強くなれるなら問題ない

「結論を言うとだな。シンクロした結果だ」

 呼吸を荒くしてリーデル女史は言った。

「シンクロですか?」

 だからどうしたという温度で龍也が問い返した。

「分かっとらんな、貴様。1000000分の1の確率だぞ?」

「はあ」

 そう言われてもピンとこない。兄弟で普通に・・・魔法を放っただけなのだ。

「お前たちはおかしい。異常だ。アブノーマルだ」

 お前に言われたくない。龍也も大河もそう思ったが、世の中には言わないほうが良いこともある。16歳は大人だった。

「魔力の錬成、詠唱のタイミング、術発動の瞬間まで完全にシンクロしとるんだ」

 唾を盛大に飛ばしながら、リーデルが熱弁する。

「異なる2地点からの魔法発動がシンクロすることによって、魔力は減衰することなく対象に到達し、術理効果を発揮する」

 最早リーデルは兄弟から目をそらし、宙の一点を見詰めながら熱弁していた。かなりヤバい。

「簡単に言うと、威力が増すんだな?」

 睨み殺しそうな眼力めぢからでリーデルが龍也をねめつける。

「てめえ、わかってんのか? 魔術の歴史を変える新発見だぞ? 威力は5倍だ、コンニャロー!」

 二人で異世界渡りしたがゆえに分散していた加護が、シンクロにより収束したのだ。兄弟が同時に行使する魔法は魔王のレベルに届く。

「こんなもん、人間技じゃないっての。狙ってできることじゃねえっつーの」

「強くなれるなら問題ない。俺たちなら合図もサインも要らん」

 いつでも、どんな状態でもシンクロして魔法を放てると、龍也は豪語した。

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