第156話 大成長!

「あっ、逃げっ、駄目ですよ! ウインドアロー!」


「ライ! 避けるわよ! 先に気絶させなさい! あれ?」


 ギャウン!


 僕は逃げようとしたコボルドさんにウインドアローを撃つと、スッと後ろも見ずに横に避けたコボルドにウインドアローの軌跡を曲げて命中させました。


「ぬふふふ。成功です、たまに避けるんじゃなくて、躓いたりして転けるでしょ? その時魔法が外れる事があったから練習してたのですよ」


「くふふふ。避けても追いかけてくる魔法なんて避けようがないわね、じゃあやっつけてしまって今日は終わりね、そうだ、コボルドを何匹かムルムルにあげましょう」


「うんうん。沢山いるからいっぱい食べても良いよ。キングも食べて良いからね」


(······ありがと······たべるよ)


「うん。いっぱい――え?」


 ムルムルはみにょ~んと伸びながら、僕の肩に上手くテラを下ろして地面に降りると、魔力のぐるぐるを激しくし始め。


(······ぐるぐる······ほいっと)


 みにょ~んと物凄く大きく広がり、気絶しているコボルドさん達に覆い被さると、当たり一面にいたコボルドさん達はムルムルに包まれ、消えていきます!


「凄いよムルムル! 良いよ全部食べちゃえ!」


「こんな事って! 流石私の騎獣! 素晴らしいわ!」


(······ぐるぐる······ありがと······やるよ~)


 ムルムルが頑張って食べてますから僕はこの開けた場所に森の中で倒れているコボルドさんと、少しのゴブリン、オーク、魔狼、トレントを転移で集めておきます。


「ぬふふふ。僕の分かる範囲の魔物さんはいなくなりましたよ、ムルムル」


「嘘っ、あれって地龍じゃない! ムルムル! 地龍は皮を残してね、良い防具が作れるから!」


(······うん······まかせて)


 それから間もなくして、山のように集めた魔物を綺麗に吸収したムルムルはいつもの大きさに戻って、僕の肩にみにょ~んと帰ってきました。


 そして、地龍の皮が、一つの傷も無く、ドンと残されています。それはさっさと収納してしまいました。


「ほんと、ムルムルは凄いね、ただのスライムだったのに、地龍まで食べちゃうんだもん」


「くふふふ。良いわよムルムル。これならライが気絶させた奴は、ムルムルが吸収しちゃえば良いのよ。もちろん残したい物は残してね」


(······がんばった)


「うん。暗くなったし、今日は街道に戻って夜営しちゃいましょう。いっくよ~、転移!」


 パッ


 森に入ったところの街道脇で持ち運びハウスを出して夜営の準備、ごはんを食べてお風呂に入りおやすみなさい。


 翌朝、朝ごはんを食べてると、ドンドンと戸を叩く音が聞こえ来客のようです。


「誰かしら、こんな朝早くから」


「もしかして、街道にハミ出てたかな? それだったら早くしまわないと。むぐむぐ、むぐっ」


 急いで残り一口を口に放り込み、飲み込みながら入口の戸へ向かい声をかけます。


「はい。どちら様ですか?」


『早く開けろ! さっさと出てこい!』


「なんでしょうかね? まあ出て確かめれば分かることですね」


「そうね、急いでる感じだからやっぱり馬車が通れないんじゃない、早くどけてあげないと怒られるわよ」


「うん。今開けま~す」


 そう言って戸を開けるとそこには騎士さんがいました。


「おはようございます。もしかして、馬車が通れなかったのですか?」


「ごちゃごちゃ言わずにさっさと出てこい! この持ち運びハウスは我々が徴収することに決まったのだ! この森の先に大量の魔物が出た、それも地龍が追いたてて来る! 貴様もこの後我らが軍に追従し、スタンピードの壁となるのだ!」


「あっ、それならやっつけましたよ。コボルドさんがたぶん数万匹と地龍もやっつけましたし。それにこの持ち運びハウスはあげませんし、あなた方の軍にも入りません」


「もう、朝から何事かと思えば、ライ、持ち運びハウスを片付けて先を急ぎましょう」


 僕は振り返り、持ち運びハウス魔力を流して小さくすると収納して、出発準備完了です。


「何をしている! その持ち運びハウスは――」


「だからあげませんと言ってるでしょ! 盗賊ですね、捕まえてあげます。ぐるぐる~、ほいっと!」


 ガシャと金属製の鎧が音を立て、地面に崩れ落ちました。すかさず。


「収納! よいしょ」


 鎧を収納して、パンツだけになったおじさんに奴隷の腕輪を嵌め完了です。


「お、おい、その腕輪は?」


「奴隷の腕輪ですよ、この盗賊は捕まえましたので、安心して下さいね、困ったものですね、人の物を無理矢理盗ろうとするのですから······あなた方も盗賊ですか? 同じ騎士の格好をしていますが」


「い、いや、盗賊ではない、そしてその、裸で倒れている方もだな、あーその、盗賊では無いのだが」


 僕が捕まえた盗賊を指差してそう言いますが。


「ですが実際に僕の物を盗ろうとしましたよね?」


「いや、それは――」


「何をしておる。さっさと準備せよ!」


 少し前からこちらに向かってくるのが見えていた、僕の倍くらい身長があるおじさんが、そう言いながら近くまでやってきました。


(ライ。この人は貴族ね、まあ男爵だけど、この人も捕まえても良いかもね、殺人とか窃盗とか色々悪い称号があるわよ)


(そうなのですか? 準備だけしておきますが、問題になると嫌なのですが、また僕の持ち運びハウスなんかを盗ろうとするなら捕まえちゃいますね)


(はぁ、甘いわね、ほら、もう言いそうよ)


「何をしておると聞いておるのだ! 見れば小僧一人、壁役にもならん! 持ち運びハウスだけ手に入れ小僧は殺しておけ!」


「盗賊の親分さんですね。じゃあやっぱりこの集まりは盗賊と言うことで」


「おい、待て! この方は帝国のオーベシダッド男爵様だぞ! 大人しく渡した方が身のためだ」


「帝国の男爵さんが盗賊なのですか、困ったものですね、それに殺そうとまでするなんて。では気絶して下さい」


「あっ、待て――」


「ぐるぐる~、ほいっと!」


 魔力をぐるぐるして一気に抜いてあげました。


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