魔王と書いて最強と読むのだ

「くそっ! もう一度だっ!」

「「絶対零度!!」」

 龍也と大河はステレオ魔法を魔王に向けて放った。

 肉体を構成する分子の振動を停止させるオリジナル魔法であった。

「無駄無駄無駄無駄――!」

 魔王は2つの体から・・・・・・純粋な魔力波動を放出した。

 兄弟の魔法は圧倒的な魔力波に掻き消されて、雲散霧消した。

「なぜこんなことに……」

 片腕を失って倒れ込んだクレイモア大尉は、唇を噛み締めた。


 途中までは優勢だったのだ。

 異世界魔法と双子のコンビネーションで魔王を翻弄し、体力を削った。魔王が逆転の大技に打って出た瞬間、満を持してステレオ魔法をカウンターでぶつけた。

 差し合いは兄弟に軍配が上がり、魔王の体は弾けて2つにちぎれた。

「やったか?」

 思わずクレイモアが叫んだ瞬間、魔王の体が真っ赤な光を発した。

「見えたぞ! 感じたぞ! 貴様ら二人で一人だな?」

 魔王はステレオ魔法の本質をたった一度の被弾で見破った。

「ならばこちらも二人で相手をしよう」

 そういうと、ちぎれた体がそれぞれに小さな魔王となって立ち上がった。

「「いや、一人であることは変わらんな」」

 魔王の分身はどちらも完全な魔王である。双生児以上にシンクロしていた。


「ははははは……。覚えておけ。魔王と書いて最強と読むのだ」

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