第8話 ミネルヴァ

少し前の、とあるマンション



母に呼ばれたので部屋に行こうとすると

ものすごい爆発音?に似た音が聞こえた。


慌ててドアを開けると、母が床に倒れており手には

刀?のおもちゃ?を握りしめていた。(なんで!


そんなことはどうでもいい!俺は母の顔を覗き込むと

蒼白になっていた。


救急車!呼ばなきゃ!

俺はスマホで救急車を呼ぼうとしたが

なんで圏外!くそっ、隣に住む人に!


母の部屋から出て、リビングのドアを開け・・・開かない!

鍵なんてついてないのに!


ガチャガチャやってると後ろから体に何か強い衝撃が襲った。


あ、あれ・・・。なぜか変な感じで冷静になった。

母の方を振り向くと母が起き上がろうとしている。が、

力が入らないのか背中をベッドにつけて、なんとか座っている。


母を抱えベッドに寝かせた。

俺は手を握りスマホが圏外な事と部屋から出れない事を伝えた。

母は少し微笑みながら


「圏外にしたのもドアを開かないようにしたのも私よ、魔法でね」


こんな時まで母は・・・。俺はそんな冗談を言ってる場合じゃないと

母に話そうとすると


「いいから黙って聞きなさい・・」


そして手を私に向け聞いたことのない単語を唱えた。

「体を動かしてみて?」


俺は何を馬鹿な、と体を動かそうとするが・・・動かない。

な、なんで・・・。


「ほんの数分だけど相手の行動を止める魔法よ。そして

 さっきの、慌ててるあなたに向けて撃ったのは・・・

 まぁ冷静になる魔法ね」


20秒ぐらいで体が動くようになった。


「解けるのが速いわね、わたしがこんなだからかな・・・。それとも

 あなたが魔法に対して強いのかしら?」


微笑むところじゃないだろうに・・・。


「いい?今からはなすことは全部真実です」

そういうとまた手を俺に向け何かの単語・・・魔法を唱えた。


「冷静に私の話を聞いてね?」


俺はただ座って聞いている。

聴くのが当たり前のような、母がこのような状態なのに・・・。


そして母は淡々と、そう淡々と話し始めた。


要約すると


母と俺は本当の親子ではない事

二人とも異世界からの転移者である事

何故に転移して来たかは母の日誌、記録を読むようにとの事

必ず元の世界に帰らなければならない事

それは俺の出生からの運命である事


そして母にさせられていたゲーム「紫の国」は

元の世界「エアスト」を基に作られており、そこで

生活や戦闘に困らないように修練用として

母が魔法で作った物である事


使える武器が刀と弓なのは俺が弓の加護を受けていて

他の武器は持てるが「グーパンチ」の方が

相手に強いダメージが出るほどに使いこなせないとの事

刀は元の世界には存在しない武器である事


他にもいろいろ聞いた。

母は一呼吸置くと


「ジェニエーベル様、こちらの世界に来てから、不遜だけど

 本当に楽しかった。あちらから来る時には、すごく憎しみや

 悲しみの感情が私の心に渦巻いていたけど。ジェニエーベル様と

 過ごすうちに本当の、本当の私の子供の様な気がして・・本当に楽しくて」


ジェニエーベル・・・。ゲームで固定だった名前じゃないか・・・。


「まずこれを渡します。私が使っていたアイテムボックス。もう

 ジェニエーベル様に使い主を変えてあります。使い方は左手で軽く握り

 頭の中で、イメージすると使えます。とりあえず、そこの私の日記を

 右手で持って中に入れることをイメージして?」


俺は言われるままにやると・・・あれ、出来ちゃった。右手から日記が消え

中に入った。今度はそれをなんとなく取り出すイメージをすると、右手に

戻ってきた。けど・・・また入れた。3冊の日記を全部いれた。


「とりあえずある程度の大きさ、そうね、冷蔵庫くらい?ジェニエーベル様の

バイクもこの間、入れてみたら入ったのでそれくらいです」


・・・・(俺もあとで入れてみよう)。

母がこんな時にバカなことを考えるな!!俺!


「弓はあちらの世界で準備をしてくださいませ。刀は何年か前から

 私が少しづつ鍛えております。金槌じゃなく魔法でですよ?ふふ・・」


母はこんな時まで変わらないな・・・。


「この世界ではちょっといけない事をして刀を手に入れました。

 現代では結構な刀鍛冶士に作ってもらったのよ?」

(・・・いけない事をしないと手に入れられないだろうな、うん。)


「それからずっと今まで可能な限り私の魔力で鍛えましたが、思うような感じで

仕上げていくことが出来なくなったの。そう、魔力が足らなくて・・・。」

「どうするべきか悩んでいた所、加納さんから連絡があって

 準備が整いつつあると」


加納のおばさんか・・・。まさか、加納のおばさんも異世界からの転移者か。

まぁそうだろうな、行動も言動も不思議系だったし。


「だから決めたの。体力を魔力に変換して鍛えると。

 そして今、そう、たった今出来たの。」


そういうと俺に刀を渡した。


「刀の名前なんてどうでもよかったしジェニエーベル様が決めてもよかった

 けど・・私が・・・この刀の名前を勝手に・・・決めちゃった・・・

 えっ・・へ・・へ。この刀の名前はね・・」



霧島(キリシマ) ミネルヴァ打チ直シ



そうか、母の本当の名前は「ミネルヴァ」だったんだね。















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る