第166話 沢山捕まえますよ

「ぼ、坊っちゃん《きゃっ》」


 二人は慌てて離れちゃいました。


「邪魔をしてごめんなさい。でも今は急ぎですので、この後詰所の前に沢山の人攫いを送りますから、捕まえておいて下さい。じゃあ······くふふ。お仕事中ですから見付からないようにね♪ 転移!」


 パッ


「あはは······マリーア、見られたな。おっと、また坊っちゃんの無茶が始まったみたいだ、戻るよ」


「うふふ。見られちゃいましたね、そうですね、私も戻ります······ちゅ。頑張ってね」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 お屋敷から戻ると、さらに沢山の方が門の正面見えている大通りから、こちらに向かってくるのが見えました。


 早速気絶した方達をお屋敷に転移させながら向かってくる方のぐるぐるです。


「え? 消えたと思ったら、それに今度は倒れた者が消えていく!?」


「はい。犯罪奴隷として、引き取って貰っています。おっと、まともな方達がこちらに来ましたね」


「呼ばれて来たのだが、これはどういう事だ? 次から次へ倒れていってるのだが」


 僕は話しかけてきたおじさんに説明しながらも、ぐるぐると転移を続けています。


「――と、言うわけです。これが僕のギルドカードです。どうですか? 僕は捕まるような事はしてませんよね?」


「うむ、どこから見ても本物のギルドカードに見えるが、よし、一度冒険者ギルドに同行してもらい、確認するのは良いか?」


 なるほど、それなら確実に信用してもらえますね。


「はい。それで良いですよ。でも後少し待ってくださいね~、はい終わり、転移!」


 今、門前の広場に入ってきた方達全員で、とりあえずこちらに向かってくる方は終わりました。


「よし、では俺達に付いて······なっ、なんだと······」


「班長、残ってるのは二人減りましたが、私達の班、班長を入れて八名だけですね、他の皆は全員そうだったのですか?」


「そうね、残念だけどその通りよ。まったく、何て街かしら、二百名以上駄目だったんじゃない? それに持ち場を離れられない者達がいるはずだから、後でそいつらも捕まえなきゃね、ライ」


「そうだね。あまり時間はかけたくありませんが、この街のためですからね。テラも協力してね、もしかしたらそこを歩いてる方も人攫いの可能性もありますから」


「まさか! いや、可能性はあるのか、今の管理監がやって来た時にごっそりと入れ替わったからな、俺達は昔からこの街の衛兵だったが、先任者にほとんどが付いていき、残ったものは辞めるか、今の管理監に雇われた者だけだからな」


「じゃあその管理監もたぶん駄目ね、仕方ないわ、今日はこの街だけで終わっちゃいそうだけど、さっさと冒険者ギルドに行きましょうよ、ぐずぐずしてたらいくら時間があっても終わらないわよ」


 そして、八人の衛兵さん全員で行くわけにもいかず、隊長さんだけが僕達と冒険者ギルドに、残りは門番の仕事をするそうです。


(ライ、あの露店の前にいる槍持ちもよ)


(了解。ぐるぐる~、ほいっと! はい倒れる前に転移!)


 門前の広場にある冒険者ギルドに行くだけなのに、これで三人目です。


「くっ、またか。どれ程の者がこの街にいると言うのだ、よし付いたぞ、ここだ」


 そして中に入ると。


(食事どころで朝からお酒なんてね、あの端にいる女性冒険者のパーティー以外は全滅ね)


(は~い。ぐるぐる~、ほいっと!)


(それに依頼を見ているあのハゲた人と――)


「おいおい、マジかよ」


(それから職員にもいるわね、あの人にあの人も――)


(ぐるぐる~、ほいっと! 転移!)


(それから、裏方にもいるわね、そうね、魔道具持ってるやつは全員やっちゃって。それでギルドは終わりね)


 そして、ギルド内は、朝の混雑が一気に閑散となり、冒険者はパラパラ、職員も数名残っているだけになりました。


「はは、こりゃまいった······」


「おいおい! これはどういう事だ! 衛兵! お前も見ただろ、突然人がきえていったのを!」


「あ、ああ。確かに見た。それもだが、この子のギルドカードが本物かどうか、見て欲しいんだが、済まないなこんな時に」


「何か、やらかしたのか? ちっ、受け付けが全滅だぞ、仕方ねえ俺が見るからギルドカード出しな」


「はい。よろしくお願いしますね」


 テラと僕のギルドカードを奥からやって来たおじさんに手渡すとやはり。


「は? Sランク? いや、その情報は来ていた、名前も、そして特徴。十歳の少年で、肩にはスライムと同じくらいの少女······い、一応魔道具は通させてもらうぞ」


 くふふ。ちょっと震えてますね、あなたは人攫いじゃないので飛ばしませんから大丈夫ですよ。


 そして震えながらも魔道具に僕達のギルドカードを通して、二回頷くと。


「問題ない。本物のギルドカードでこの二人はSランクだ、それと『スライム使い』の二つ名持ちだな」


「分かった。よし、君の言った通りだな。それでだギルドマスター、この人が消えた訳だが――」


 よし、説明面倒だなぁって思っていましたから、衛兵さんがしてくれてますので助かりました。


「それじゃあ消えた奴らは!」


「ああ、俺も半信半疑だったが、目の前で消えていく者を見て、それからSランクが動いているとなると、って考えてな。だからそのギルドカードが本物ならそれは本当の事で、違うならこの少年を何としてでも捕まえると。だが」


「本物だな。ヒュドラの九本首に、ファイアーアントの巣を単独パーティーで壊滅させたのだからな、そんなやつが動いてるか、この後はどうするつもりだ『スライム使い』」


「この街の人攫い達を全員捕まえる予定ですので、安心して下さいね、できれば人がいなくなりますから、混乱が起きないようにしてもらえますか?」


 僕がそう言うとギルドマスターさんと、衛兵さんは頷いてくれましたので、僕は早速行動を開始する事にしました。

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