第23話 鴉啼いてわたしも一人

「各部隊、配置完了致しました!」


「そうか」


「団長殿! あれを!」



『死のメガロポリス』の第四の口が開いた。


肉はとうに腐れ落ち、微かにこびり付くこけに似た何かを覗かせる錆びた鎧の軍勢。

かつての王国の誉れ高き剣と盾であった。


進軍する彼らの眼窩は仄暗く落ち込み、時告鳥ときつげどりに呼ばれた太陽の光を拒むかの様に、より暗く影を落としていた。



「報告! 敵先陣、ファランクス陣形にて正門より出陣!」



「こちらも迎え撃つぞ! 投石機用意!」


「ロベルトよこの戦の成否、貴殿に掛かっておるぞ」


「放てぇ!!!」





「始まったようやね」


「…はい」


「ええか」

「もう一度おさらいや」


『不死人と眷属』

アンデッド――遺体から容易に作れるが防腐処理をしなければ容易く腐り、戦闘能力も低い。単純な命令しか出来ず自立行動も取れない。


レヴァナント――防腐処理が施され自我の残るアンデッドの上位個体。自立行動は勿論、精巧に作られたものは生者と見紛う程である。


ノーライフキング――不死人の頂点。他者の魂を捕らえアンデッドに落とし込む闇の使者。


「今回は間違いなくノーライフキングの仕業や」

「引き籠もっとった年月考えたら恐らく相当のレヴァナントもおるはずやで」

「アンデッドどもは親玉の持っとる触媒押さえたら活動も停まるんやが、レヴァナントは自立行動出来る分厄介やな」

「ほんでワイらの役割は、騎士団丸ごと囮にして王都深くに潜入」

「からの敵さん本拠地の烏瓜殿におる親玉の撃破やで」


「ワイら教会組は後衛から狙撃。言うても大きな音はバレるから最後の手段や思てな」

「真ん中のエイダちゃんとジジはんは索敵と援護」

「ほんで前衛はロベルトはんとアプールはんとランマルはん」

「それと何でかおる元内務卿のヘルマンはん」


「ぬっはっは! 蟄居しておったらそこのアプール殿からこれが届いてな!」


「…それは…」


「亡き友に言われた気がしたのよ! この『鉄斧』で自らの責を取れとな! ぬっはっは!」


「うるせぇのが増えたぜ」


「ちょっと! 騎士団副団長で、内務卿だった方ですよ!」


「ぬっはっは! 構わん構わん! 今はただの老いぼれよ!」


「城内ではお静かに頼んまっせ?」


「ぬっはっは! 分かっておる! 馬鹿娘の尻を叩いてくれるわ!!」


「大丈夫かいな」


「ま、もう少し正門が騒がしくなったら出発や」

「気合い入れていくで!!」



次回 『VOODOO KINGDOM』

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