第18話 1,000,000 MONSTERS ATTACK
「ちょっ!」
「我々が行った所で何になるんです!?」
「そうだぜオッサン! むざむざ死にに行くようなもんだぜ!」
「……黙って付いて来い」
「……『小鬼』どもを挟んで教会の連中の正面には絶対立つなよ」
「待つでゴザルよ!」
「ええい南無三!」
小高い山を滑るように『小鬼』どもの側面に回り込む。
眼下には新たな獲物を見付けた『小鬼』どもの殺気だった謝肉祭の雄叫びが
刹那、響き渡る乾いた破裂音の洪水。
瞬く間に眼下を白煙と血飛沫のモノトーンに染め上げていく。
「銃声!?」
「しかもとんでもない数の鉄砲隊でゴザル!」
「……流れ弾に気を付けろ!」
「…側面に回り込むんだ!」
――近距離の仲間との会話も
「……頭を出すなよ!」
「ひぇ~長篠を思い出すでゴザル!」
――時間にすればどの位経ったのだろうか。
百を超える聴衆は、葬送曲のフェルマータを待たずして沈黙し、喝采を送る事無く辺獄へと旅立った――
「……残党狩りは任せろ!」
――霧散する敗残兵を四人の死神が刈り取っていく。
突如顕れた騒乱に
「無事に研げたみたいやね」
司祭と呼ばれた異形は、ゆっくりと人の姿をしたローブに身を埋める様に萎んでいった。
「……粗方片付いたな」
「こっちも動く者は見えぬでゴザルよー」
「もう…終わっちまった…のか」
「……その様です」
「お~い! ご苦労さんやで~」
「こっち来てサヤマー茶でも飲もうや~」
あれだけの戦闘にも関わらず未だ純白を保つローブの集団の一人が声を掛けてきた。
「……相変わらずですねクレメンスさん」
「お知り合いなんですか!?」
「……こちらが目当ての守り人様だ」
「オッスオッス! はじめましての人が多いから自己紹介するでー」
「世界樹教会で司祭やってるクレメンスや!」
「お! 気味悪いナリしてっけど話分かりそうだな! アタイはエイダってんだ!」
「貴様! 無礼であろう!!」
「ええよええよ」
「しかし司祭様!」
「ええ言うてるやん?」
「…ご無礼を…」
「それより、久しぶりに力使ったから早よお茶の用意してやー」
「御心のままに」
――顔の見えないローブの集団が手早く火を起こし始めた。
硝煙は晴れ、後に残るのは地獄絵図そのもの。
目を見開いたまま息絶えた『小鬼』の群れの脇で今まさに催されようとする茶会。
「しっかし、何だってこんな所に教会のアンタらがいるんだい?」
「失礼ですよ! 教会の皆様は我々冒険者の代わりに、有事の際の治安維持に務めてくださっているのです」
「戦時条項の4項の特例措置にあるでしょう?」
「だから文字読めねぇっての!」
「そういえばクレメンス様は我々にも気付いてゴザった様子」
「森は友だちみたいなもんやからね」
「なる程。しかしクレメンス殿、あの銃声は一体……」
「お供の方々に武装の気配は見られませんし、別備えの鉄砲隊も居られぬご様子……」
「そーだそーだ教会って言やぁ魔法だろ? あれもそうなのか?」
「あ、それはな」
――そう言うと樹人はローブの下から苔生した枝のような手を差し出す。
一本、二本…。三本…四本――
「!?」
「手が多いのでゴザルか…」
「げ! 気持ち悪い!」
「ちょっとエイダさん!」
「ええねんええねん」
「ワイら樹人は腕なんか自由自在に生やせんねん」
「真っ当に動く4本の主腕に33対の副腕……」
「これぞナハン・カーンの神さんからの貰いもんや!」
「アレ? 全然ウケとらんな!」
「ま、ええわ」
「兎に角。この腕での連続砲撃がワイの文字通り奥の手やねん」
「ふぇ~魔法じゃねぇのか~」
「魔法なんてやれ詠唱やら魔法陣やら触媒やら」
「他の樹人は使うみたいやけどやってられんわ!」
「……色々と規格外ですね」
「まるで一人長篠でゴザルな」
「ナガシノ?」
「……ほーん」
「
「なる程のぉ」
「それにそこのお姉ちゃんに猫ちゃんに」
「中々オモロイ巡り合わせやねぇ」
「……どう言う意味です?」
「んー? ええねんええねん独り言や」
「そんな事よりロベルトはん」
「折角やしご一緒してええか?」
「……ええ勿論です」
「お! サンガツやでー」
「ほな王都までよろしゅーな!」
次回 『キミを想う夜』
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