第138話 次の町へ

「こんばんは。お騒がせしました。昨日捕まえた五人がスキルで巨大したようで、倒してしまいました。せっかく開拓の人手として買い取っていただいたのに、本当にごめんなさい。村長さんに代金はお返ししますね」


 そう言って門の内外に沢山集まってきていた村人さん達の一番前にいた村長さんに、もらった代金をお返ししました。


「スキルで巨大化しただと? 聞いたこともないスキルだが······五人ともか?」


「はい。少し気持ち悪いですが、お見せした方が良いですか?」


「ああ。門番が言うには物凄い音が広場の方で聞こえたと思ったら月明かりで何かがみえたそうだ。そしてすぐに消え、森で木が折れる音がして、その後森の奥で何か光った時には見上げるような大きい五体が見えたそうだからな」


「そ、そうだぞ村の中のは森で見えた物よりは小さかった気はするが確かに見たぞ」


「ああ。俺たちは二人、やぐらの上で門番をしているからな、俺も見たぞ」


 そうですよね、村にある家の屋根より高いやぐらが門の上にあり、門番さんは交代で夜その上で見張りをしているようですから見えますよね。


「では大きいので一人目を出しますね。ほいっと!」


 門から続く道の真ん中に自称勇者達の一人を出しました。


大きすぎるぞ!なんだこれは!


 十メートル以上ある頭の部分を出したとたん、村人さん達はその場から一歩下がりましたが、目は巨人の頭に向いています。


「おい! あの下の方にある顔はあの五人の一人だぞ!」


「うげぇ、本当だ、見覚えがあるぞ」


「残りの四人も出しますか?」


「い、いや。もう十分だ。そうか、悪さはするなと言っておいたのだがな、命令の仕方が悪かったか」


 ん~、どうなのでしょうか? 村長さんは腕組をして苦い物を食べた時みたいな顔をしています。たぶん――。


(邪神が解いたのでしょうね。何が目的か分からないけど、それくらいしか考えられないわね)


 邪神ですか。やっつけないとですね神様ですけど。


(はぁ、まず無理よ、見付けること自体難しいからね。それより早くしまってあげれば? もう良さそうだし)


「あの、もうしまいますね、ほいっと!」


 門前にどどんと出してあった物を収納すると、村人さん達から安堵のため息が出るのが聞こえました。


「では村への脅威は無くなったと思って大丈夫ですか?」


「普段通りの警戒は必要でしょうが大丈夫だと思います」


(ねえテラ、森の中の血とか片付けてないけど大丈夫かな? ゴブリンとか寄ってこない?)


(大丈夫よ。見てみなさい、そこに出して汚れていたのが消えていってるでしょ? これは血と言うより今回は人の血を魔力の塊みたいにした物よ。だから死んだことによって魔力が発散するからね。人の血は少しは残るでしょうけど、あの巨体に人の中にある分だけで賄おうってのよ、全体をバラバラにしたならもっと沢山流れ出たでしょうけど)


(うん。本当だ。ちょっとだけ残ってるだけになりましたね。これなら安心です)


 村人の皆さんは一人ひとり自分の家に戻っていく中、僕も広場まで行き、壊れた倉庫を見ています。間口は二十メートルで奥行きが五十メートルくらいでしょうか、僕は崩れた石壁や木材を一旦収納して瓦礫の下にあった保存されていた物も広場に転移で移し、綺麗な更地になったところで土いじりでつちかった技を見せてあげましょう!


 まずは壁と屋根ですよね、そしてあの地下の階段や部屋みたいにカチカチに固めれば良いですよね。


「いきますよ! ぐるぐる~、ほいっと!」


 ズズズと、音が聞こえそうなほど勢いよく壁が出来て真ん中に通路用の壁と良い感じに部屋を区切るように壁を作って······二階建てにしちゃいましょう!


「ライ! 潰れないのそれ!」


「大丈夫! ガチガチにしちゃいますから! ぐるぐる~、ほいっと!」


「なんだこれは! 壊れた倉庫を片付けてくれたと思ったら倉庫を建てたのか! それも二階建てだと!」


 内緒ですけど造るための土は地下室を二階分造ることで足りました。


 所々窓用に穴も明け、階段も造ったりと、中々楽しめました。あのお城よりは小さいですが中々の物だと思います。


「よし! 村長さん、倉庫も直りましたから、元々入っていた物を中に移動すれば良いですか? 場所は適当になりますけど」


「ライ。村長さん固まっちゃったわよ、それにほとんどが一番奥にあったみたいだから、一階の奥にしまってあげたら?」


「うん。そうだね、それじゃあやってしまいましょう。転移!」


 パッ


 広場に転移で移動してあった物を、一番奥に造ったり大きい部屋に転移で移し完了です。


「村長さん、とりあえず中にあった物も戻しておきましたから。それでは僕はここで」


 そう言って門に向かって歩きだしました。


 後ろの方で一緒に見ていた村人さん達は『なにもんだあの子』『神の御使い様か······』『あの子だけで開拓の村······町が作れるんじゃないか』とこそこそ聞こえましたが、最後に頑張ってしまいましたからそろそろ本気で眠くなってきました。


 持ち運びハウスに戻り、ベッドに上がるともう目が開けてられません。腹巻きをして、ムルムルとテラを胸に乗せて、お布団を掛けるとすぐに寝てしまいました。


 翌朝、持ち運びハウスをしまい、走り出そうとした時門番さんが何か叫びながら手を振ってくれましたので振り替えし、次の町に向かい走り始めました。


 お昼過ぎには峠道に差し掛かり、下って登ると町があるようです。勢いよく下り坂を走っているとこちらに向かって登ってくる集団とすれ違うところでいきなり矢を放たれました。


「よっと!」


 パシッ


「危ないじゃないですか! ほいっと!」


 撃ってきた方に掴んだ矢を投げ返してあげると肩に突き刺さり馬車から落ちてきました。


「なっ! 投げ返して来やがったぞ! クソガキが! もう良い! 生かして売るとか考えて足とか狙わずにもう殺ってしまえ!」


「ライ!」


「うん! やっちゃいますよ!」


 次々と停車していく馬車に乗る人達全員を、ぐるぐるして一気に魔力を抜くことにしました。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る