第135話 自称勇者→開拓者

「ライ、先にぐるぐるしちゃいなさい。あの五人に見付かると面倒になりそうだし」


「うん。賛成ですよ、確かこの魔力でしたね、ぐるぐる全開!」


 戸を叩き、家の方が出てくる前に気絶させたいです。あっ、そうだ! 魔力を移動させられるのですから抜く事は······おおー、ちょっと抵抗されますができますね、では抜いちゃいましょう!


『はいはい。どちら様ですか?』


「門番長だ、この村には冒険者ギルドが無いから村長さんにお話をと、来てくれた者がいたので案内してきました」


 カチャと戸が開き初老のおばさんが出てきました。自称勇者も五人全員が魔力切れになった瞬間でしたから奥から『な、どうされました!』と声が聞こえてきました。


「あら? 何かあったのかしら? あっ、ありがとうございます。先客がおりますが、どうぞお入りになって下さい。門番さんもありがとう、ここからは私が案内しますね」


「なんだか先に来た客はややこしい奴らみたいだな、あまりひどいなら自警団を呼ぶぞ?」


「そうね~まあ、お酒とか出せ出せうるさいだけですが、何かあればその時はまたお願いするわね。ではお客さんどうぞお入り下さい」


「ああ。半鐘を二回鳴らしてくれれば奴らも飛んでくるだろう。ではな」


 そう言うと門番さんは村の入口の方へ戻っていきました。


「それじゃあ。さあお客さん案内しますね」


 そう言うと、戸を大きく開けて向かい入れてくれました。


 僕達が入ると入口の戸を閉め、奥へと案内してくれました。そして通された大きめのテーブルと接客用なのかソファーのあるリビングには、テーブルの椅子から崩れ落ちた五人の自称勇者と、おろおろしてる初老のおじさんがいました。


「あらまあ、酔い潰れたのかしら?」


「あ、お前か、そのようだが、いきなり全員が一斉に倒れてしまったのでな。ワシも同じ酒を飲んでいたから毒では無いはずなんだが。ん? そちらはお客さんか?」


「いえ。村長さんにお手紙を届けに来た者です。こちらをどうぞ、そちらの倒れた方は僕が連れていきますのでご安心を」


 そう言って手紙を渡しました。


「ふむ。手紙とな? 誰からだろうか」


 受け取った手紙を蝋封では誰かとは気付かずピリピリと端のすきまにペーパーナイフではなく指を差し込んで破いていきます。


 中の手紙を出して読み始めてどんどん顔が青くなり封筒と手紙の蝋封を見比べカタカタ震えながら手紙に目を戻し、今度は顔が赤くなり怒り顔になっちゃいました。


 読み終えたと思いましたので、バラクーダ辺境伯とタシンサ男爵の事も付け加えてお話ししました。


「何て事だ! それでは話が! 村の者全世帯から半値で買い叩かれてきたが、同じ領地の者が困っていると思ったからだ! 我々も厳しい冬になるのを覚悟して売ったのですぞ! それが自作自演だと! さらにそれを通常時よりも高く売っていたとは!」


「え? そんな······」


「それに戦が起こる可能性とは······これ以上の作物の徴収が行われれば、村人に死人が出るぞ! あまつさえ戦となれば若者は強制的に連れていかれると、そんな事をすればこの村は潰れるぞ!」


「あなた」


「うむ。村人を集め、話をせねばならん。すまないが中央の広場に集まってもらおう」


 おばさんは頷き、リビングを走り出ていきました。


「少年よ、知らせに来てくれてありがとう。それからこの五人を連れていくような事を言っていたが」


「はい。この五人は犯罪者なので、犯罪奴隷として働いてもらう事になりますね」


「ふむ。なるほど、言動もおかしかったからな。どうだろう、この村で使わせてもらっても良いか? 犯罪奴隷を引き取るため一人銀貨二枚で引き受けたい」


「それは良い考えですね。農地を耕したり、開拓する若者は沢山いた方が良いですし、報酬は良いですよ。奴隷の腕輪はありますか? 無ければ提供できますよ?」


 僕はカヤッツに少しだけ貰っていた奴隷の魔道具を五つテーブルの上に出して、思い出しました。


「そうだ、闘う商人さんの魔法の袋は······あっ、ありました。お兄さん達、これは僕が返しておきますからね」


「ほう。闘う商人とはAランク冒険者で商人の仕事もしている方だな、そんな有名な方から盗みまで働いていたのか。すまないが奴隷の魔道具を使わせてもらおう。確か付ければ良いのだったな」


「はい。付けた者が主人になりますので、悪さをしないで村のみんなの言う事を聞いて真面目に働けって命令すれば良いですかね? あっ、口も悪いので、言葉づかいも命令した方が良いかもですよ」


「うむ。そうだな、今後は近くの森を開拓予定だったから、若い人手は助かるが、先程までの様な受け答えでは不快になる者がおるだろな。よし、今の内に付けてしまうとしよう」


 そうして奴隷の魔道具を付けられた五人に魔力を少し戻して起こしてあげてから村長さんが命令をして、これからずっとこの村で働く事になりました。


 起こしてすぐは命令がまだでしたので『酒だ!』『あっ! お前は俺達の荷物持ち!』とか叫んでいましたが、あなた達の荷物持ちになった事はありませんよ。


 そして、僕達は村長さんに別れを告げて、次の町までは行けませんので、村の外れに持ち運びハウスを出して、お楽しみのお宝を見ることにしました。



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