第167話 管理監邸にお邪魔しましょう

「まずは一番多いところから行くわよ」


「うん、お願いね」


 冒険者ギルドを出た僕はテラが指差す方へ、大通りを進みながら教えてもらった通りにぐるぐると、お屋敷への転移を繰り返ししながら進み、街の中央にある大きなお屋敷にたどり着きました。


「酷いわね、ほぼ人さらいの連中ね、地下以外は全滅よ門番も駄目だからやっちゃって、地下はその後よ」


「あはは······、想像だと、地下は人攫いにあった方がいるくらいでしょ?」


「正解。普通の人はいないわここ。まったく、ほらほらゆっくりしていたら、夕方までに終わらないわよ」


「うん。ぐるぐる~ほいっと! で、収納と転移!」


 うんうん。お屋敷の一階から上と、敷地内の人攫い達はいなくなりましたね。


 門番の消えた門をくぐり、お屋敷に向かいます。少し駆け足で石畳を進んで玄関の大扉に到着して中に滑り込みました。


「地下にはどこからいくのでしょうかね? 一人くらい残しておけば良かったかな?」


「そうね、お義父様のお屋敷はどこから地下に下りるの?」


「うちだと階段下からと、厨房と、父さんの執務室からだね。じゃあ階段下は······っと」


 正面にある二階への階段の横を確認すると、扉がありました。


「正解かも? とりあえず鍵はぐるぐる~、ほいっと!」


 ガチャと音が鳴って鍵は簡単に開きました。そして戸を開けると。


「うん。正解かな、階段ですし、この階段下に一人いますから、行きましょう」


 急な階段を気を付けて下りていくと、また扉があって。


「誰だい? 交代はまだだと思ったが、もう時間か? って誰だいあんた、ってガキ? どうやって入ってきた!」


「え? ちゃんと階段下の扉からですよ?」


「はぁ、ライ、お話はカヤッツに任せて、ってこの人に案内させましょう、いちいち探すのも面倒だし」


「うん。名案だよ、じゃあぐるぐる~、ほいっと!」


 とりあえず気絶させて、奴隷の腕輪を嵌め、魔力をちょっとだけ戻して起こします。


「おばさん起きて下さい。おーい」


「ん? 寝ちまったかい、変な夢を見ちまったよ。······夢のガキが本当にいるじゃないか!」


「命令です。騒いだり、大声出したり、逃げたりもしちゃ駄目ですよ。あっ、悪い事も禁止ですし、人攫いの仲間の事も教えて下さい」


「奴隷の腕輪か、な、何をするつもりだい?」


「人攫い達を捕まえに来ました。それから捕まってる方を助けにですね。だからおばさんには人攫い達がいるところに案内してもらいます。良いですか?」


「んなことできるかい! って断れないんじゃ仕方ないね。だがあんた一人じゃ無理だよ。この奥には百人ほど暮らしている、それに私ゃこの街の事は全部は知らないよ、こことスラムの所しかね、街に紛れてる奴らは居場所も知らないよ」


「十分です。じゃあ地下にいる一番偉い人なら街の中の拠点は分かるかな?」


「ああ。この奥にいるヤツならこの街の責任者だからな、他の街の事も知ってるはずだよ。じゃあ行くかい?」


 良いですね、街ごとの拠点が分かれば、探さなくても行けますよ、地図を描いてもらいましょう。


「はい。お願いしますね」


「なんか調子狂うねぇ。まあ良いか、ついてきな」


 そう言って戸を開けるとそこには小さな町がありました。


 天井はあるのですが、光の魔道具が沢山ぶら下げられていて、昼間くらい明るいです。


「こっちだよ。正面の大きい家がそうさ、ほらキョロキョロしないでついてくるんだよ」


「うん。捕まってる方はどこにいるの?」


「そいつらはもう一つ下にいて、麻薬を小分けに分けさせてる。小さいガキどもさ。どっかでは素材を作らせてる場所もあるらしいからね、この街の私達を捕まえたところであんたみたいなガキ一人じゃなんともならないってもんさ」


「ああ、あのダンジョンの所ですね、教会の中に隠してあったダンジョンですね?」


 僕がそう言うと、おばさんは驚いた顔をして僕の方を見てきました。


「なんでその事を知ってる? 私ゃまだそこまで喋って無いよね?」


「そこは僕が見付けて、全員助け出して、人攫い達と、教会の方は捕まえましたからね、あっ、どうしよう、麻薬とかどうしたかな? 持ったままだよね?」


「どうだったかしら? まあ持っとけば良いわよ。世に出してしまえば、どこからか流出するかも知れないでしょ? それならライが持ってた方が良いわよ。ここのも全部収納しておきなさいね。ほら、その倉庫は中身が麻薬だから全部収納しておきなさい」


 テラが指差した。辺りの家より大きな建物。おじさんが二人扉の前の木箱に座って見張りなのかな? がいるし。見ると、天井を支える柱と柱の間いっぱいに建てられているので。建物ごと収納しちゃいましょう。


「え? 収納って、そんなのあれだけの量は――へ?」


 僕はおばさんが喋っている間に、収納しちゃいました。


「ライ、あの座ってる木箱もそうよ、それに、このおばさん以外は気絶させておけば良いじゃない。ついでに建物も全部収納しちゃえば楽じゃない?」


「そうしましょう!」


 最初の、倉庫を収納した時からおばさんは驚いて止まってしまいましたので、この地下一階にいる人を全員気絶させ、たてものと、天井の魔道具以外の魔道具も合わせて建物全てを収納しました。


 よし、見張らしも良くなりましたし、ここの偉いさん以外を先に飛ばしてしまいましょう。





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