第134話 できれば会いたくありませんでしたね

「今度は飛ばされないでね」


「うん。でも飛ばされたから楽しめちゃったけどね。くふふ。よし罠を解除しますよ~ぐるぐる。ほいっと!」


 最後の階段にあって、そこを通るだけで転移してしまう罠は、最後の段と壁、天井とぐるりと囲う様に魔力が施されていました。


 まずは階段からぐるぐる次に左の壁、天井、右の壁を順に魔力の流れをぐるぐるして用を足さなくしてしまいました。


「うんうん。もう大丈夫よ、さあ次は扉よ。んん神眼~。鍵だけね、ライ開けちゃって」


「任せて。ぐるぐる~、ほいっと!」


 ガチャと鍵の開く音がしました。


「じゃあ開けるね」


 取手に手を掛け開けると。


「······テラ」


「ライ······」


 僕とテラはあまりの事に言葉を失いました。ですが、沸き上がってきた興奮を我慢できず。


「「お宝ですよー!お宝よー!」」


 興奮のまま部屋に入ると、小さな五メートル四方の部屋でしたが、壁際にはうずたかく金銀宝石が、床から壁の真ん中くらいまで積まれていて光さんが放つ光でキラキラと光輝ひかりかがやいていました。


「凄い量のお宝です!」


「ぬふふふ。慌てないでね、ライ。先に、んん神眼~、うんうんこの部屋には罠は何もないわ! ライ収納しちゃって!」


「え? ゆっくり見なくて良いの?」


「そうね、見たいのは凄く見たいんだけど、ただでさえ寄り道してるのよ? 帝国の用事が済んでからのお楽しみと言いたいところだけど、ああー! 夜のお楽しみに少しずつ見ていきましょう。宿で泊まるか夜営で持ち運びハウスで泊まるか分からないけど、そうしましょう!」


 見たくてうずうずした顔をしていますが、賛成ですね。


「分かったよ、じゃあそうしよう! 収納!」


 きれいに何も無くなった部屋。一応魔力のあるところは無いかと見てみましたが、ここで最後のようです。


「ライ。あそこの壁、何か書いてあるわね」


 小さな文字で壁に書かれてあったのは。


『やあ。ここまでたどり着いたって事は私の転移罠は破られたって事だね。う~ん残念。でも他にも色々隠してきたから探してみると良いよ。僕が手に入れた財宝の一部をそこに置いて色んな罠を仕掛けておいたから。じゃあね。ウルカグアリーより』


「ウルカグアリーさんのお宝探し、してみなよって事かな?」


「そうね、まあ他にもあるかもって思ってれば良いんじゃない? 態々わざわざそれを探して歩かなくても見付かる時は見付かるわよ」


「そうだね、色んな所を旅して見付けられたら幸運だったって事にしましょう」


 そうして僕達はお屋敷から出て、転移してきた街道に戻りました。


 まだまだ日は高いですが、少し急いで丘の麓に見えていた街に急ぎます。あまり遅いと入門に時間がかかってしまいますからね。


 一気に坂を駆け下り街の門前にできた列に並びました。


 まだまだ中途半端な時間でしたからすぐに門をくぐれ冒険者ギルドに向かいます。


 ギルドに入って受け付けに向かいます。並んでいる人がいませんので良いですね、僕は父さんからの手紙を取り出し受け付けに座っていたおじさんに声をかけます。


 お姉さんもいましたが『なあ、今晩飯と酒を奢るから付き合えよ』『受け付け業務中です。依頼以外であればお引き取りを』とお兄さんがお姉さんを食事に誘っていますから邪魔はいけませんからね。


「こんにちは。このギルドのギルドマスターさんにお手紙を持ってきたのですが、いらっしゃいますか?」


「ん? なんだ少年。俺がこのギルドのギルドマスターだが、誰からの手紙だ?」


 おお。ここのギルドマスターは受け付けなのですね、でも話しが早くて助かりました。収納から出した手紙をギルドマスターさんに手渡します。


「これですね。どうぞ」


「ふむ」


 受け取り、蝋封見て目が見開きました。


「な! サーバル男爵家の紋章! 剣聖様からだと言うのか!」


「はい。見ていただいて、動いて欲しいと言ってましたよ」


「くぅ、羨ましい。み、見ても良いのだな、見るぞ?」


「はい。よろしくお願いいたしますね」


 ギルドマスターはペーパーナイフを出して慎重に手紙の封を開け、中身を取り出し読み始めました。


 最初は期待しか無かったその目は徐々に険しくなっていき、眉毛の間にも縦皺ができました。


「帝国はこんな事をやっていたのか······少年、手紙を届けてくれてありがとう。早急に近隣からだけでも知らせを走らせる」


「はい。よろしくお願いいたしますね。では僕はこのまま帝都に向けてまだ何か所かの村や街に届けて回りますね。もしかしたら動き出すかも知れませんからね。それから――」


 僕は国境砦のダンジョンであった事を教えておきました。


「ちっ、この領地のバラクーダ辺境伯とタシンサ男爵がそんな事を······食料を買い漁っているとは聞いていたが。分かった、そこも併せてこちらも動こう」


「よろしくです。では僕は次は······村ですねその手前までは行けるかな。では」


「ああ。頼んだ」


 そしてギルドを出て街も見てませんが、次を急ぎましょう。


 そして次の街を目指して走り、日が山に半分隠れた頃、村が見えてきました。


 えっと、ここはギルドはありませんでしたから、村長さんにお手紙を渡さなきゃいけないのでしたね。


 村の門に到着して、中にも入れてもらえて、村長さんの家に案内までして貰えましたので、すぐに村の真ん中にある他より少し大きめの家に入ったのですが。


「おいNPC村長! もっと酒はねえのか! 俺達は勇者だぞ! 肉ももっと出せや!」


 うわぁ~、聞いたことのある声ですよ、こんなところにまで来てたのですね。


「あの声ってあいつらよね······」


 テラも気が付いたようです。


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