第152話 許しませんよ!

『バラクーダ、タシンサ、飼い犬だと? 何を言っている。殺されたいのか?』


「待て! あれくらいで聞こえるとはどんな耳をしてるんだ! そ、そうだ! こ、ここにいる俺達以外を殺れば問題ない!」


「そ、そうだぞ、それはちょっと口が滑っただけで、言いたくて言った訳ではない! 殺るのは私達以外だ!」


 滅茶苦茶です! こんなに多い魔力ですが、頑張りますよ!!


『ふむ。私は馬鹿にするのは好きだがされるのは我慢ならん。だが今回は······ふむ、これはこれは中々面白いにえではないか。くくくっ、良かろう。今回は見逃してやろう。ではそこの人間共、死の準備はできたか? それに――』


 十五メートルほど体高があるナベリウスは僕達を一人ずつ上から見定め、その三つの首をこちらに向け舌舐したなめずり。


「ナベリウス! おとなしく帰るなら見逃してあげるわよ、あなた程度ではここにいる者達がいる限り勝てる確率は無いわ!」


 テラがナベリウスに話しかけながら僕の耳たぶを引っ張り念話で話しかけてきました。


(そこまで強い邪神じゃないけど、誰か怪我をしちゃうかも。特に王様と宰相はまずいわね。ぐるぐるは後どれくらいでいける? 話を伸ばしてみるから)


(後三十秒で気絶させられるかな、ついでに悪いのは抜いちゃってるからもしかしたら、良い子になるかも)


(それは期待しちゃダメ。こいつは門番として作られたから、根っからの邪神よ。まあやれるなら楽で良いけどね)


『くくくっ、やはりテラ、お前か。久しぶりだな見る影もないが』


「うるさいわね! 好きでなった訳じゃないわ!」


『だが、その格好で突っかかってくるとは目障りだな。くはははっ! 先に死んでおけ! |インフェルノ・シ地獄の鎌ックル!』


 ナベリウスが今残ってる半分ほど魔力を使って、テラに向かって黒いカッターみたいな魔法を放ちました――!


「僕のテラに!」


 放たれた魔法をぐるぐるさせ、なんとか軌道を外し、インフェルノ・シックルは空の彼方へ消えていきました。が、僕の髪の毛を掠めたため、ハラハラと何本かの毛が落ちていきました。


「何をしてくれるのですか! ナベリウスと言いましたね、良い子にしてあげようと思っていましたが、許しませんよ! あなたは僕が退治してあげます! 風さん!」


『何!? 魔法を反らしただと!? 有り得ん! それになんだこの風は!? ぐぐっ、う、動きが――』


 風をぐるぐる操りナベリウスの体の中心に押し込む様にして動きを阻害。


「覚悟して下さいね! シッ!」


 地面を蹴り十メートルほどの距離を瞬きする間もなく縮め、抜き身の二本の刀で体を縦横斜め連続でナベリウスに切付け、残り僅かだった魔力も抜ききり、最後は首を刎ねました。


 ドス、ドスドスと落ちた頭はすぐに収納。その場に崩れ落ちる体も地面に付くまでに収納してしまいました。


「テラ、大丈夫? ごめんね、魔力の動きがあったけど、抜く方に気がいってて撃たせてしまいました」


「くふふふ。大丈夫よライ。あなたがなんとかしてくれると分かっていたから。私はムルムルに掴んでもらっているだけで何も心配はしてなかったわよ。だからありがと。ちゅ」


 テラがまたキスをしてくれました。テラの方を向いてましたからちゃんと口にです。


「良かった。ちゅ。お返し。ムルムルもありがと。ムルムルに掴んでいてもらえるから安心して全力で動けました。ちゅ」


 ぷるぷる


(······まかせて······てらおとさない)


「流石私の騎獣ムルムルだわ。うんうん」


 そして馬車のところにいる、みんなの所に戻り、奴隷の腕輪を確認してから。


「じゃあ起こしますね、ぐるぐる~、ほいっと!」


「「いやいやいやいや」」


「ライ、あれはSランクオーバーの魔物だ。私と母さん、ノスフェラトゥ公爵とアールマティの、Sランク四人で対応すれば負ける事はまずあり得ないが、被害は甚大だった。それをお前は」


「な、何者だその小僧は、あいつ等はそう簡単に倒せるものでは無いのだ、そもそも何故収納できるのだ! あいつ等は死なないはずなんだぞ!」


「そ、そうだ! 細切れになろうが、灰になろうが蘇るのだ! だから収納に等入るはずがない!」


 あいつですか、一匹じゃないのですかね?


(いえ。ナベリウスは一匹よ。今倒したのが本体だから復活はないわ。安心しなさい。それよりその魔力よね、また分けられるの?)


(うん。半分は終わってるから、すぐに分けちゃうね。ぐるぐる~、ぐるぐる~、ほいっと! この真っ黒なのは収納! 残りの綺麗なのはテラに渡せば良いよね)


(ええ。いただくわよ。お願いできる?)


 そうしてテラに凄く大きな魔力のかたまりを渡していきます。


「ふむ。驚きはしたが、······教国はあんな物まで。おいバラクーダ辺境伯、タシンサ男爵よ、教国は今のような奴らを従えているのか? 他にもいるなら速やかに話せ」


「あいつ等は五匹いた、あれが秘密兵器だ、後はSランクの『暗殺者』がいるが、そこのクランメンバーが何人か、秘密にされている。噂では百とも二百とも言われているが本当の事は分からん······くそ、なんなのだその小僧、剣聖の息子? 賢者の息子? なんて者を産み出したんだ······」


「ん~と、バラクーダ辺境伯さん。僕は父さんには剣で負けちゃいますし、魔法も母さんには遠く及びませんよ? 自慢の両親ですからね、アールマティお義母さんはまだお稽古は付けてもらっていませんから分かりませんが、お強いはずです♪ だから僕がやっつけなくても誰かがちょいっと、やっつけてましたよ。ね♪」


 そう言ってみんなの方を向くと、複雑そうな顔をしていますけど······。


「まあ良いか。ではその事も合わせて報告するか、ライはこの後街道に戻って後続を待つのだったな?」


「はい。その人達を起こして呼んだかどうか聞いてからですけど」


 そして、魔力を少し回復していますが、気絶したままの七人を叩いて起こし、話を聞いた後、僕とテラ、ムルムルは転移で戻る事に。


 まあ、またすぐに捕まえて戻らないといけないのですが頑張りましょう。

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