第4話 お約束のアレ

魔物は出てこないだろうかと心配したが

まぁ美香さんならどうにかなるのではないかという気もしないでもないので

わたしは勇樹君とテントの所で居ることにした。


何かお手伝いをしましょうかと言うと勇樹君は


「なにかこの世界の事を話してよ、あと、ここって紫の国の公園よね?多分

 だけど。なんか昔よく来た記憶があるんだよ。薄暗くてよく見えないけど。

 母さんとボールで遊んだことがあると思う、それと遊んでいる俺を遠くから

 見ていた綺麗なドレスを着た女性。そのひとが俺を生んでくれた人

 なんだろうね俺が手を振ると、すごく優しく微笑みながら手を振ってた」


「まぁ、あんまりよくは覚えてないけどね、ハハハ。俺には二人の母さんが

 いるんだね。・・・いたんだね」


勇樹君はそういうと少し手を止めたが、すぐに竈っぽい何かを

せっせと作り出した。私も一緒に作りながら

まずはこちらの世界のちょっとした生活ネタを話すこととした。




一方、美香


「もったいないなぁ、すごくもったいない」

美香はたちどまり、つぶやいた。

辺り一面に切り株がある。均等にあったであろうその樹はたぶん

並木道のようになっており多くの人たちがその間の道を通ったはずだ。


一時して美香は、ところどころにある枯れ枝を拾い始めた。


「美香しゃん美香しゃん、あそこあそこぉ~」チルちゃんは美香の

頭のてっぺんで跳ねながら語り掛ける。


ピョンピョンしながら美香から離れちょっと先の切り株の所に行った。

美香がチルちゃんが向かう方へ歩いていくと、そこには勿論切り株。

しかしよく見ると切り株に若木が付いている。


「この若木がねぇお願いがあるらしいの~、私を持っていってって言ってるよぉ」


美香は目をキラキラさせながらチルちゃんを介して若木に話しをした。

どうやらこのまま居ても、

たまに来る青の国の見回りが折って行くらしい。何故かと尋ねると

ただの暇つぶしなんじゃないかなぁと若木が言った。


どうせそんな目に合うならせっかくここまで育ったので私のタクトに

なりたいらしい。ほうほう。


というか、なぜ私のタクト?と聞いたら

遠目からでも精霊使い特有のオーラが見えたらしい。それもすごく

綺麗らしい。・・・もちろん美香はニンマリしている。


精霊なのかと美香が聞いたら違うらしい。精霊とは話せるが、というか

精霊が木々と話せるのか・・。チルちゃんに全ての木とか花と話せるの?

と聞くと「話す意思がある物」だけらしい。ほぼすべての木や花は

いっつも眠ってるっぽい感じらしい。


そういうことならと、美香は勇樹に借りてきたサバイバルナイフで

若木を切り出し、手に取った。


思ったよりまっすぐで太さもちょうどよかった。

「できるかな・・・」

美香はつぶやくとゲームでやっていた錬金よろしく、その若木を基に

タクトを作成することとした。


初期のタクトなのでそれほど鉱石とかもいらないし、

というか美香は裁縫用の針を一つ使う事にした。


美香はしゃがみこんで懐中電灯を置いた。

地面に魔方陣を指で描く。そして呪文を唱える。

魔方陣は少しピンクっぽい光を放ち、そして消えた。


若木はほんの少し形状を変えた。元より握る部分が細く

そして、すごく真っすぐに穂先に向かってさらに細く

なっていってる。まごうことなきタクトとなった。


美香はルンルン気分でタクトと拾った枯れ枝を持って

勇樹とユキちゃんのいる所へ戻った。


テントの所に帰るとすでに色々な準備が整っていた。

美香は拾った枯れ枝を竈の所に置いた。


勇樹はサバイバルナイフで枯れ枝を少し削り火が付きやすい様にし

持っていたライターで火をつける。火が付くと少しずつ枯れ枝を

そこに置いていった。

ユキちゃんは驚きつつも物欲しそうにライターを見ている。


勇樹はアイテムボックスから水の入ったペットボトルと鍋、

そしてこしひかり5食パックとレトルトカレーをとりだし

なんやかんややっている。


「ねぇねぇタクト作っちゃった」


美香はユキちゃんと勇樹に見せた。ユキちゃんはそのタクトを見ながら

「ほぅほぅ」と頷き、「マルゴーの木で作った物ですな、いい物です。」

そう言うとうんちくを語りだした。


初級の精霊使いが使うタクトはマルゴーの木で作った物が多く、さらに

素材とする物で様々な効果も付けやすい。そこまでは強くできないが、

扱いやすいことからサブのタクトや生活用として使う人も多いらしい。


ユキちゃんは美香が裁縫用の針を素材にしたと聞いて少しドキドキし

ワクワクした。針の素材は?と聞くと「わかるわけない、鉄?」

と言われた。


「銅だよ、それにメッキを塗ったものだと思う。昔、母さんにも聞かれて

 調べたことがある、メッキはニッケルメッキ。熱処理とかも凄くて。」

と、勇樹が話に飛び込んできた。


じゃあ結構な代物になるかもしれませんね、とユキちゃんは二人に言った。


出来上がったカレーを勇樹と美香は食べていたが、美香が


「でもこういったところに来てもレトルトカレーってなんかアレね」

というと勇樹が


「そりゃ初日だからね、時間的もあれだし、明日からはユキちゃんに

色々聞いてこっちの食材で何か料理しようかな」


美香は大喜びで

「勇樹は料理上手いもんね、期待してる」と返す。


「そりゃ母さんと暮らしている頃は、夕食ほぼ俺作ってたしなぁ。

 あ、弁当もか。・・・母さんは料理がアレだったしなぁ」


少し沈黙が流れたが、すぐに勇樹が「明日はなんか肉食べたいね、肉。」

美香もカレーを食べつつ笑顔でうんうんと頷いた。





そうか、ミネルヴァ様は料理がアレだったのか・・・・。

これはもう、お約束的なアレなのだろう。


















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