第2話 挫折の原因
朝、起きると微睡の中での悪夢を思い出していた。わたしが陸上を引退した理由です。夜遅くに部活の帰り道で、他校の陸上部員にリンチされた時の悪夢だ。
結果、足首を負傷して、わたしの青春は終わった。
印象に残っているのが『顔はやるな』の一声であった。
同情など要らぬと言って。この事は部長と一部の先生だけです。
あれから数か月、治療の結果、日常生活は取り戻した。
しかし、陸上は引退して挫折の日々であった。わたしは今朝の悪夢の後で顔を洗うと、コーヒーを一杯いれる。
苦い……コーヒーですら敵に回した気分だ。
それとも単に値上げなのかもしれない。そんな事を考えながら、スマホをチェックする。
結局、実行犯の他校の陸上部の生徒は内密に逮捕されていたが、わたしが厳罰を求めないとした為にニュースになることは無かった。
スマホチェックが終わると登校の準備をする。そう、学校にも登校できるし友達も今まで通りだ。しかし、陸上はできない。
ふ~生きる意味か……。
わたしは登校途中の青空を見上げる。平和な日本ですら何時、何が起こるかわからない。
わたしは悔しかった。もう一度、走りたいのが本音であった。
「先輩、元気ないですね」
高校近くになると後ろから、後輩の三崎が声をかけてくる。
「ああ、大丈夫だ」
と、言いつつ優しい言葉に安心を抱く。年下か、悪くないな。
わたしは顔を赤らめて返事を返すのであった。
それから、三崎と昇降口で別れて二年の教室に向かう。教室に着くと萌音が飼猫の様に近づいてくる。
「おすーおはよう」
「おう、おはよう」
萌音は体育会系ではないが、微妙な挨拶が好きだ。すると、更にわたしに近づき匂いをかぐ。
「今日は明るいじゃん、恋でもしたか?」
この娘はカンがいい、悪気はないが返事に困ることをいう。
「えぇまぁ」
「本当か!」
教室内で大きな声を出すな。萌音はわたしが陸上一直線でそれが無くなり。男遊びにハマったのかと言いたげであった。
とにかく、教室では不味いわたしは大急ぎで二人で教室を出る。向かったのは陸上の女子更衣室である。中に入ると薄暗い。この時間なら誰もいないはずです。
「で、好きな人は?」
「わからない、この気持ちが恋なのかわからないの」
「ふむふむ、それはやはり恋だよ。陸上を辞めてから。炭酸の抜けたコーラだったし」
少し火照っている顔は誤魔化しがきかない。
仕方がない、ここは相手を教えよう。
わたしは一年のサッカー部からの編入生だと言う。
「ほー普通だな、王子様でないんだ」
萌音よ、何処から王子様など出てきたのだ?わたしは首を傾げる。だいたい、まだ片想いなのに。詰め寄る萌音にはっきりさせた方がいいと考えて。
「あぁ、普通だ、でも、わたしには特別な存在になった」
ここで必要なのは素直になる事だ。その後、教室に戻ると誰もいない。
「ふっ、化学実験であったな」
萌音は落ち着いているな。ここは普通ならガビンでです。
「今日はこのまま……」
「待て、わたしは優等生で通っている、巻き込むな」
「ケチ」
でも優等生って何だろう?例えば、誰もいない教室で黒板にいたずら書きをしないとか。萌音が早速、書いているし。
「これはアートだ、ジャパニーズ富士山だ」
わたしが渋々黒板の富士山を消すと。萌音を座らせる。
「いいか、わたし達は優等生だ、普通にしていればいいのだ」
……――うーん?
言っていてムカムカしてきた。反抗するお手本すらない。何かかも平等と言うが勝ち組と負け組がある。最近は陰キャラとか正当化する人もいる。
その様なことを考えていると、化学実験の授業が終わったのかクラスメイトが帰ってくる。
あーカリスマが欲しい。
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