第133話 どこかの魔王
「ライ心配しなくても良い魔王よ、前に言ってたでしょ、エンシェントエルフ。魔法の王で魔王よ。悪さはしないわよ、それに
「あっ、前に言ってたプシュケと同じ人だ。お寝坊さんですね、でもこんなさみしいところで可哀想です、何かできないかな?」
土地は乾いていますが、魔力は十分過ぎるほどですね、水があれば大きな木が生えそうなのですけど······っ!
「テラ、ここを森にしちゃおうよ、団栗とかクルミとか色んな木の実がなる森に! そうと決まれば、転移!」
パッ
お屋敷に帰ってきてすぐに落ちている木の実を収納してブドウも少しいただきましょう。次はエルフの村へ転移し団栗を、その後も見たことある木の実がなっているところに次々と転移しては収納しまくり、エンシェントエルフさんが眠る小さな小屋へやってきました。
「くふふふ。ライあなたって悪戯好きね、あの子も起きたら驚くでしょうね」
「うん。ここは魔力が沢山だから大きくなるよ~、ぐっるぐる~! ほいっと!」
実を小屋を中心に一つずつ百メートル間隔くらいで転移させ、辺りの魔力を注いでいきます。
最初はなんの反応もなかったのですが、ぴょこんと双葉が出てからはにょっきにょきです。そのまま上に伸びながら幹もどんどん太くなり、御神樹様と思えるほどの大きさに成長しました。
「やるわね、じゃあ私も少し手伝っちゃうわね。
テラがそう唱えるとゴゴゴゴと地響きがして、何か所も水柱が立ち上がってます。
「おおー! 冷たっ! あははははは♪ テラ、雨が降ってきたみたいだよ」
「うん。ここの地下には大量の地下水があったんだけど、分厚い岩盤で蓋されてたのよね。それに穴を開けてあげたの、百か所ほどね。たぶんそこは池になってくれるはずよ」
ガチャ
「喧しいのじゃ! 寝れんではないか!」
背後からそんな声が聞こえ、振り向いてみると、綺麗なお姉さんなのに、ボサボサの髪の毛で、ヨレヨレの寝間着で、腹巻きをして、枕を持った、たぶんエンシェントエルフさんが叫んだままの状態で固まっていました。
起こしちゃったみたいですね······ん? あれ?
「寝ているわね······ライ、ベッドに戻してあげて」
「うん。悪い事しちゃったね」
小屋を覗くと足元は散らかり放題ですが、ベッドだけは大丈夫そうです。足元のごみ? は、後で少し片付けるために一旦収納してベッドもしわくちゃになっていましたから、ピンっとシーツが張るようにしてから、入口で立ったまま寝てるお姉さんをベッドに転移させ、お布団を被せておきました。
「お詫びに少しお掃除してあげようか、ムルムルお願いできる? 汚れとか取って欲しいのだけど」
そう言って床に散らばっていて、収納してあった物を出して、テラを手のひらに乗せムルムルを出した物の上に乗せました。
するとムルムルは魔力をぐるぐるしながらみにょ~んと伸び広がって小屋全体に貼り付きました。
なぜかムルムルはお姉さんにも······汚れてたのかな?
そしてしゅるるっと元の大きさに戻りましたのでまた肩に乗せて、その上にテラを戻してから散らばっていた服を畳んで、色々なお皿やコップに包丁も調理台にあった棚に戻し、見たこともない道具なんかはとりあえず壁際にあった机に置いておきました。
「こんなところですね。でも寝てるのにお腹は大丈夫なのかな?」
「この子は寝ながらお腹が空いたら料理して食べてるわよ。服も溜まったら洗濯してるみたいだし」
「ふ~ん」
「でもライもお世話し過ぎよ? まああなたなら小屋ごと建て替えるくらいやりそうだったけど今回はしなかったわね」
「え?」
「あ······」
「そうですよ! ぬふふふ。立派なものにしちゃいましょう!」
僕は小屋をベッドだけ残して収納し、地面に手をつきぐるぐるしながらイメージを固めていきます。
「あはは······私ったら言わなくて良い事を言っちゃったみたいね」
確かお婆ちゃんが行ってみたいって言ってた、ノイ何とか······ノイさんだかシュヴァンさんって方のシュタイン城でしたよね。夫婦の名前かな? まあそれは良いですよね。それより見た写真は雪景色で、真っ白で格好良かったですからそれにしましょう!
ぐるぐるで魔力を集めながらおまけで地下室も作ってしまいましょう。
「あらら······どんな大きな物を作る気なの」
「くふふふ。行きますよ! せ~の! ほいっと!」
イメージ通りに形作り、ベッドで眠るお姉さんと僕の前にはそれはもう立派なお城が出来ていきました。
三十分ほどかかり、確か山の上のお城だった事を思い出しましたので、山を盛り上げて作り、麓までのくねくね道も馬車がすれ違えるくらいの道も着けて、山の部分にも木を植えたりと細部にまでこだわって完成しました。
そのお城の一番高い尖塔にお姉さんのベッドを置いて、家財道具も元のように置き直して、完成しました。
「お待たせテラ。じゃあ地下室に戻ろうか」
「くふふふ。これは起きたらビックリするでしょうね、ちょっと待ってね、手紙だけ置いておくわ」
壁際の机にテラが書いた手紙を置いて、僕達はあの地下室の階段のところに転移しました。
「うふぁぁ。良く寝たのじゃ。ん? なんだか部屋が綺麗になったのう。いつもなら足の踏み場も無くなっておるはずじゃが······はて? 窓から木が見えとる? なっ! なんじゃこりゃぁぁぁー!」
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