俺たちはそうやって生きてきた

 能力測定は水晶球や金属板に触るわけではなく、心電計そっくりの電極を体につけて行われた。いや、実際に心電図信号や脳波、筋電流などを計測していたのかもしれない。

 数値は多岐に渡っていたが、結果を眺めるエリカの顔色は冴えなかった。

「気に入らないようだな」

 龍也はエリカの様子を見咎めて言った。

「悪くはないのだが、勇者にしては数値が低い」

 異世界渡りで得たはずの特別な力、「神の加護」とか「神の祝福」と呼ばれるパワーブーストが小さいという。

「ひょっとして一人分が二人に分散してしまったのか?」

 エリカは動揺して言った。

「具体的に言って、どのくらいだ?」

 龍也は冷静に尋ねた。

「この世界の最強であることは間違いない。あくまでも人間として、ではあるが」

 英雄と呼ばれるクラスの最強戦士と比較しても、能力値は1.5倍あると言う。

「魔力についても同じだ」

「それで、魔王に対しては?」

 エリカは一瞬答えを躊躇った。

「俺たちでは魔王に敵わないのだろう? はっきり言え。魔王は俺たちの何倍強いんだ?」

 ごくりと唾をのみ、エリカは答えた。

「魔王は君たちの5倍強い……」

「ふん。ならばいけるな」

 龍也は平然と言った。

「何を言っている? 5倍だぞ」

 エリカは龍也の正気を疑った。

「こう考えてみろ。魔王は俺たち一人・・・・・に比べて5倍の強さなんだろう? だったら、二人で5人を相手にするのと同じだ」

 龍也は不敵に笑った。

「二人一緒なら、5人が10人でも勝って見せる。俺たちはそうやって生きてきた」

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