第4話 「紫の国」というゲーム

さすがに三日三晩話していると疲れたのか美香は深い眠りについている。


私は体がない分全然眠くない・・・。まぁ体はあるっちゃああるが・・。

ユキモリはまずいかもってことで「ユキちゃん」と呼ばれることとなった。


いや、普通に名前で呼んでもらってもいいんだが。


美香は眠りにつく前に感想を聞かせてくれと

「紫の国」を起動させていた。


ある程度の操作は教えてもらったので早速扱ってみた。

やっぱいいな!体があるってことは。まぁ少し小さいがよしとしよう。


「紫の国」というパソコンの中の仮想空間


本当にそうなのか。あまりにも私が居た世界と類似性が高い。


まずは大陸の名前からして同じだ。

画面には大陸を上から見下ろした感じの地図がある。


全く同じではないか・・・。

青の国、黄の国、赤の国。・・・そして紫の国。


紫の国は約15年ほど前に滅んでいる。今は青の国の一部だ。

しかしこの地図にはある。ここが違う。と言うべきか。


いや、違うというよりも15年前の地図なのか。

これを作ったものが15年前にエアストからこちら側に

来たという仮定が出来る。・・転移できたのか?


すべての街の名前も同じだ・・・。

せっかくなので紫の国の城に矢印をあわせボタンを押した。


なんと城の中まで再現されている!

まて、1階はわかる。民衆に解放されているからな・・・。

私も子供の頃に父に連れられて行ったことがある。

なんと噴水の位置まで同じではないか!それに・・・

これは2階、そして3階、その上の階までも再現されている!


2階と3階はある程度の職、国政に携わるものしか入れないはずだ。

ということはこれを作ったのは紫の国の要人か何かと思われるな。


まぁでも、この部屋の配置で合っているとは私もわからないので・・・。

まて、私は幾度か青の国の城に行ったこともある。

こう見えて一時期(2週間)皇太子の家庭教師をしたこともある。


わたしは青の国の城に矢印を合わせ3階の地図を開いた。

・・・・同じだ。


青の国の要人の可能性も出てきた。

折角なので赤の国の城に矢印を合わせた。ん?地図が開かない。

・・・仮想空間と言うならば勝手に作ってもいいものなのに。

そうしないのはこれを作った者が本当の物を

再現しようとしているのではないか・・・。


大陸の町の配置から名前、城の位置、そして内部。

ここまで同じだと考えられるのは、美香にこの大陸の事を

教えようとしているのではないか?・・・何のために?


考えながら画面を見ていると右上に「キャラクターステータス」

という文字があることに気づいた。


ステータス・・・。ふむ美香の資質のようなものだな。

ちょ、ちょっと見てみようかな。


ん?名前は「美香」ではないのか。まぁこの仮想空間では

勇者にもなれるってことだから名前も変えられるんだろうな。


名前は・・・


そこに記載されている名前を見て私は驚いた。


「ベル・ジュラック」


エアストの魔導士や学者、いや民衆すら知っている名前。

稀代の精霊使いの名前だ。書物にも幾度となく出るほどだ。

何十年か前に突然行方が分からなくなったとされている。


偶然なのか・・・。美香が知っていた?いや知るはずがない。

私にこのゲームを調べさせるくらいだからな。


昨日の夜の話ではこのゲームは祖母が準備して「やらされている」と言ってたな。

ではこれを作ったのは祖母?と親しいもの?


その人物はエアスト大陸を知っている。

但し、15年前までの・・・。


ベル・ジュラック様が作った?それはないな・・。

何故ならばエアスト大陸にてベル様が居なくなったのは

まだ他にも国があった頃だ。


ベル様の知恵が使われているならば、他の国もこの地図に

載っているはずだ。


美香が眠りから覚めたら色々と聞いてみよう。


というか美香のステータスすげえな・・・・。

それに術の名前までエアストで使われている物と同じか。


むっちゃ高位の術式も書いてある・・・。

美香使えるのか?これ・・・。私の知る限り書物でしか

見たことないぞ。今使える者なんているのか・・・。


こんなん使えるのはベル様レベルだぞ・・・。

うん。これも美香に聞いてみよう。




同日同刻 とあるマンション


俺は「紫の国」をやりながら呟く。


母さんが準備してくれたゲーム「紫の国」。

魔法が使えればなぁ。回復魔法すら存在しないもんな。

このゲーム。まぁでもスキルの組み合わせとかで

「ヤラレル前にヤル」戦法が磨かれて、あんまり回復薬すら

必要なくなっちゃったな。


しかし「刀」と「弓」しか使えないのも、どうかと思うが。






















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る