作戦名「各個撃破」

 鎮静剤を頭からかけられて、リーデルはぶっ倒れた。

「5倍の威力か。魔王と対等に戦える目途がついたのはありがたい」

 リーデル女史の代わりに訓練場に現れたクレイモア大尉に、龍也は本音を告げた。

「確かにな。力で勝る相手を二人で封じ込めようとすれば、どうしたって綱渡りになる」

「力でも対抗できるなら、戦術の幅が広がるってもんだ」

「お前ら、本当に16の餓鬼かね? ものの見方が渋すぎるだろう?」

「可愛げがなくてすまない」

 口では謝りながら、どこ吹く風の風情であった。

「もうじき2か月か。『8人泣かせ』の新兵訓練を涼しい顔で乗り切りやがったな」

 クレイモアはわずかに笑みを浮かべて、そう言った。

「何だ、その『8人泣かせ』ってのは?」

「10人中8人が、夜中に泣くんだよ。もう帰りてえってな」

 と、クレイモアは頭を掻いた。

「かく言う俺も『8人』の方だ」

「俺たちは『二人』だからな」

 泣かないのは当たり前だ、と言った。

「恐れ入ったよ。ともかく訓練は終わりだ。後は魔王軍を追い詰める作戦と――」

「いよいよ実戦か……」

 気負いなく龍也は言葉を引き取った。

「いいさ。命懸けになるのは魔王戦のみだろう。それまでは援護をよろしく頼む」

 そう。綿密に建てられた作戦の本質は「各個撃破」。孤立分散させた敵戦力を追い詰め、殲滅する。

 言葉にすれば、実に簡単な作戦であった。

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