第22話 不死人のtopology
「……以上です」
報告を聞いている騎士団は次第に語気を弱め、最期には静寂が訪れた。
「
ある正騎士が口を開く。
「嘘を言っているのではあるまいな!」
「私は未だに四年前の一件の首謀者は貴様だと思っておるぞ!」
「不死人どもに肩入れして嘘を言っているに違いない!」
「そうだそうだ!」
白銀の柄が床に打ち据えられた。
静けさを取り戻した議場の空気を騎士団長が深く吸い込む。
「私の任命した者に不服があるなら申せ」
静寂に思えた議場を尚重い静寂が包む。
「大義であった」
「下がり命を待て」
――――――――――――――――――――――――――
「疲れましたね」
「でゴザルな」
「でオッサン」
「どうすんだ?」
「……」
議場を後にし、中庭に差し掛かった。
「オッスオッス! クレメンスさんやで!」
「偵察任務ご苦労さんやったなー」
「げ…」
「何かうるせぇのが来た」
「森ジジイ!アタイらは疲れてんだよ!」
「殺生な事言わんといてーやエイダちゃーん」
「……何かご用ですか?」
「せやせや!」
「ロベルトはん達が黙って偵察任務行ってもーて焦ったで!」
「ほんでな?」
樹人の話は地獄に降ろされた救いの糸の様にも奴隷を追い立てる鞭の様にも思えた。
「と、まぁワイなりの推測やねんけどな」
「この後議場での話次第やけど」
「勝機はある思うねん」
「オモロイ話やろ?」
「…はい…ですが」
「ん?」
「横槍ですまぬが話を継ぐでゴザル」
「拙者達の報告で、騎士団は彼我の戦力差に意気消沈でゴザル」
「このまま決戦に至るには少し決定打が足りぬでゴザル」
「ほーか? それならもう少し待つか」
「そろそろ決定打がやって来るで」
「??」
――――――――――――――――――――――――――
議場に向けて伝令の兵が一同には目もくれず走り抜ける。
直後議場より歓声。
「ほーら来おった」
「…何が…」
「議場行ってもええけど」
「ここは分かりやすく正門の方向かってみよか」
議場の歓声を背中に、一同はこれまでに無いほど浮き足立つ騎士団を感じながら正門に向かう。
「…あれは…!」
「団長殿!!」
「
「遅ればせながら我等鉄血騎士団、馳せ参じまして御座います!!」
乳飲み子の頃から見知った紋章が見渡す限りに広がっていた。
「……アプール」
「…これは一体…」
「団長殿を信じて奔走しておりました!」
「解散した鉄血騎士団はもとより、南の獣人氏族、同盟国の協商連合、遠方の冒険者、有志の義勇兵も参加しております!!」
「皆、炎竜討伐拍の名の元に集って下さいました!」
「旗印は楯に鉄条! 信条は『我が鉄血は不倒にして不屈』!!」
地平が震える程の
かつての仇敵『炎竜』のそれとは違う『希望と勇気の鬨』であった。
「ま、そういう事や」
「ワイら協会も少なからずお手伝いするさかい」
「頑と張るんやで」
「……」
「なんか言えよオッサン!」
「ちょっ!」
「感傷に浸る時間くらい……」
「……」
「……皆、聞いてくれ」
「四年前、俺は全てを失った」
「だが皆が俺の中の錆を落としてくれた」
「今一度恩に報いる機会をくれ!」
「今一度この鉄剣に誓いを捧げる!」
「我が鉄剣を! 我が鉄血を王国に捧げる!!」
「我が鉄血騎士団は不倒にして不屈!」
「大地を! 王国を! 烏瓜の園を!! 再び我等の元へ取り戻す!」
再び、いや一層の鬨の声が大地を揺らす。
「ついに舞踏会の始まりかしら」
「その様ですわ我が愛しの烏瓜の君」
「ふふふ。賑やかになりそうね」
「全ての準備は整って御座います我が愛しの烏瓜の君」
「ご苦労様」
「ふふふ。楽しい舞踏会になるといいわね」
次回 『
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