第7話 ふたりで作る魔方陣は・・・

「美香、異世界へ行きたいだろう?」

その初老の女性は微笑みながら美香に語り掛ける。


いきなりか!とツッコミたい。


美香はと言うと、それはもう目がキラキラしている。

これはもう二つ返事ってことがわかる。


「紫の国に行くってことでいいのよね?」

美香は怖いくらい真面目な顔で答えた。


「あちらも、もうそろそろ準備が整うらしい。こちらはもうすでに

 ほぼ準備出来てるけどね」と初老の女性は言う。


あちらとは・・・。


「そういえばユキちゃん、でいいのよね?あなたの名前」

そう話しかけられると私は自己紹介をした。


私は青の国で魔導士と学者をしているコルン・ブラントと申します。

転移の呪文で失敗したのか・・・魂のみこの世界に来てしまったようで。

そして美香さんと出会いました。

話を続けようとするとその初老の女性は


「青の国のブラント家・・・。ヤーガテーの小僧は生きてるのかい?」


私の父の名前を知っている!?こ、小僧?お淑やかに見えて結構な強めの

言い方・・・。続けてその初老の女性は


「私の名前は、加納 唯。あなたの大陸ではベル・ジュラックと

 呼ばれていたわ」


うをおおおおお!有名人!超有名人!あとで握手してもらおう!

・・・というか何故ここに。


「ちょいと魔方陣を改造してね、それでね、暴走しちゃってね、

 預かっていたひ孫と一緒にこっちの世界に来ちゃったのよ、ほほほほほ

 今頃どうしてるかしらと、子供や孫の事を考えるとアレだけどね。」


家族がいたのか、ベル様は。独身と書物で読んだぞ・・・。


「美香、私の言うことをよくお聞きなさい。」そういうと真剣な顔つきで

話を始めた。


「紫の国」と言うゲームは修練用に作られた物である事。

「紫の国」と言うゲームには相当量の魔力が使われている事

他にも「紫の国」を使って修練をしている者が居る事。

そのゲームを作った者はある人物と一緒にこの世界に転移してきた事。

その者の素性を聞いた時に力になるべきだと思った事

もちろん修練している者はその転移者である事


美香の才能はすごいらしくベル様を超える存在になるらしい・・・。まじか。


その転移して来た者と相談し、計画し、どのようにして手助けをするか

話し合い、美香をその者の力になれるよう育てる事


問題は帰還方法であった事

帰還するにはあちらの世界と強く結びついていることが重要らしく

ただ念じるだけでは駄目である事

なので強く結びついている物?者?を探すことに時間を費やした事


・・・。あーーー。俺あるわwあっちに体が(多分)。

だから私が来た事で準備が整ったのか。

俺は人柱にされるのか・・・。

と考えていたら


「ユキちゃんもあっちに帰ることになるから安心して」

と言ってくれた。ホッとした。


「じゃああみんなで異世界へゴーね!」

美香は嬉しそうにはしゃいでいた。


ベル様は少し寂しそうに笑っていた。


「美香、残念ながらあちらへ行くのは3人。あなたとユキちゃんと

 もう一人ジェニエーベルという男の子」


「私とそのジェニエーベル様と一緒に来た者はこちらでやらなければ

 ならない事があるので行けないの」


今、サラッと「様」って付けたよな・・・。


「もうそろそろあちらの準備も整うのでこちらも早く準備をしましょう。

 美香も魔方陣作るの手伝って。今から使う魔方陣は固定式になるので

一緒に作りましょう」

「ジェニエーベル様がここに来たら異世界へゴーよ」


ベル様は美香と魔方陣を作り始めた。あぁだ、こうだ言いながら。

固定式とは作成に結構時間がかかるもので

確かに一人で作るには時間が相当かかるものだ。

でもふたりで作るには同等の能力、魔力をもつ者でなければ失敗する。

本当に美香はベル様クラスなのだな・・・。


なんだこの魔方陣は!魔力反応がとてつもないぞ!暴発したらこの辺り

全部吹き飛ぶぞ!よく平然と作ってるな!おかしいぞあんたたち!


ふとベル様を見ると・・・・。そうか・・・。

私は気づいた。3人を転移させるとなると超極大クラスの魔方陣を

使うはずで、発動に相当量の魔力を消費するはずだ。多分、私のような

レベルでは無理であろう。どれほど使うのだろうか・・・。想像がつかない。

ベル様には出来るというのか。美香と二人で魔方陣を作成することで

魔力の消費を抑えようとしているのか・・・。


・・・いや、違うな。これはまるで最後のひと時を一緒に過ごしているような。

楽しげなのだがなにか寂しげで・・。

!!もしかしたら生命力を魔力に変換するのか!命の危険すらあるぞ!

そこまでして転移させようとするジェニエーベルとは何者だ。

いや、まて。なにかの書物でその名前を見たような気がする。


思い出せない。何の書物だった!思いだせ!人物の伝記物?いや違う!

何かの歴史!そうだ歴史物だ!どんな記述だった!くそ!思い出せない!



どれくらいの時間が過ぎたのだろうか。ベル様と美香は楽しそうに笑ってる。

ほぼ完成しているのか・・・。


「じゃあジェニエーベル様が来るまでお茶でもしましょう。いい茶葉と

 お菓子が手に入ったのよ」


美香はうなずくと

「ねぇねぇ、そのジェニ?なんとかって人ってどんな人?」

とベル様に話しかける。


「そうね、お菓子食べながら話しましょう」

とベル様は言うと別室へと美香と入っていった。


ちょ!待って!私もおおお、供をさせてくださいーーーーー!

危ない。一人取り残されるところだった。




ーーーーそして話は同日同刻のとあるマンションへ移る。
















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