撃てー、撃てーえ。もっと撃てーえ!

「俺達には兄弟、姉妹しかない。家族きょうだいを守るために戦う。それだけだ」

 当たり前のことを語る口調で龍也は言った。

 クレイモア大尉はそれ以上戦う動機を尋ねることは無かった。


 訓練は応用課程に進み、魔法の実践も日々行われた。ここで二人は予期せぬ現象を発見した。

「ちょっと待て。今の魔法は何だ?」

 魔法講師のリーデル女史が二人を止めた。

「普通にファイアーボールを撃っただけだが……。威力がおかしかったな」

 思わず自分の手を見詰めながら、龍也は答えた。

「おかしい? ありえんだろう。あんな威力は」

 その威力は普段の5倍。魔王に匹敵する破壊力だったのだ。

「二人同時に放ったからな。2倍の威力ではないのか?」

 大河も首を傾げた。特に力を込めたわけではないのだ。

「貴様、俺を舐めてるのか? 魔法について見誤ることは死んでもないっ!」

 女ながらに一人称が「俺」のリーデル女史は、髪の毛を逆立てて騒いだ。

「はあ、はあ……。もう一度やってみろ! 二人でだっ!」

 声を掛け合うこともなく、寸分の狂いもないタイミングで兄弟は術を放った。

「「ファイアーボール!」」

 特大の火球を受けて、標的は影もとどめず爆散した。

「うきゃあー! 記録だっ! 測定だっ! すぐ準備しろ―っ!」

 狂ったようにリーデルは叫んだ。新たな魔法現象を目の当たりにして完全に正気を失っていた。

 すぐさま魔力測定機器一式が運び込まれ、二人は実験台にされた。

「撃てー、撃てーえ。もっと撃てーえ! ファイアーだ。アイスだっ! ライトニングだっ! はははは! そうか? そうなのか? そうなんだな……?」

 リーデルは髪を掻きむしりながら、走り回った。あまりの振る舞いに恐ろしくなった副官が羽交い絞めにするまで、実験・・は続いた。

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