第一章

第1話 ユキちゃん(コルン)のつぶやき

ワタクシの名前はコルン・ブラントと申します。今は諸事情で「ユキちゃん」と

呼ばれております。事の発端は、あ、そうそうワタクシこうみえて魔導士

なんですよ。外見はあなたの世界で言う「ロボット」みたいでしょ?

実はですね、本当にロボットなんですよ!すごいでしょ!?・・おかしいだろ!


そうでした、発端はですね、とある魔導書に載っていた転移の魔法を使ったら

なんと、貴方たちの世界に転移しちゃったわけですよ。それも魂だけ・・・。

もうね、死んであの世に来たかと思いましたよ。今思うと多分、下手だったん

でしょうねぇ。その後に出会えた稀代の最高魔導士様の呪文と魔方陣を見た時

そうおもいましたし・・・。


それで色々ありまして、なんとかこの、そう私の居た世界に戻ってこれたんです。

普通に考えてですよ?分離された魂がこのロボットから抜け出して本来の体に

戻ると思うじゃないですか。だって私の魂と体があるんですよ?この世界に。

それがなんと!戻れていないんです!体がロボットのままなんです!


多分このロボットに魂を移す時にお願いした呪文が強力なのか・・・。

出れないんですよ、コレから。

出ようと試みましたが、なんかこう・・・箱の中に閉じ込められて、何しようが

出る事が出来ない「牢獄のような箱」な感じと言うか、気がしてきたんです。


もしかしたらその呪文を消してくれれば出れると思うんですよ、多分。

私の体に戻れると思うんですよ、多分。もちろんお願いしましたよ?

呪文かけた人に・・・。そしたらですね、

「今は祖母に魔力吸われて無理~」とか「分離する魔法しらな~い」とか

ぬかすんですよ。まぁ魔力吸われたのは本当なんですが、分離の魔法は絶対に

知ってるはずなんです!だってステータスで見たし!


これは、あくまでもワタクシの憶測ですが、魂をコレ、そう「ユキちゃん」から

出すとですよ?コレ、そう「ユキちゃん」が動かなくなるじゃないですか。


そんな事、みすみすあの女が、おっと、美香さんがするわけないじゃ

ないですか。だって美香さんはまごうことなきアニメ好きでフィギュア好きで

研究書(ラノベ)好きのヲタクですよ?

手の内にある、動くフィギュア、それも美香さんが熱く語れる大好きなアニメの

超かっこいいロボットフィギュア。


これは絶対に分離魔法を唱えてくれないと思いました。こうなったら別の方法を

模索することにした次第であります。


まぁワタクシの事はこの辺で〆るとして、


さて、ワタクシと美香さん、そしてジェニエーベル様・・・じゃなかった勇樹様

でもなく(様付けないでって言われてた)勇樹君。の3人はベル様の魔法で

ワタクシの居た世界、そうエアストに「無事」に戻ることが出来ました。と、

言いたいところですが、ちょっとばかり問題が発生しまして・・・。


本来は私の体がある所に転移するはずが、何故かはわかりませんが・・・

馬車でも5日ほどかかる所にズレて転移したんです。

私の体がある街から待ち合わせのシンの森は馬車で半日ほどなので

美香さんの魔力回復を待っても十分だったんですが・・・。


4日後にシンの森の指定された場所で、とある方法で、確実に「そこ」に

ジェ・・・勇樹君の育ての親の亡骸を転移させる事になっているのに。


というか、そもそも帰って来たばかりで馬車もないので、どれだけの日数が

かかるのだろう。


などと、ひとりで呟いてしましたが。


さて、ここからシンの森まで・・・どうしたものか・・・。

勇樹君と美香さんも困っていることだろう、ワタクシがここから

シンの森までの、おおまかな距離を教えたのだから・・・。


そう思いながら二人に目を向けると、え!?はしゃいでる!?なんで!?

バカ?バカなの!?いや、ジェルエーベル様にバカなどと(美香にはいいが)。


「まじで持ってきたの!?私も持ってくればよかったなぁ!後悔!」

と、美香さん。

魔力をごっそり吸われたはずの美香さんがすでに元気になってる。


「もちろんガソリンも満タンで持ってきたよ、ふっふっふ」

勇樹君もなんかドヤ顔で言っている・・・。


そして恐ろしき一言を美香から聞いた。

「そのバイクにさ、精霊を宿して走らせられないかな、そしたら

 ガソリンいらないじゃん」




あぁ・・・俺の二の舞になる精霊よ・・・・すまぬ。ワタクシには

どうすることもできない・・・。ワタクシが言えるのは一言だけだ。



「がんばれよ」



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