第28話

 そこは運搬用の大型車両が所狭しと配置された。油臭いところだった。

 奥の兵器運搬所まで対SFTSの警備ロボットが、万が一侵入された場合に備えてあるのだ。


「確かにここだ! 頼むぞおひるねこ……うん?!」


 だが、おひるねこは拗ねてしまって、そっぽを向いていた。


「……す、すまん! おひるねこ。お前の協力がどうしても今は必要なんだ。後で、後でな……ごほうびをやるから」

「にゃー……」

「ほんと、すまなかった!」

「にゃ」


 リーエは困った。

 ここにTUが潜んでいるのだ。

 TUは今まで全て擬態をしていた。

 だから、人間の姿形をそっくり奪っていたことになる。

 姿形を奪われたものは、殺されたかTUたちから遠く離れた場所にいるのだろう。


 おひるねこは大型エレベーターからの落下の件で、かなり怖い思いをしたのか、すこぶる機嫌が悪かった。油臭さもあってか、殊更不機嫌そうだ。


「ええーい! 仕方がない! これならばどうだ!!」


 リーエはソードエネルギーの電流を止めて腰のホルスターに収めると、非常食の缶詰をおひるねこの目の前で振った。


「にゃ?」


 封は簡易開閉タイプなので、急いで開けると結果おひるねこは大喜びとなった。



「にゃー」

「ふう……。なんとかなったな。後はおひるねこが食べ終わるのを待つだけか……」


 リーエはしゃがみこんで、おひるねこに開封された缶詰を差し出した。だが、与えた開封された缶詰を前に、おひるねこは突然に総毛だち警戒した鳴き声を発した


「シャー!」

「な、なんだ! この胸騒ぎ……いや、嫌な感覚は?!」

 リーエは冷や汗をかいて立ち上がると、二本のソードエネルギーを抜いた。

 

 今は、辺りは暗かった。

 僅か一メートル先も見えないほどだ。

 リーエは二本のソードエネルギーを一振りした。ソードエネルギーが唸りだし、放射型電流が辺りを照らした。


「なに?!」

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