第13話

 屋上へのドアが見えた。

 緑色のSFTSの血液が大量に流れる階段から、外へ出るとSHが腕組をして待っていた。


「嘘! ほんと、人間のようね……人語は話せるのかしら?」

「BBBBBBBBU」


 まったくわからない言葉をSHが言った。

 クリスは冷や汗を掻いた。

 何故なら、人語のような言葉を話せるということは、考えることができるということだ。


「冥王星の「カロン」は、ほんとにやっかいね!」

 

 クリスはしゃがんで横に右膝に体の体重を預け、そのまま頭から地面に向かって回転をした。元の態勢に戻ると、SHにはいつの間にか幾つもの弾痕が付いていた。

 

 それは、目にも止まらない早打ちだった。

 戦場では、大型コルトもいとも簡単に扱うプロフェッショナルだった。

 クリスの胸に光る勲章はそれらを物語っていた。


―――――


「相変わらず美味しいわねー。ねえ、リーエって、どこでこんな美味しい鍋料理を習ったの?」

「我流よ。昔の頃、長期戦になった戦場にスーパーがあって、そこで覚えたの。それで、前線と食事当番をやっていたわ」

 テーブルの上の鍋料理に満足したクリスの声に、エプロン姿のリーエはニッと笑ってやった。


 ここはリーエの家。

 エデルとジェリーもいる。

 リーエを除いて、しばらくの沈黙の後でみんな口を開けようとしたが……。

 結局、何も言わなかった。


 今日もリーエの家には暖かい鍋料理の湯気が昇っていた。

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