第136話 幸せな夜から

 持ち運びハウスで、まずはお風呂を楽しみ、一番大きな寝室で今夜は寝る事に。


 でもその前に!


「じゃじゃじゃじゃーん! それじゃあ少しずつ出していくよ♪」


「うん。準備は万端よ! ムルムルも良いのあったら貰って良いからね!」


 ぷっるぷるっ


 僕はベッドの上にツノガエルのシートを敷いて少し······ひと山お宝を出しました。


「ぬふふふ。綺麗ね~、あっこれなんか私の王冠にぴったりよ! どうつたが絡まったレリーフ! 良いわね♪」


「うん。凄く綺麗だよテラ。どこの王女様かと思えるほどだもん」


「そ、そう。ありがとうライ」


 テラは頬を赤く染めてくねくねしているところも可愛いですね。


 ムルムルは二つの腕輪を交互に乗せてはぷるぷる震え、一つは乗せたままもう一つは収納してしまいましたから、気に入ったのですね、今乗っている黒革に金の装飾されたのは格好いいですよ。


 そして僕が見付けたのは······?


「ねえ、これ母さんに貰ったピアスと似てるんだけど」


「そうね、んん神眼~! くふふ。そう言う事ね、お母様も中々やるわね、ライ。そのピアスをお母様から貰ったピアスに近付けてみなさい」


 テラに言われて耳に近付けると。


 リリーンリリーンと本当に小さな音がなっているのが分かりました。


「小さな音が鳴ってるよ」


「それは共鳴と言ってね、どんなに離れていてもつけているもの同士がお互いを認識し合える物ね、ライが両耳だから分からなかったかも知れないけど、本来は二つで一組なのよ。その一組を二人で分けて共有する使い方をするのだけどね。で、こっちのは試作品ね、だから同じ様に共鳴してるのだわ、それをウルカグアリー(神)が手に入れたのね。あら、まだいくつかあるわよ」


 テラはお宝の中から全部で十個のピアスを見付けました。もちろん僕もムルムルもお手伝いしましたよ。


 その後も少しだけ見たり積み重ねて遊んだりとしましたが、僕は片方のピアスを試作品に変えて、外した物はテラの腹巻きに着けてあげました。


「ねえ。本当に私がもらって良いの? 本物はこれとライの二個しかなくて後は試作品よ、フィーアやティ、プシュケに、リントはまあ入れておきましょうか、本物は色々と付与魔法がかかってるから効果もあるのよ?」


「うん。テラは僕が冒険を始めて最初の仲間で、あっ、ムルムルもだよ。だからって訳じゃないけど一番好きなのはテラだからね。フィーアもティもプシュケにリントも大好きだけどさ。だからテラに持っていてもらいたいな」


「そ、そうなのね。わ、分かったわ私が持っておくわ。でもみんなの事も大事にするのよ? なんだか私だけもらっちゃったら悪いじゃない」


「うん。残りの試作品にも、付与魔法ってやつがあるんだよね? それを覚えて僕がかけてみんなにあげるよ。ムルムルにもね。ほら数もちょうど合うし良いよね」


「そうね、じゃあ明日から走りながらになるけど教えてあげるわ。ほらもう遅い時間ね、寝ましょうか」


「うん。収納! よし残りはまた次回のお楽しみだね」




(寝たわね。くふふ。可愛い寝顔ね。ピアス大事にするわ。私もライの事、だ、大好きになっちゃったから······すぅ~)


「ちゅ」


(おやすみなさいライ)


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


(クソクソクソクソ! なんで俺達が奴隷にまたなっちまったんだよ! 明日から開拓だと! やってられるか!)


(またかよ~、どうせすぐに解放されるって分かっていてもせっかく気分よく酒飲んでたってのによー)


(おい! 早くこの奴隷を解除しやがれ!)


(俺達は選ばれた勇者なんだぞ! この前みたいにサクッと外しやがれ!)


「ふむ。いささか期待外れでしたか、もう少し踊ってもらえると良かったのですがここまでのようですね、まあ最後の願いとしてその腕輪は外してもよろしいですが、スキルは回収させてもらいますね」


(何!? どういう事だ! 俺達は勇者としてここにいるんだろ! なぜスキルをお前ごときに外されなきゃいけねーんだよ!)


(NPCがごちゃごちゃ言ってねえでこれを外して、そうだな、もっとスキルを付けやがれ! スゲー強力なヤツしか受け付けねえぜ!)


「おやおや。少しだけお待ちを。結界! はい、これで喋っていただいても大丈夫ですよ。そうですね、あなた方の身体では持ちませんがよろしいのですか? とびっきり強力なスキルがありますよ。そうですね、空を飛べ、岩をも簡単に砕き、森を焼き尽くせるほどの力ですが」


「ニヤニヤしてねえでさっさとしやがれ! それですぐにこの村を焼き払ってやるからよ!」


「おいおい、何人か可愛い子がいたじゃねえか、そいつらを村人の前でアンアン言わせてからでも良いだろ? ここまでくる時はババァしかいなかったからな。あの夜営でやって以来だからよ」


「そりゃ良いじゃねえか、そしてやりながら村人NPCの男とババァは焼き殺していくか! くははは!」


「くふふ。性質的には本当に私達(邪神)にそっくりですねぇ。まあこれでお別れですから皆さんにはスキルを付与して差し上げましょう。では良い夜を――」


「あっ! 消えやがった! ん? おお、腕輪は外れてるな、おい、今からひと暴れするか? 新しいスキルを試そうぜ」


「おお~良いねえ~。どんなスキルだ? ステータス! なんだこの四凶ってのは」


「あん? 俺のも一緒だな、お前らは?」


「俺も、なんだよこれ、四属性魔法が凶だから、······めちゃ強いって事か?」


「凶って事は、凶悪な強さってことじゃねえのか?」


「「お前天才か!?お前天才か!?」」


「じゃあ、これ使ってやっちまうか! せーので行くぞ! せーのっ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る