第2話

 ユウナと一緒に出かけた、家の公園の近くに来た。

 彼女は横長のベンチにゆったりと座って、人が歩いていたり、子供が遊んでいるのを眺めるのが好きだった。

 どこか出かけに行こうよ。と僕が誘うと、天気がいい日は公園のベンチ、天気が悪い日はサンダルにTシャツを着て傘をささずに手を繋いで散歩をした。

「傘をさして、濡れないように気をつけながら歩くのって、ストレスにならない?だったらいっそのこと、全身濡れてしまったほうがいいのよ」

 すれ違う人にじろじろと見られる僕達は、世界から独特な孤立の仕方をしていた。でも、ユウナさえいれば、僕は何もいらなかった。

 雨でしっとりと濡れた彼女の肌が僕の腕に触れると、ぴっとりくっつく。境目が最初からなかったように感じた。


 夕暮れを見ると、ユウナは空をうっとり眺めた。

「見て、綺麗なグラデーション」

 彼女が教えてくれるまで、夕暮れと夜の間の黄昏時がこんなに色に溢れ、美しいものだなんて僕は知らなかった。こんな身近なものを美しく感じさせてくれるだなんて、と僕は感動した。

 ユウナを通して見る世界は、色彩に溢れていた。

 

 すっぽりと夜の闇に覆われて、家に帰る。

 家の中の引き戸を全部開ける。ユウナはいない。冷蔵庫の中も、大切なものを入れる宝箱の中も、ユウナはいない。どこにもいない。

 警察に再度連絡をする。ユウナが見つかった様子もない。飯を食べる気にもならず、僕は布団に倒れ込む。天井にかすかについている模様に這わせるように、視線を泳がせた。

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