言うと人間の上位版だ。


私は勇樹君と美香に言っていない事がある。それは

その吸血族は書物で、紫の国が滅んだ原因になっているという事。


紫の国は人間の国では珍しく、亜人族ともよく交流をしており

特に、吸血族、エルフ族、ドワーフ族、鬼人族。

その他にも今述べた亜人族を介して様々な亜人族と交流を深めていた。

・・・らしい。


そして吸血族が紫の国をそそのかして青の国に戦争を仕掛けた

と、なっている。・・・青の国の書物では、だ。


まぁ出会わない事を祈ろう。



そして出発。

道中に美香が「あれなに?あれは?」と聞きまくってきた。

どうせ教える事となるのでウンチクをかませながら

丁寧に・・・そう、丁寧に教えていたら


既に4時間走っていた・・・・。


「この辺で昼ご飯にしよう」といい勇樹君がバイクを止めた。


「勇樹、肉よ?肉。」と、それはもう脅迫するような感じで

言った。勇樹君は苦笑いしながら「わかったよ」と

なんともほほえましい会話をしていた。


この辺りに生息する動植物を教えた。

狩りやすいのはホワイトラビットだろう。勿論、食用であり

人間に飼われていたりするのもいることを教えた。


他にもスモールサングリアという少し獰猛な動物


「スモールサングリアかぁ、イノシシみたいなものかな。

 さっきのホワイトラビットもだけど動物の名前は通じるものが

 あるんだなぁ。」と勇樹君。


「ジビエね!期待しているよ!勇樹君」と・・・・美香。


強いのかなぁ・・・と勇樹君が聞くのである程度の強さのランクを

分かりやすく伝えた。



魔法士が使う低位の基本魔法「ファイア」

平均的な能力の魔法士がこれを使い倒す為に何発

打てばいいのか。


ホワイトラビットは2発

スモールサングリアは5発


ついでにこの辺で出るであろう魔物も教えてあげた。


スライム各種 2発

ラット各種 3発

シエンヌ各種 5~7発

レッドアイタイガー 逃げる

ブラックウルフ 逃げる


「よし、狩に行こう!勇樹君、弓の腕の見せ所ね」

と、美香が言う。


勇樹君はなんかとてもかっこいい弓をアイテムボックスから

取り出した。

「なんかさぁ、弓ってなにげに高かったからさ、アーチェリー

 にしたのよ。ちょうどいい値段の中古品があってこれにした。

 初めて使うから店の人に色々聞いたり。それでも合計20万。

 笑いしか出なかったよ・・・。」


どうやら異世界に行くために合計50万の買い物をしたらしい。

支払いは全てカード払い、と勇樹君は少し悪そうな顔をして言った。



「異世界で使いやすいやつ下さいって言ったら、別な店員がきて

 親切に教えてくれたよ」


・・・異世界で使いやすいやつって、そんなん聞いてよくぞ、

教える店員が居るもんだな。と感心してたら


「まぁ、あっちも商売だからヲタク系の店員と変わって接客

 したんだろうね。小売業接客業も大変だねぇ」と美香。


うんうん、と勇樹君はうなずき

「どんな世界?」「中世系かな、それとも近未来系かな?」

とか「相手はモンスター?魔族とかかなぁ・・・だったら、これかな」

とか「矢はもったいないからかっこ悪くてもキチンと回収してね」

とか「もしかしたら魔法込めるかもしれないので・・・これかな」

とか「やっぱ最終的にはドラゴン?あーでもそれは無理かなぁ」

とかいろいろと親切にしてくれたらしい。


「とりあえず矢は50本は持っていくね、僕ならばねっ!」と

店員も最後はとても興奮していたらしい。


「やっぱ持ってるの?アイテムボックス」とニヤニヤしながら

言ってきたので支払いが済んだ後に



目の前でアイテムボックスを使ってあげたらしい・・・勇樹君。



















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