第3話 野営の準備
ジェニエーベル・ジャルジェ様。あちらの世界では神原 勇樹。
美香さんと違い、本当の二十歳。
正確なところは後で調べようと思うが、約15年ほど前に
ミネルヴァ様とあちらの世界に転移した。
円卓会議(自称)でミネルヴァ様の事は聞いた。紫の国の
王女様の側近であった。勿論私も名前は知っていた。歴史書で。
そういえば父に連れられて紫の国に行った時に、遠目からだが
王と王女様。そして王の後ろにいる黒い鎧の戦士、白いローブの魔導士
グレーのローブの政務長、ほか数名を父が教えてくれた気がする。
まぁ私もその時は10歳くらいだったので、
そんな事より噴水が綺麗でそっち見てた気がしないでもない。
当時、紫の国、いやエアスト大陸で5本の指に入るほどの魔導士だ。
多分、ミネルヴァ様はそこに居た白いローブのお方だったのだろう。
勇樹君は、そのミネルヴァ様に育てられ、
仮想空間ではあるが英才教育(ゲーム)をうけていた方である。
もちろんこちらの世界の方なので武器の加護を持っている。
弓だ。しかしその他に刀も使えるらしい。
「らしい」というのは私自身、刀の存在についてよく知らないからだ。
この世界には12種類の武器がある。その中に刀は入っていない。
実際見たことがない。可能性があるとすれば書物に出てくる魔剣。
そう13番目の武器だ。しかし現存しないので結構な昔から
武器は12種類となっている。
勇樹君は目の前でミネルヴァ様がお亡くなりになるのを見ている。
非常につらく、悲しいものだろう。それも、勇樹君自身の為にだ。
勇樹君の未来のために死んだのだ。
それもあちらの世界の武器、刀を鍛えるために。これは私の憶測だが、
その刀が13番目の剣、魔剣のような気がしてならない。
(魔剣の加護とか・・・あるのか?)
そして突然、この世界に転移と言われて、勇樹君の精神的な所が
どうなってるかわからない。多分、わけがわからないことだらけで、
勢いや流れだけでここまで来ているのだろう。
美香さんや私が居ないとどうなっているかわからない。
美香も私もミネルヴァ様の事を切り出すタイミングがわからなく
勇樹君の変に明るくしている所に乗っかってるのかもしれない。
その勇樹君が移動の為にアイテムボックスから取り出したバイク。
美香さんが裁縫用の針をタクト代わりにして精霊を召喚し、バイクに
統合しようとした。
結果を先に言うと失敗だ。
美香さんの魔力はまだ回復しきっていないしタクトもない。
そもそも針かよ!とマジ顔で突っ込みたくなって突っ込んだくらいだ。
針で描く魔方陣は少し線が細く一部擦れていたりして
私から見ても「これは無理だろう」といような代物だった。
・・・がだ、精霊召喚は出来てしまったのだ。
もう恐るべしとしか言いようがない。
ただ、非常に低位の無名の風の精霊だった。
その精霊曰く「これと統合して動かすの無理~」とか言われたらしい。
折角呼んだのでってことで、美香さんはバッグから
そう変に頭部がでかく頭部と体のバランス、比率が1:1くらいの
フィギュアを取り出し、それと統合させた。針で。
今まさに美香さんの肩でぴょんぴょんと跳ねている。
勿論美香さんはご満悦である。
出来るだけ早く目的地に着きたいと勇樹君が言うので
早速出発することとなった。勇樹君が前で美香さんが後ろだ。
んで私はガソリンと言うすごく発火力の高い燃料を入れる場所の
所に括りつけられた。
「ノーヘル?」
「うん、ノーヘル」
「いいね♪」
「うん、ここは日本じゃないしね」
という掛け声と同時に走り出した。
※皆さん、日本でバイクに乗る時はヘルメットはかぶってくださいね。
2時間ほど走る・・・。も、もうこんなところまで来たのか。
もう少し走ると野営が出来そうな所があると伝えると
今日は何とかそこまで行こうという事になった。
たった2時間で予定の10分の1を走ってしまった。
おそるべし!バイク!
野営する場所はシンの森から南へ馬車で約4日ほどの場所。
バイクなら2日もかからないだろう。
紫の国のすごく有名な公園があった所だ。すごく綺麗な場所だった。
そう、すごく綺麗な場所だったのは覚えている。しかし今は・・・。
因みに目的地のシンの森は紫の国があった場所の北東側。青の国との
国境の所である。そんなところだから結構小競り合いがあった場所だ。
私の住む町からも近い。
30分ほど走り野営をする場所についた。結構暗くなってしまった。
とても静かだ。静かすぎて怖い。魔物が襲ってきてもおかしくないような
そんな雰囲気もある。
勇樹君はアイテムボックスから何かを取り出しテキパキと組み立てていく。
テントだ・・・。
「そんな物も準備してたんだね」と美香さんが勇樹君に言った。
どうやらあちらの世界でミネルヴァ様とよくキャンプ、こちらで言う所の
野営訓練に行ってたらしく、そのあたり一式やその辺りの準備、
やり方は一通りというか結構得意らしい。
ミネルヴァ様はこういったことも想定していたのだろう。
ふと勇樹君を見ると少し思いつめた顔をしていた。が、すぐに笑顔で、
もう少し準備もあるし、出来れば火をおこしたいので枯れた小枝とか
草があれば拾ってきてと美香さんに言った。
美香さんは「がってんしょうちのすけ」というわけわかんない一言を言い
肩にピョンピョン跳ねてるフィギュア、(後で聞いたがチルノだから
「チルちゃん」と命名したらしい。)と手に光を放つ物を持ち
どこかへ行ってしまった。
1人で大丈夫なのだろうか。
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