(5)
「お兄ちゃんと、付き合うことになったの」
後日、彼女はどこか申し訳なさそうな様子で、私にそう告げた。
「よかったな。あんな屈強な彼氏ができたら、誰も言い寄ってこなくなるんじゃない?」
「そうだね……」
彼女は浮かない表情で、曖昧に頷いた。その様子に、苛立ちと愛おしさを感じた。
「あー! これでもう愚痴聞かなくて済むと思うと、清々するよ!」
冗談めかして言うと、漸く彼女の顔に色が戻った。
「もう! どうして匠はそんな言い方しかできないの?」
そして、屈託のない笑顔で、私の髪をぐしゃぐしゃと撫で回した。
私の腕は、彼女を守るには細すぎる。
だから、これで良かった。
なっちゃん、なっちゃん、大好きだったよ。
幸せになってね。栗色の瞳を見つめながら、心の底からそう願った。
細い腕 青のキカ @kika_aono
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます