第214話 攻略できますね

「はい。そうなのですよね~。簡単なので海流をぐちゃぐちゃになるように岩礁をまわりに作るのは考えたのですが、結局時間稼ぎしかできないのですよ~」


 キングクラブの身を片手にふよふよしながら悩んでるシトリー。ふと思い付きましたので相談してみましょう。


「ねえシトリー。見えないようにできないの? この海の階層って凄く広いよね? 僕達はテラが方向を教えてくれたからたどりつけましたけど、この小さな島を見付けるのって凄く難しいと思うんだ。どうかな?」


「ふむ。良い考えじゃが、私なら端から端まで、それから天井までの壁を作って海を分けてしまうがな。そうすれば見る事もこちら側に来る事もできんと思うのじゃがどうじゃ?」


「あの、壁は良い考えではあるのですが、ダンジョンは絶対攻略できるようにしておかないと駄目なのですよ。だから透明はギリギリ良いとは思います」


「ねえ。壁を作って、海の底の方に穴を開けておけば良いんじゃないの? たぶんライなら上手く潜り抜けて反対側に出る事もできるわよ」


 んと、海の中ですよね、水でしたら生活魔法で水に避けてもらって、後は浮遊があれば行けますね。


「ですね、それなら僕は壁があっても抜けて来れますよ。でもやるなら凄く深い方が良いかもですね」


「ちょ、ちょっと、設定してきます! あっ、良ければ魔力を少し分けてくれませんか? 薄い壁ならギリギリ足りるとは思うのですが」


「ライ、今回は外から魔力を集めないと駄目だと思うけど、やれそう?」


「そうですね、ん~と、あっ、いけますね、シトリーに魔力を入れるの?」


「いえ、ダンジョンコアがあるので、こちらに来て下さい」


 ふよふよ飛びながら島の真ん中にあった階段から下に、すると、小さな部屋に水晶玉が浮かんでいます。


 そこにシトリーが飛んで行き、ちょこんと上に乗っかりました。


「ではお願いできますか、今、冒険者が百人程度入ってますから少し余裕がありますね、いきますよ!」


 ゴゴゴと地響きが鳴り、凄い魔力が動いています。僕はそこに上のダンジョン街の人達からも少しずつ、湖の中にいる魔物さん達からは気絶する手前まで魔力をもらい、あっ、王都もいけますね。


 その他、近くの町や村、森の魔物さん達からも魔力を集めますよ! ぐるぐるー! ほいっと!


「あらあら、これは凄いわね、どれだけ集めてきたのよ。シトリー、しっかり受け止めなさいよ」


「くくくっ。ほんにライは凄いのう。どれ、私も少しばかり足してやるかの、ほ~れ!」


「え? え? な、なにこの魔力!? でもこれなら! ぬぬぬぬぬぬー!」


 ゴゴゴガガガとさらに地響きが大きくなり、僕とアミーが送り込んでいる魔力がどんどん使われていってる感じがします。


 ですが、負けませんよ! さらに範囲を広げてやっちゃいましょう!


「ぐるぐるー! ほいっと!」


「くふふふ。この大陸全部まで広げているじゃない。流石ライね、ここまで広げられるんならもう少しかも知れないわ」


 テラがなにか言ってますけど集中しなきゃ、魔力が抜けちゃいます。もったいないですからね、少しでも多くシトリーのダンジョンのために集めてあげますからね!


「よし、まとまりましたよ! シトリーいっくよー! ぐるぐる~、ほいっと!」


 シトリーは返事する事もできないほど集中しているようです。僕は地響きが続く中、魔力をどんどん水晶玉に放り込んでいき、もうすぐ集めたものを全部使いきるってところで、地響きは止み、シトリーが笑顔になり――!


 薄暗く小さくて、何も無かった水晶玉の部屋が明るくなり、少し広くなりました。


「終わったー! たぶん凄くなったはずです! あんな魔力もう一つ小さなダンジョンができちゃうくらいありましたよ! ライとアミーって凄いね!」


 シトリーは水晶玉の上でぴょんぴょん跳ねて、凄く興奮しているようです。


「ぬふふふ。頑張りましたからね♪」


「くくくっ。ほぼライが集めた魔力じゃ。私の魔力なんぞ微々たるものじゃ」


「じゃあ表でどうなったか見てみましょう」


 階段を上り、外に出るとそこには数百メートル先に断崖絶壁が。左右に首をふって目に見える限り端から端まで。上にも空に届きそうというか天井にまで届いているはずです。それはもう誰が見ても『凄い!』って言いそうな見事な壁がありました。


「おお! 凄いです! 完璧ですよ!」


「はい。それに水深も五百メートルありまして、一番底に人が、っていうよりライ、テラ、アミーが並んで通れるほどの穴を開けてあります! これで壁からこっちには中々来る事はできませんよ!」


「っていうよりシトリー、今ここ階層が変わってない?」


「はい。同じような海の階層、壁無しが百階層続きます! ここと同じ暖かい海もあれば、暑い海、寒い海も。それになんと、その階層によっても採れる物を変えてあります! もちろん島には美味しそうな果物とか生えてますから攻略しながら楽しめますよ!」


 えっと、じゃあ······。


「百二十一階層って事?」


 僕はダンジョンカードを出して、階層の数字を見て······あはは。水晶玉の階層を含めて百二十二階層で、完全攻略と出ていました······。

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