第151話 飼い犬
「沢山積み過ぎたのかな、道にも木箱が落ちちゃってますね」
「そのようね、パッと荷物を転移で退けてあげたら? 空荷になれば、すぐに直せるでしょうし」
僕は頷きながら速度を落として、馬車のところで止まりました。
数人のおじさん達は、落ちた木箱の上に座り、何かお話ししています。
「お手伝いしましょうか?」
「あん? なんだ貴様は! 関係ない奴は向こうに行け!」
皆さん木箱に座っていたのに立ち上がり、凄い剣幕で、七人いた中の一人が怒鳴り付けてきました。
「え? 街道を塞いでいますし、お困りでしょうから、荷物だけ移動しておきますね、転移!」
パッ
街道に散らばっていた物も、馬車の荷台に乗っていた物も、街道の端に転移で移動させました。ちょっと崩れてますがこれで馬車も直せますし、街道も通れるようになりました。それなのに。
「テメエ! 何しやがる! クソ、丸見えじゃねえか!」
「クソ、バラけちまったぞ! 何かシートか何か無いか! 隠さねえとヤバいぞ!」
(ライ! あれ箱は外だけで真ん中はお金よ! あっ、もしかして!
(うん。すぐだよ! ぐるぐる~、ほいっと!)
一気に魔力を抜いてしまい、七人の男の方は全員気絶しました。
「回復の魔道具も持ってなさそうですね、変わった魔力の物がありますけどなんでしょうかね?」
最初に僕へ怒鳴り付けて来た方の首から下げている紐の先に黒い石板がありました。
「
「そうか、荷物も外側だけ小さな木箱で、大きな箱を中に作っていたんだね。だから馬車から下ろすと木箱を押さえる物が無くなるから崩れちゃったんだ。よく見ると荷台のあおり部分が鉄で補強されてるね」
「ほら、荷台がそこまで大きくないのに六頭引きよこの馬車。鉱山などで使われる馬車かもね、相当重いはずだから」
「本当だ、普通なら満載でも四頭だもんね。じゃあこの人達は······どこが良いかな? 今なら出てきた街にみんないるよね?」
「そうね、ちょうど良いし、このまま転移でお屋敷に連れていきましょう。そして戻ってきて同じ様な馬車が来たら捕まえれば良いわよ」
僕は一旦横に退けた荷物を収納して、馬さんごとタシンサ男爵のお屋敷に戻りました。
メイドさんを捕まえ、執務室に案内してもらい、まだそこでお話しをしているみんなとその日の内に再会しました。
「ライ。ああ、また何か捕まえたか倒したかやらかしたようだな」
「あはは······そんなにやらかしてませんよ、ね? えっと、今回は偽貨幣を運んでる方達が街道で馬車の車軸が折れて、立ち往生してましたから捕まえてきちゃいましてですね、庭に連れてきたのですが、うちの庭に連れていった方が良かったですか?」
「何? 良いじゃないかサーバル伯爵。バラクーダ辺境伯もタシンサ男爵も運び屋の根城は分からなかったのだが、そいつらならそっちも知っている可能性が高い。そいつらのところにも倉庫を持っているそうじゃないか、一斉に潰せるぞ」
「その可能性は高いですね。ライ、そいつらはここの庭にでも連れてきたのか?」
「はい。正面玄関の横です」
「そうか、メイドさん。すまないが玄関へ案内を頼めるかな」
「はい。ではこちらにどうぞ」
メイドさんの案内で、王様に宰相さん、お義父さん達に父さんと母さん、それにアールマティさんと、それに裸の二人を引き連れ廊下を進みます。
玄関出て正面には馬車と六頭の馬さん、馬車の横には裸の男達が七人寝転がっています。
「ふむ。その七人がか、運んでいた物はあるのか?」
「はい。では出しますね、ほいっと!」
馬車を挟んで男の人達とは逆側に偽貨幣を出して、忘れていましたが、奴隷の腕輪を嵌めておきました。
「なるほど、この貨幣全てが偽物と言うのか。かなりの量だぞ、これを人攫いが噂になった頃から続けられていたとすれば、いくら教国に流れたと言うのだバラクーダ辺境伯。その辺りの資料はあるんだな?」
「当たり前だ、タシンサ男爵も同じ物を持っているはず、手に入れる報酬は同じだからな」
物凄く喋りたくなさそうなお顔ですが、すらすらと喋ってくれます。
「それは先ほど出してもらった資料にあるものか? タシンサ男爵、他にもまだ教国や帝国の秘密で犯した事柄の事も喋って良いぞ」
「チッ、出してない。あの部屋の物と言われたからな。それは地下の隠し部屋に隠してある。帝国では今のところ何も動きは聞いたことがない。教国は教皇様の命で、お前達の国もだがラビリンス王国、帝国をも手中にするつもりで動いている。もちろんこの大陸全土だがな。そのため各地に教会を建て始めたのが十代前の教皇様だ。今やどの国にも教会はある。大きな街ならほぼ全てだ」
「くくくっ、お前達の国と帝国が騒いだところで他国が動き出すまでは時間がかかろう。今夜の定期連絡が無ければ動くだろうさ、大陸統一の計画はほぼ終わっているからな」
「ふむ。それならば定期連絡をすれば良かろう。魔道具はどこだ?」
「クソ、なぜこのような事まで、もう私達は飼い犬に殺される」
そう言った瞬間、ズンと庭に大きな影が落ちてきました。
「三つ首の犬!?」
「ナベリウス! ライ! 邪神よ!」
テラの声で咄嗟に僕はぐるぐるを全開で回し始めました――。
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