第1話

私は今、普通の人間だ。

普通に朝起きて、身支度を済ませ、学校に行く。

週末のデートに向けてバイトに行く。

終わったら彼のいる家に帰る。

みんなと同じ、人間になれてる。

これは彼のおかげだ。彼と出会えたおかげで、私は普通になれた。


彼の名前は、お餅君。

お餅君は私のことを、お花ちゃんと呼んでいる。

お互いあだ名だ。

お餅のように白くて、いい感じに丸い顔。

でも、ふくよかな体型なわけでもない。むしろスラッとしてる。目は大きくて、綺麗。ふっくらとした唇はとても柔らかい。

そんなお餅君の私への第一印象が"花のように儚い"だそう。だから、お花ちゃん。

結構ザックリした理由だが、気に入っている。

こんな惚気話が出来るほどに、私は普通の人間だ。


出会ったのは3年ほど前。夏頃のことだった。

必死に普通を演じて出来た友達に誘われ、食事会に行った時にお餅君と出会った。

一目見ただけで、それだけで、私は普通になれた。気がした。

お餅君も私に好意を寄せてくれていたらしく、お餅君の告白で、私たちは付き合った。

普通の私が生まれた。


さっきから、普通、って何?そう思うだろう。

私にも分からない。

だって、みんなの普通は、私にとって普通じゃないし、私の普通は、みんなにとって狂ってる。


気になる?私のこと。

まだお餅君ですら知らない、私のこと。


私は、人殺しだ。

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