第213話 ダンジョンマスターの妖精
「ダ、ダンジョンマスターをしている者です。ど、どうして、どうやってこのダンジョンに入れたのですか!? それにこの海もどうやって渡って来れたのですか!?」
ダンジョンマスター! 異世界来たらやってみたい職業ランキングに載っちゃうあのダンジョンマスターさんなのですか!
「あら。ライは興奮しちゃってるわね。まあ良いわ。どうやってって最初は転移で一階層に続く階段に。二回目はそこまでの階段と通路を作って入ってきたのよ」
「あわわわ! そ、それでは沢山の方が押し寄せて来ちゃいませんか!? ど、どうしましょう! あ、でも人が入ってきたのでしたら魔力が増えてるかも! 階層増やすか、強い魔物さん達に頑張ってもらうか!」
あっ、驚きと、憧れのダンジョンマスターさんに会えて興奮しちゃったみたいです。
僕達の前に出てきた羽が生えていて、ふよふよ飛んでるというか浮かんでる、小さな妖精さんです。
小さい時のテラと変わらないくらいの大きさですが金髪で青い目の、裸ん坊さんです。
女の子ですし、裸ん坊は駄目なので······。
「あっ、確かテラ用に作る時の試作品が······ありました! 妖精さんですから羽が出ないと······透明で、触れませんね。なら、このままで良いですし、はい。裸ん坊はいけませんから、服着て下さいね」
妖精さんの羽をそっと触ろうとしたのですが、指がすり抜けちゃいました。
「へ? 服? 私にくれるのですか?」
「あら、よく残っていたわね、ゴブリン村長柄はいらないって言ったのに」
「あはは。うん。今はもう着られる方もいないですからどうぞ」
「あ、ありがとう。えっと、うんしょ、ほいしょ、どっこいしょ、こんな感じかな?」
「うん。寸法も良いみたいですね」
ワンピースを頭から被り、もぞもぞしながら袖にてを押して着れたようです。
「ゴブリン村長じゃないのは無かったの? オーク村長も駄目よ」
うっ、出そうとしていました······後は無いので仕方ありませんよね。あっ、そうです。
「こんにちは。ライと言います。よろしくお願いします」
「そうね。テラよ。そして私の騎獣ムルムル!」
『よろしくね』
「しからば私はアミーじゃ、よろしくな」
「え、えと、私はシトリーよろしくお願いします」
とペコリと頭を下げました。
「ねえ、シトリーって妖精さんですよね♪ それでダンジョンマスターなんでしょ♪ どんな風にダンジョン運営しているのですか? 僕は放ったらかしにしちゃってますので、どうなのかなって気になりまして」
「えと、最初は出入口をどこにするか決めて、一階層から順に自分の好きなようにできますよ? えと、分かりました?」
「ほうほう。それは美味しい物が採れるようにしたり、良い物が採れるようにしたりとできるって事ですよね?」
「ライ、シトリーは栗が食べたいんじゃないの? あなたと喋りながらチラチラと栗を見ているわよ」
「アミー、シトリーに栗を一つあげても良い?」
「もちろんじゃ。早う言えば良かろう。遠慮するな、大きさを考えるとこれが良さげじゃな」
アミーはフライパンの中から一番大きな栗を摘み取り、皮を丁寧に剥いてシトリーに手渡しました。
「い、良いの? 食べちゃうよ?」
「うん。甘くて美味しいよ。一階層で採れた栗だからシトリーのお陰だね」
両手で栗を抱えながら、僕とアミー、そしてテラの顔を見てから栗にかぶりつきました。
「はぐっ。ふぐふぐっ! あっまーい! 焼くとこんなに美味しいんだ! はぐっ――」
「くふふふ。さてさてキングクラブはどうかなぁ~」
その後一時間くらいかけて焼いたキングクラブは―。
「ふおー! 美味しいですよ! シトリースゴいよ、シトリーのダンジョン美味しいの物だらけだよ!」
「そうね、こんなに美味しいなんて、驚きだわ。焼いただけよ? シトリーあなた、どんな設定にしてるのよ」
「ふぐふぐ。んくん! 美味いのじゃ! シトリーよ、見事じゃ!」
僕達は、キングクラブが焼けるまでダンジョンで採れた食材を少しずつ焼いたり煮たり、そのまま食べたりして時間を潰していたのですが、ヤシの実以外はどれも完璧と言いたいくらい美味しい物ばかりで、大絶賛。
「えへへ。そ、そうかな。私は火が使えないから、中々美味しく食べれなくて、それでも美味しく食べれそうな物を選んでたの。それに集中して選んでたんだけど、ヤシの実とキングクラブは失敗だと思ってた」
少し寂しそうな顔をして、今度は笑顔に変わり。
「だって、ヤシの実もキングクラブも私には皮を剥く事も、焼く事もできなくて食べれなかったもの。でも皮を剥いてくれて、ヤシの実も、これは私もあまり進んで飲みたいとは思えないから植え替えるけど、キングクラブは大正解よ!」
「うん。こんなに美味しいのは王様だって中々食べれないんじゃないかな」
「ねえシトリー。ダンジョンはもっと深くもできるのよね? 深くしなくても良いけど、この海が今の最後だとすれば、この島は見付からないようにした方が良いわね。今すぐって事はないけどいつか渡って来るようになるわよ」
それは僕もそう思います。何か良い方法があれば良いのですが······。
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