第155話 王様を見付けました。

「では。また途中で悪い人がいたらどうしましょうかね」


「ん~、お義父様とお義母様が帝都に行っちゃうのよね、カヤッツに頼んでおけば良いんじゃない? ほら次の街が見えてきたわよ」


「そうだね、カヤッツ達にお仕事押し付けるみたいで申し訳ない気もしますけど、頑張ってもらいましょう。それに奴隷の腕輪も少なくなってきたから補充しておきたかったのに忘れてました。よし次があればカヤッツにお願いして沢山もらっておきましょう」


「そうね、ほらほら前を向いて、列に突っ込むわよ」


 テラの言う通り、もう速度を落とさないとダメですね。


 ここは湖と、森に挟まれた街で、冒険者が沢山いるらしいです。森の奥にはダンジョンがあって、色んな食材や素材が採れて、魔物もそんなに強くはないので人気だそうです。


 入門待ちもそこそこで、ギルドカードを見せて驚いてもらい、いつも通り冒険者ギルドに入りました。


 そろそろ買い取りのカウンターが込み始めていますので、受け付けは空いていました。


 よし、今度はあの端にいるおじさんがギルドマスターかサブマスに違いありません!


 それでは突撃しましょう!


「こんにちは。ギルドマスターさんにお手紙を届けに来たのですが、いらっしゃいますか?」


「あ~ら、坊や、ギルマスね、ちょっと待っててくれるかしら」


「え? は、はい?」


「うふふ。すぐ呼ぶからね、ギルマス~、可愛い男の子がお手紙を持ってきてくれたわよ~」


 じ、女性の方だったのですね、おじさんなんて思ってしまってご免なさいです!


(大丈夫よ、この人男だから。おじさんで正解。ちょっと喋り方が変わってるだけと今は覚えておけば良いわよ)


(そ、そうなんだね。はぁ、物凄く失礼な事しちゃったと思いました)


「手紙だと?」


「ええ。えっと、坊や、お手紙は?」


 あっ、いつの間にかギルドマスターさんが来てくれたみたいです。


 見ると、変わった喋り方のおじさんとそっくりなおじさんがいました。


「え? 二人います?」


 たぶん立っている方がギルドマスターだと思いましたので、手紙を出し、手渡しました。


「預かろう。ふむ、この紋章は隣国のサーバル家か、ん? 剣聖からだと?」


「あら。どれどれ? そうね、サーバル家の紋章だわ、凄い方からのお手紙ね、早く読んだらギルマス。私はこの坊やとお話でもしてるから。ねぇ~」


「うむ。返事を書かねばならんかも知れんのでな」


 そう言うとナイフを取り出し、開封して読み始めました。


「あのね、私とギルドマスターは兄よ♪ 凄く似てるでしょ♪ ところで坊やは王国から来たの? 結構遠いのに凄いわね」


「はい。この後も帝都までの街道沿いを、同じ内容の手紙を配りながら走るつもりです」


「まあまあ。この先は次の街までの間は森を突っ切る形だから魔物がよく出る場所なの。気を付けるのよ、ゴブリンは当たり前のように出てくるし、オークもよく聞くわ」


「そうなのですか。では倒しながら進むのですね、頑張って沢山倒しながら進みます」


「うふふ。あら、勇ましいわね、でも乗り合い馬車を使えば三日で到着よ、護衛も付くから坊やの出番はないでしょうけど、気を付けなさいね」


「ん~、乗り合いは使うと時間がかかりすぎますから使えませ――」


「なんだと! だが、こんな事が許されるはずがない! お前も読め! 少年、ここにも書いてあったが帝都までの街道沿いは任せても良いのだな?」


 ギルドマスターは、受け付けのおじさんに手紙を渡し、そう聞いてきましたので。


「はい。その予定です。ですから街道から外れた街や村には冒険者ギルド経由で知らせに回ってもらえると嬉しいです」


「もちろんだ、おい、読んだか? 読んだら依頼を出すぞ、そこ辺りは村が多く点在しているからな、大量に依頼を出すぞ」


「ええ。こんなの許せないわ。それとここの管理監も知らせておかなきゃね、教会は管理監に動いてもらわなきゃ」


 二人は兄弟なのでしょうね、凄く息が合って、テキパキとやる事を決めていってます。


 僕はそっとその場を離れギルドを出ました。


「ライ、ギルドカード出せなくて残念ね、この後はどうするの?」


「うん。でも仕方ないよね、すぐ動いてくれるみたいだし、頑張ってもらいましょう。僕達はどうせ走ってもどこかで夜営になりますよね、だから走るつもりだよ。もし魔物が沢山いるならそっちをいくらか倒して、そこで夜営かな」


「そうね、できれば花か何かあれば良いのだけど、蜜の沢山採れる花があれば蜂蜜を作れるし良いと思わない?」


「うんうん♪ それ良いね、エルフさんの街でも良いですし、誰か作れる人がいればだけど、賛成です」


 そして街を出て走り始めて何度かゴブリンを倒し、そろそろ暗くなりそうな時、森の奥に結構な数の魔物の集まる場所を見付けました。


「ねえテラ、この先にたぶんコボルドさんかな? 沢山いるんだけど、やっつけちゃおうか」


「そっちね、んん神眼~、あら、コボルドキングがいるわね、やっつけておきましょう、もう少し走ったところから森に入る感じかしら?」


「うん。じゃあぐるぐるし始めるね、ぐるぐる~ほいっと!」


 数キロ走った後、進行方向を森に向け、下草を避けるため木の枝から枝に飛び写りながら進み、気絶したコボルド達を倒しながら、まだ気絶していないコボルドキング、のいる場所に到着しました。


「あれがコボルドキングさんですか、倒れた仲間を揺すって起こそうとしていますがそんなことをしても起きませんよ。じゃあ魔力を抜いちゃい――」


 コボルドキングさんは僕に気付いたのか、物凄く大きな声で吠え始めました。

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