第215話 シトリーに調理道具を
「え? もう帰っちゃうのですか? あの、また遊びに来てくれますか?」
そろそろ外は夕方になる頃なので、焚き火の後始末をして、ギルドに報告してしまわないといけませんから、帰ろうとした時、シトリーは凄く寂しそうな顔でそう言ってきました。
「うん。このダンジョンは美味しい物が沢山ありますからね。時々来て、また一緒にごはん食べましょう」
「そうね、ライ、ガルに頼んで小さい鍋とかフライパンを作ってもらいなさいよ。そしてグランジにそれ用のコンロを作ってもらえば暖かいごはんが作れるわよ」
「おお! それ良いですね♪ マシューに料理を教えてもらっても良いですよね! そうしましょう! シトリー、ちょっと待ってて下さいね。ん~と、見付けました! 転移!」
パッ
「な、な、なんじゃここは!」
「ガルさん急に呼び出してごめんなさい。この子、シトリーって言うんだけど、このシトリー用の調理道具を作ってほしいんだ。駄目かな?」
「まったく、急に呼び出すから何事かと思ったが、そんな事か。······シトリーとやら、こっちに来い」
初めは凄く驚いていましたが、なんとかシトリーの調理道具を作ってくれるみたいです。
シトリーも突然現れた髭もじゃのガルさんを見て、驚いてましたが、呼ばれてふよふよと近付き、ガルさんが出していた手の上にちょんと乗りました。
「ふむ。ちっこいの、テラがちっこい時と変わらんな、ならば大きくなっとったから渡せなかった物があるぞ、ほいっと。どうだ、ちょうど良いだろう」
ガルさんはシトリーを乗せた逆の手に、言ってた通り、テラ小さい時にちょうど良い大きさのフライパンや鍋、包丁まで作って持っていました。
「え? これ私にくれるの?」
「うむ。テラは大きくなってしもうたからな、アダマンタイトで作ってある。少々の事では傷んだり、壊れる事もなかろう。ライ、すまぬが元に戻してくれんか? 新しい炉を温めておる最中でな、今火力を落とせん」
「ありがとうドワーフのおじさん。大切に使うね」
シトリーはお玉とフライパンを持って、頭を下げました。そっか、ガルさんはそれを見て、大きく頷きました。
「ごめんねガルさん。じゃあ元の場所に戻すね。その前に、調理道具は机を出して、ほいっと! この上に置いてくれる?」
「うむ。では頼む。ちょっと待て、ライ、お前の鎧、予備の物じゃないか?」
「あっ、そうでした。この大陸に来てすぐに捕まってですね、色々とあって使えなくなっちゃったのですよ」
「分かった、ふむ、少し大きめの物を作っておくか······また少ししたら取りに来い。ライは成長期だからな、すぐにキツくなるはずだ。その時に調整もしてやろう」
「うん。お願いしますね。じゃあ転移!」
パッ
「じゃあ続けてグランジさんは······いました。転移!」
パッ
「どわっ! ど、どこだ! ······ライ、悪ふざけはやめろよな。転げてしまったじゃないか。まったくよ」
グランジさんは椅子に座った形でこちらに来ましたから見事にコロンと転げちゃいました。
「ごめんなさい。ちょっと頼みがあって呼んだのですが、この調理道具で使えるコンロとか魔道具で作れますか? ガルさんに作ってもらったアダマンタイトの物なのですけど」
グランジさんは立ち上がり、お尻の砂をはたいた後、机の上の調理道具見て――!
「ほらよ。良い大きさだろ? ってかここどこだ? 見た感じそこの子が使うんだろ? でも調理は家の中でやった方が良いんじゃないか? 家はどこだ?」
「あっ、それもそうですね。シトリー、水晶玉の部屋に住んでるの?」
「うん。これ凄いわね、これから火が出るのでしょ?」
「おう、ならそこに案内しな、そこにぴったりの物を設置してやるからよ」
「う、うん。ありがとう。こっちよ」
シトリーは地下に続く階段へ飛んで行き、中に入ってしまいました。
「よし、ライはその机ごと持ってこい」
「うん。収納! そうだ、マシューにも来てもらいましょう。······いました、転移!」
パッ
「え? こ、ここはってライ坊っちゃんですか。今度はなんでしょうか?」
「マシュー急に呼び出してごめんね。あのね、シトリーって子に料理を教えて欲しいんだ。そのキッチンを今からグランジさんがって行っちゃいましたね、こっちです来て下さい」
マシューの手を引き、水晶玉の部屋に下りる階段へ進みます。
もちろんテラとアミーも一緒です。
階段を下りる時から驚いたのは、薄暗かった階段に、証明の魔道具がついて、明るくなり、部屋につくと色々な家具が備え付けられて、それもシトリーが使うのにちょうど良い大きさの物です。
「おう、ライ。ここからお屋敷への扉を作っておいたぞ。マシューさんに料理を教わるにしても毎回お前が転移で送ったり、俺の魔道具で飛んで来たりするのも面倒だろ? だからお屋敷の調理部屋に繋げておいた」
「おおー! 流石です! シトリーから呼んだりもできると良いかも?」
「ぬかりないさ。インターホンと言ってな、ここを押さえながらだと向こうと会話ができるんだ」
「なるほど。グランジさん。では私用の調理台もその小さな調理台横に作ってはもらえませんか? お手本を見せながらの方が覚えやすいと思いますので」
「おう。任せておけ。場所は――」
「シトリー、あの人が料理を色々教えてくれるからね」
「えと、良いの? それにお話もできる魔道具を付けてもらったし、こんなの嬉しすぎだよ」
「おい、シトリー、こっち来いよ、ライ、ガルの調理道具出してくれ」
「はい♪ 行きましょうシトリー」
「うん♪」
その後は、色々と相談しながらシトリーの部屋を改造して、遅くなったので、今夜はここに泊まっていくことにしました。
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