第24話 VOODOO KINGDOM

「……おい、もういいぞ」


「アンデッドども、みんな正門に行ったかと思たら結構残ってまんねー」


「どうやら定期的に巡回してるみたいですね」


「索敵に時間が取られますね、団長」


「んー、しゃーない。ほな皆頼むわ」

「ワイの荷物持ちだけ残ってや」


「は!!!」


「凄い…」

「もう見えなくなりましたよ団長」


「司祭のお付きやからね」

「あれくらいはして貰わんと」

「これで粗方の敵は排除してくれるやろ」

「本丸向かうでー」


「団長殿、彼らだけでやれるのでは?」


「……まぁそう言うな」

「……行くぞ」


「はい……」




「お、何か開けた所出たでー」


「臭ぇな。待ち伏せ、だな」


「で、ゴザルな」



――かつては豊かな水を湛えていたであろう噴水の広場。


初代建国王の頭は髑髏どくろげ替えられ、その剣には童と覚しき体が幾重にも突き刺さっていた。


一行が辺りを警戒しながら弔いの為、その体に触れようとした時だった――



「きゃっきゃ! おじさんたちいらっしゃい!」

「きゃー! お客さんだよ! お客さんだよ!」

「パーティーのはじまりはじまり!」


下腹の辺りを抉られるような咆哮が、広場全体を揺るがす様に響き渡る。


「きゃっきゃ! おじさんたち逃げて!」

「きゃー! こわいね! こわいね!」

「アイツがくるよくるよ!」



「…皆避けろ!」



――枯れた噴水に飾られた建国王。


そのかつての威光を蹴散らす様にそれは顕れた。


捕食者の存在を否定するかの様に前方に配された、己が炎を体現するような深紅の瞳に縁取られた縦長の『それ』は、睨まれたものにこう告げる。


伏して死を待て。


重戦士の盾程もある鱗の下には、魔素が幾重にも循環する。およそ変温動物には似つかわしくない熱が感じ取れる。


三人の童が吹き飛ばされ尚ケタケタと続けた笑い声を止めたのは、炎竜がその神殿の柱を想わせる前脚で彼らを踏み締めた時であった――



「炎竜…!!」


「ぎゃー! やっべえよ! どうすんだアレ!!」




「はぁ、しゃーないなぁ」


純白のローブから幾重にも這い出る、先込め式の滑腔式歩兵銃。背後には槊杖さくじょうと火薬を構えた側近。


「一度言うてみたかったてん」

「ここはワイに任せて先に行けーやで!」


「……クレメンスさん」

「……どうかご無事で!」


「エンディングまでには駆けつけるよって美味しい所は残しておいてな!」


「司祭様、来ます」


「ほいほい」


「この『慈悲深きクレメンス』!」

「遠い夜空にこだまする、竜の叫びを耳にさしたるわ!」

「あんじょう送ったるから大人しくしとくんやで!」



――咆哮と銃声のcarnivalを背後に一同は烏瓜殿を目指す。


目の前には王宮を飾り立てる尖塔が、巨人の槍衾の如く眼前に迫っていた――




次回  『バカみたいに愛してた』

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