第4話 鮭のちゃんちゃん焼き

 スーパーへ買い物に行ったら久しぶりに鮭が安く売っていた。魚はどうしてもお肉よりも高いため一人暮らしをしていると食卓に並ぶ機会が自然と減ってくる。

 しかし身体のことを考えるとやはり魚もたまには食べておきたい。そう思いスーパーのカゴに鮭をいれる。今日は鮭を使って何かを作ることにしよう。


 冷たい風から逃げるように家の扉をすぐさま閉める。玄関で靴を脱いだら手を洗い冷蔵庫の中に買ってきたものを入れていく。さて、鮭といえば塩焼きだけれど今日はちょっと気分ではない。塩焼きは美味しいけれどグリルの中を掃除するのがとても面倒。

 後々のことを考えるとフライパンなどで調理したい。あとはなんだか野菜がいっぱい取れてご飯が進むものが食べたいな、なんて考えてながら片づけをしているとこの間料理番組で見た鮭のちゃんちゃん焼きを思い出した。そうだ、今日はそれを作って見よう。


 まずは副菜のかぼちゃの煮物を作ることに。かぼちゃの橙色はなんだか温かみがあるよな、なんて考えながらかぼちゃの種を取った後1口大に切って洗う。小さめの鍋に水と先ほど切ったかぼちゃを入れて火にかける。水が沸騰したら醤油とみりん、酒を入れて再び沸騰するのを待つ。

 さて、いつもならここに豚ひき肉をいれるところだけれど今日はひき肉がないため代用品としてベーコンを入れることに。ベーコンは包丁で細かく切り沸騰した鍋に入れて後は煮るだけ。15分ほど煮たら最後は粗熱で味をしみ込ませよう。


 メインのちゃんちゃん焼きは野菜をたくさん入れるフライパン料理だ。入れる野菜は結構なんでもいいらしいので、冷蔵庫に入っている野菜をてきとうに入れることに。キャベツは少し大きめのざく切り、玉ねぎはくし切りに。しめじは根元だけとってあとは手でほぐす。色付けに少しだけ人参を細切りにして野菜の準備は完了。

 これで緑、白、赤、茶となかなか彩りよくなるのではないのだろうか。

 フライパンを弱火にかけてバターを溶かす。フライパン全体に広がったことを確認したら鮭を置いて焼いていく。バターと鮭の焼けるふんわりとした匂いが広がってくる。片面がしっかりと焼けたら裏返してもう片面も焼いたら野菜をすべてフライパンにいれて蓋をする。こうすることで野菜からでてくる水分により蒸し焼きにすることができるのだ。

 5分ほど焼いたら味噌、みりん、酒を全体にかけ混ぜてからもう一度蓋をする。更に5分ほど蒸し焼きにしたら蓋を開ける。味噌とみりん、バターの柔らかい甘さがただよってくる。これで鮭のちゃんちゃん焼きの出来上がり。


 冷凍庫から1人分のご飯を解凍してお茶碗に盛る。コップにお湯を注ぎほうじ茶のティーパックを入れる。冬の夜はほうじ茶がなんとなく飲みたくなる。緑茶でもいいんだけれど、昔実家で良く淹れられていたのがほうじ茶だったためかいつの間にか飲んでいる。

 お皿に盛った鮭のちゃんちゃん焼きとかぼちゃの煮物を机の上に置いて手を合わせる。


「いただきます」


 まずはほうじ茶を口にして身体のなかを温めていく。このほんのり香ばしい味がなんとも癖になるのだ。そしてかぼちゃの煮物を口にすると、かぼちゃ独特の甘さが口の中に広がる。ベーコンの塩加減もちょうどよくて美味しい。たまにかぼちゃを煮すぎて形を崩していまいがちだけれど、今日はうまくいって少しだけ嬉しい。

 ではメインの鮭のちゃんちゃん焼きを食べよう。最初は周りの野菜たちを箸でもちあげて食べる。あまじょっぱい味がなかなかに美味しい。

 これはご飯が進むな、なんて思いながら次は鮭に手をつける。ほろりと柔らかな身を口に入れるとバターの甘さと味噌のしょっぱさが絡み合いとても美味しい。思わずご飯を口に運んでしまう。気が付いたら周りの野菜といっしょにぱくぱくと口に運び、胃が付いたら全て平らげてしまった。


 美味しかった。鮭っていつも塩焼きとかソテーにしていたけれど、今度からこれも作っていこう。新しいレシピが増えたことで今後は鮭を食べる機会が増えるかも、と思ったけれどそもそも鮭が高いんだよね……。

 もう少しお給料上がらないかな、なんて頭の中でぼやきながら食べ終わった食器を片付けていく。まあうまくやりくりするしかないと考えをまとめる。


 明日の朝はさっき作ったかぼちゃの煮物を食べよう。そう考えながら私はシンクを片付けてキッチンの電気を消すのであった。

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食べ物に関するお話倉庫 宮川雨 @sumire12064

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