科学の力だ異世界魔法

「行ったぞ!」

「オーケー。スモーク!」

 龍也は魔法を放った。騎士団に追い込まれたオーガが黒煙に包まれる。

「よし! 兜割り!」

 大河の投げた飛礫つぶてひしゃげながらオーガの頭部を吹き飛ばし、後頭部まで貫通した。

 兄弟が行使しているのは二人で編み出した複合魔法だ。

 2つの属性魔法を音声トラックに見立て、脳内で並行再生しているのだ。

 威力ではステレオ魔法に及ばぬが、一人で発動できるメリットがあった。

「はぁー。お前らのそれ、どうにも不思議だな」

 クレイモア大尉が近づいてきた。

「やっていることはリーデル女子に詳しく説明したんだがな」

「理屈は分からんでもないんだが……。『ステレオトラック』というものが、どうにも納得できんのだ」

「この世界には存在しないものだからな」

 龍也は適当に返事を返した。

 騎士団が複合魔法を使えなくとも構わない。自分たちさえ強くなれればよいのだ。

 スモークの魔法では、土魔法で硫化ガスを発生させつつそれを火魔法で不完全燃焼させるという複雑なことを行っていた。対象はガス中毒に苦しみながら、灼熱と視界不良、呼吸困難に苦しむ結果となる。

 大河が使った兜割りは風魔法で真空を作り出し、雷魔法で鉄球を電磁加速させる。

 科学知識を下敷きにした異世界魔法と言って良かった。

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